叛鬼の評価
叛鬼についての評価と各項目の評価分布を表示しています。実際に小説を読んだレビュアーによる評価が1件掲載中です。
各項目の評価分布
叛鬼の感想
叛き続けるということ
かっこ悪いなんて言わせないこの物語、および史実に関わらず、主人公である長尾景春とは乱暴に言ってしまえばかっこ悪い男だ。主君とそりが合わず、また家宰職を譲られなかったからと叛いたくせに負け戦を重ね、そうして四十年近く戦いと流浪に身をまかせた結果、景春自身が得たものはほとんどない。強いて言えば父祖の代から受け継いできた土地を取り戻したくらいか。そうであるために、事実とはいえ学術論文においても「家宰になれなかったから叛逆した」と書かれてしまうほど、評価としてはいまいちぱっとしない。けれども作中の景春はただ、かっこ悪いわけではない。何度負けようと己の信念のもとに自らの生を見出し、関東を駆けまわった男として描かれている。他者の評価に左右されぬ生き方をする精悍な姿が良く似合う男の物語、そしてよく知られた長尾景春像を覆すという点において、この作品はとても読み応えがあった。ただひたすら、自分のために実...この感想を読む