地下鉄(メトロ)に乗ってのあらすじ・作品解説
浅田次郎の第16回吉川英治文学新人賞受賞小説「地下鉄に乗って」の映画化作品で、2006年に公開された日本映画。監督は「命」「昭和歌謡大全集」の篠原哲雄。脚本は「セブンデイズ・パラダイス」の石黒尚美、脚本協力は「ホワイトアウト」の長谷川康夫。音楽は「リリイ・シュシュのすべて」の小林武史。物語の舞台となる地下鉄は、東京メトロの全面協力で撮影された。 営業マンで43歳の長谷部真次は、弟小沼圭三から、絶縁していた父の危篤の知らせを聞くが、かまわず地下鉄に向かう。が、その日は事故死した兄昭一の命日でもあり、地下鉄構内で兄に似た初老の男を見かけて追いかけ地上に出てしまう。しかしそこは昭和の時代で…。 長谷部真次を「ALWAYS 三丁目の夕日」の堤真一、みち子を「天国は待ってくれる」の岡本綾、小沼佐吉を大沢たかお、お時を常盤貴子、野平啓吾を田中泯、岡村を笹野高史、小沼昭一を北条隆博、真次を崎本大海(子役)、圭三を金井史更(子役)、綱島郷太郎が演じている。他に中村久美、中島ひろ子、吉行和子など。
地下鉄(メトロ)に乗っての評価
地下鉄(メトロ)に乗っての感想
昭和へ!
地下鉄に乗って幾度となくタイムスリップしてしまうのは、主人公の真次。中年男性。行き先は戦後すぐなど、確執のあった自分の父の人生の転機をいろいろ垣間見ることになります。そして真次と不倫中のみち子。演じる岡本綾さんの影がある雰囲気が驚くほど合っていて、それだけの為にもう一回観ても良いと思えるほど。もちろん主演の堤さんも独特な味わいの演じ方を見せてくれます。設定随所によくわかんないポイントもなくはないですが、昭和の時代を体感し、登場人物の出生の秘密を味わい、常盤貴子の蓮っ葉な感じを楽しめます。とある人物の苦悩の先にある、観ていて衝撃だった展開が本当に忘れられません。
大沢たかおさんの演技が光る
大沢たかおさんの演技に尽きる映画。地下鉄の中でタイムスリップをしてしまうところにはファンタジー要素があり、父親との確執は現実味があり、その二つがうまく融合することができずに分離している印象。うまく表現することができないが、その分離が「真面目にタイムスリップしている」かのように、違和感を感じ続けてしまった。その中でも文句なしによかったのが、大沢たかおさんの演技。父親の若い時代はタイムスリップするたびに変わるが、どの時代も熱演されている。少年時代は初々しく、大人になるにつれて男性としての色気と力強さを感じた。不倫相手という立場だからか、最初からみち子には好感を持てなかったが、ラストの重要な選択でも疑問を感じるところがあり、最後まで共感できなかった。映画全体の要素はいいが、うまく調理しきれていないような印象を持った映画だった。
罪悪感が在ると、時が止まる 呪縛の思考回路
これは「親のありがたみは親にならないと判らない」と言うお話で、育成する人が吹き込んだ話を子供は情報として、データー入力してしまう、母親が語る言葉は大切だというメッセージがあります。母親が父親は酷い人間だと言う情報を吹き込まれた青年が、タイムスリップして青年時代の父に合い、真実を見つける話です。これは、多分ここでなら本当のことを言っても叱られないと思うので言いますが、ゆがんだ母親から父親への憎悪を植え込まれた人は沢山居ます。また反対に父親から母親への憎しみやゆがんだ感情を植えつけられた人も沢山居ます。この映画は、根本的に大人は大人であるわけではなく、大人にならない人は其処に留まって自縛されてしまうと教えてくれてます。主観と客観は全く違うもので、人は己に非が在ると知っているとき、相手を無理やりに攻める、こういう自己肯定をするという特性が在ると教えてくれる映画です。