A.I.の感想一覧
映画「A.I.」についての感想が6件掲載中です。実際に映画を観たレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
大いなるSF
スケールの大きいストーリー三部作として分けてもいいほどの内容がこの一本には凝縮されており、とても濃い二時間を与えてくれる作品である。まず第一部は、家庭の話。息子が植物状態のために落ち込んでいる夫婦のもとに一台のロボット、デイビッドがやってくる。(台と呼ぶにはいささか不適当に感じるほど人間らしいのでこれ以降は一人の人間と同じように呼ぼうと思う。)彼のおかげでそれまで暗い雰囲気であった家庭が一瞬は明るくなる。しかし、このまま家庭がどんどん明るくなるのではなく、どこか暗さを残したままなのがミソである。単に、ロボットの子供に愛を注げるかという問題提議では終わらない、これからもっとドス暗い悲劇が起きることを案じさせる雰囲気に、観ていてハラハラさせられる。そして、息子のマーティンが意識を取り戻す。息子が目覚めたことは、本来、喜ばしいことであり、二人が仲良くなっていく展開ならば、家庭は先ほどの暗さを...この感想を読む
悲しさと切なさの向こうに
何て悲しいんだろうとか、切ないんだろうとか、デイビッドの立場に立つと感じずにいられない。そしてその奥に、何て良くできた嫌味なんだろう、と感じてしまったのは歪んでいるからだろうか。不治の病に倒れた息子の代わりにやってきたロボットの子供、デイビッド。けれど息子の病が治ってしまうといとも簡単に捨てられてしまう。デイビッドにはお母さんのことが大好きな「心」があるのに。親子の愛情の揶揄だけではなく、物が溢れすぎた現代に対する嫌味にも感じられる。自分の都合ばかりを優先して簡単に捨てすぎる、と。デイビッドが途中で立ち寄ったコロシアムの様な破壊ショーでの歓声が耳障りに聞こえた。何て自分勝手、何て自己中心的、と。そう思ってしまう程映画の世界に入り込んだということだろうか。
ありきたりと言ってしまったらそうだけど自分は好き
人工知能を持つロボットと子供の心が通じ合うかという、正直言ってしまえばありきたりなストーリーなのですが、それは巨匠スピルバーグ、上手く演出してエンタテインメント作品に仕上げていると思います。もともとは、あのキューブリックが考えていた作品を、遺族の要望でスピルバーグが脚本を加えて、監督したこの作品。難しく考える必要はないのですが、あえて考えるとするとキューブリックやスピルバーグは何をこの映画で言いたいのかななんて考えてしまいます。私、個人的にはどんどん便利になりすぎて、なんでもかんでも機械化している現代社会にこのままで良いのかと警鐘を鳴らしているように思えます。
ロボットの幸せ
未来においてロボットと人間の家族が暮らすのが当たり前のようになってる世界。よくある設定ですが、とある夫婦の、病気の息子の代わりとして同居することとなる子供のロボットが主人公です。しかし夫婦の子供が画期的な治療で病気が治ると、逆にロボットの子供は疎まれてしまいます。母を愛することがプログラムされている主人公にはこれが悲劇となります。そこロ主人公はお仲間のロボットたちとつるんで、自分らを満たしてくれる人を探して回ります。基本プロットから分かるように、ロボット側の視点が中心となって描いてあります。未来の描写には斬新で目を引く部分があります。ストーリー自体を気に入るかどうかは各人の好みだと思います。
アシモフの三原則はいつの時代まで通用するのか
ロボットものの作品を描くときに避けて通れないのは『アシモフの三原則』の存在だ。作家、生化学者として数多くの作品を残したアシモフだが、その中で唱えたロボットが従うべき原則が『アシモフの三原則』である。「ロボットは人間に危害を加えてはならない」「ロボットは命令に背いてはいけない」「ロボットは自分を守らなければならない」この三原則が、この作品A.I.の中ではくどいまでに押し出されているのである。この三原則を知っていてこの作品を見るのと、知らないでみるのとでは、印象も大きく変わってくるだろう。正直、よくあるロボットものに、この三原則を前面に押し出して感動的なストーリーに仕立て上げたようにしか思えなかった。キューブリックの作品だと期待したのだが残念感が拭えない。何よりも、話が長すぎて間延びしてしまった感がある。もう少しコンパクトに収めても、同じ感動は得られたのではないか。本当に時間があるときに見るこ...この感想を読む
人工知能の見る夢は…
ハーレイ・ジョエル・オズメントがほんとにかわいく、少年型ロボット・デヴィッドを好演しています。息子仮死→母親だけを愛するプログラム(しかも変更不可)のロボット貰う→息子蘇生→息子、ロボット嫌う→息子、ロボットが原因で事故→ロボットイラネという、フィクションとわかっていても合理性のないストーリーに少々首をひねります。ロボット三原則というものがありますが、平地が減少したためにロボットを多用するようになった社会という設定においても、一連のすさんだロボット環境は、実は人間のすさみを反映しているとしか思えず、映画全体が人類への警句なんじゃないか、という気が、最後まで見て感じられました。「母への愛」「プログラム」といった仕掛けの活かし方も、どうなのかな…宗教的な背景があって見ると、また違った印象になるのでしょうか?結末は、私にとってはただただ悲しい話としか思えませんでした。非常に示唆的なものを含ん...この感想を読む