いかにもハリウッドらしい、冒険アクション超大作
目次
「フールズ・ゴールド」シリーズかと思いきや
この映画は同名の小説の実写化である。その本は読んだことないのだけど、マシュー・マコノヒーが主演であることから、「フールズ・ゴールド」つながりで、同じ役の過去のシリーズかと思っていたけれど、この2つに全く関係はなかった。
好みとしては、この「サハラ」よりも「フールズ・ゴールド」の方が好みではある。相手役も、ベネロペ・クルスよりもケイト・ハドソンの方が好きだ。
だけど「サハラ」の方が製作費は段違いだろう。調べてみたら、「フールズ・ゴールド」が7千万ドルに比べ、「サハラ」は1億3千万ドルと倍近い。それもそのはず、大規模な工場から村のセット、砂漠に埋まった巨大な甲鉄艦など、目を見張るほどのリアルな作りに、お金かかってるなあといろいろなところで思った。
もちろん最近ではCGもあるだろうけど、CGにもお金がかかる。しかしどこを見ても違和感などなかった(最近では違和感のあるCGの方が珍しいけれど)。
そういう意味では、迫力のあるハリウッドらしい大作だと言えるだろう。
マシュー・マコノヒーの憎めない演技
この人はどこまでもマシュー・マコノヒーだ。陽気でかっこ良くって、女性をとろかすのがうまい。この映画の後、相手役だったベネロペ・クルスとつきあっていたと言うのを知って、ありそうだなと思った。
そもそもマシュー・マコノヒー自体、恋の演技がうまいと思う。「コンタクト」でも「10日間で男を上手にフル方法」でも「フールズ・ゴールド」でもそう感じた。彼のことだから撮影の間中、本当の恋人のようにふるまうのかもしれない、それなら相手役の女性もつい恋に落ちてしまうのだろう。
特に「10日間で男を上手にフル方法」ではケイト・ハドソン演じるアンディにバイクの乗り方を教えたり、一緒にアイスクリームを食べる場面のイチャイチャぶりは、いかにも本当の付き合い始めの幸せな恋人そのもので、とても心に残っている。
今回の「サハラ」でも、何度も拉致されるベネロペ・クルス演じるロハス医師に対して、「僕は何度君を助けたらいいんだ」というセリフはとても甘くて、二人が恋に落ちている様子を説明なく感じさせた。
この映画は小説を読んでいないからか、それほどストーリー自体に魅力は感じなかったし、感情移入もしなかった。それでも最後まで観れたのは、マシュー・マコノヒーと、もう一人アル役のスティーヴ・ザーンの力だと思う。
スティーブ・ザーンのコミカルで愛すべき演技
彼は「リアリティ・バイツ」で知った。ゲイである自分を悩みながらもそれを隠して陽気にふるまうところなど、抑えた演技が印象的だった(スティーヴ・ザーンのコミカルながらもキュートな演技は、イーサン・ホークと対照的で、もう一度あの二人の共演するところを見てみたいと思う)。あの陽気さとアルの陽気さは通じるところがあり、その役柄はスティーヴ・ザーン自身が作り上げたものだろう。
他にも彼は「ユー・ガット・メール」や「チェルシーホテル」で見たけれど、一番は「ダラス・バイヤーズクラブ」でのマシュー・マコノヒーとの共演だろうか。あの映画はマシュー・マコノヒーが違うイメージの役に変わって行った頃でもあり、そこでスティーヴ・ザーンを観ることができたのは、また観れたという感じで個人的にはどこかうれしかった。
今回の「サハラ」では、ダークの幼稚園時代からの腐れ縁だからこその信頼関係を結んでいる様子が伺える。いつもダークの引き立て役のような彼だけど、彼は影でものすごい働きをしている。宝となる壁画を見つけたのも、トラブルをなぜかうまく丸めるのも、あんなにたくさんの廃棄物の中から爆弾を見つけたのも、彼だ。
だからこそ、この映画ではもう少しアルがいい目を観れたら良かったのにという気持ちになってしまった。
でも少し言わせてもらえば、ルディ役のレイン・ウィルソンとちょっとだけキャラクターがかぶっているような気がして、もう少しどうにかしたらよかったのにとは思った。
