遥かな故郷と、そこで送った哀歓に満ちた少年期を追憶する念を深く込めて描いた「フェリーニのアマルコルド」
このフェデリコ・フェリーニ監督の「フェリーニのアマルコルド」は、「フェリーニのローマ」の姉妹編とも言えるもので、彼の青年期は「ローマ」に、そしてその少年期はこの「アマルコルド」によって、私小説的に描かれていると思う。この「アマルコルド」とは、フェリーニの故郷である、北イタリアのアドリア海に面したリミニ地方の、今は死語になっている方言で、"私は覚えている"という意味との事だ。死語になった、この言葉を敢えてタイトルに使うところに、もう戻る事のない、遥かな故郷と、そこで送った哀歓に満ちた少年期を追憶する念が、深く込められているのだと思う。自分自身と、その生きてきた社会の歴史とは、自分の記憶でしか確かめ得ないものであるというのに、その記憶が、幻想と交錯してしまう事の不確かさと断続性とを、むしろ情緒の面で捉え、ストリーよりは、映像的に描こうとしている。画面の一つ一つが、スケッチ風に非連続的に展開さ...この感想を読む
5.05.0