突っ込むところが多すぎるストーリー展開
この映画の原作となる小説を読んでいないから分からないけれど、この映画はあまりにもうまく話が進みすぎる。特に敵の陣地に侵入した時、ダークとアルは二手に別れ、ダークは拉致されたロハス医師を、アルは隠された爆弾を探す。この展開なら、もっと手間取ってハラハラさせて欲しいところ、あっさりダークはヘリで連れ去られそうになるロハスを見つけ、アルも爆弾の場所をあっさり見つける。アルは爆弾の場所は分かったものの、そこに捨ててある廃棄物の中から爆弾を見つけなくてはならなかったためダークよりは時間がかかったけれども、それでもあまりにもうまく行き過ぎた感じがした。
またアルが爆弾を取り除いた後超高熱が吹き出し、彼は間一髪で逃れるのだけど、その逃れた場所が超高熱の炎から近すぎて、無傷ではおれないだろうという感じだったのがまた突っ込みどころだった。
そういう突っ込むところはこの映画には多くあった。突っ込みながらも観れる映画は多いけれど、この映画はストーリーがそれほど面白くなかったので、個人的には観れる範囲のギリギリといってもいい映画だったと思う。
違和感を感じる配役
配役や俳優の動き、セリフなどは監督の采配によるものだから、俳優を非難するのはおかしいとは思う。でもあえて言わせてもらえば、将軍役のレニー・ジェームズと、将軍のビジネスの相手であるマサード役のランベール・ウィルソンはちょっと違うと思った。
まず将軍はストーリーの上ではかなりの悪者で、自分の利益のためには川に毒を流し、下流の国などどうでもよいという発言をする。またロハス医師チームを惨殺したりなどひどい鬼畜ぶりを発揮するのだけど、いかんせんこのレニー・ジェームスは顔が優しすぎる。そんなことをするようにはどうしても思えないのだ。顔で役者を判断するのはナンセンスかもしれないし、登場当初は違和感があってもそのうちなじむことも多い。でも彼に関しては最後まで出てくるたびに、優しそうなおじさんにしか見えなかった。
あと一人ランベール・ウィルソン。「マトリックス」に出ていたから、顔を知っている程度だった。けど、この人は個人的にそれほど演技がうまくないように思う。どこか無表情というか棒読みというか。「マトリックス」ではその無表情ぶりが功を奏したのか、役とよくはまっていたけれど、今回はエリートでクールなビジネスマンでないとだめなはずなのに、どうしてもそうは見えないし、頭がよさそうにも見えない。
最後、だまされて下々の人を殺した水を飲んだ場面、いい展開なのに短く終わってしまったのが物足りなかったけれど、それももしかしたら、彼の演技がまずすぎたからではないかという気さえしてしまった。
良くも悪くもハリウッド
この映画はBGMもハリウッドらしく派手で、俳優陣も超豪華だ。マシュー・マコノヒーやベネロペ・クルス、スティーブ・ザーンだけでなく、ウィリアム・H・メイシーやデルロイ・リンドーなど、主役級の俳優が揃っている。しかも製作費も超リッチで、いかにもハリウッドらしい映画だ。
だけど観た後に心になにかが残るかといったら、なにも残らないと思う。例えばこれを映画館で見たとして、あー終わったまあまあだったかなと席を立った瞬間、今日なに食べようかなと考えるような、そんな映画だった。
それは1億3千万ドルの製作費で、興行収入がそれを下回ったということが物語っているのかもしれない。
ティム・ロビンスの「ザ・プレイヤー」で、売れるハリウッド映画の条件はビッグネーム・ロマンス・バイオレンス・サスペンス・ハッピーエンドだと出ていたけど、この映画はそれが全て当てはまる、ハリウッドらしいハリウッド映画だと言えるだろう。
とはいえ、この映画のハッピーエンド感はとても良かった。この映画の終わり方が映画の中で一番良かったというのは皮肉かもしれない。
あれはマシュー・マコノヒーしか言えない、女性の心わしづかみのセリフだった。
意外にストーリーがもうひとつでも、終わり方のよいものは記憶に残る(今すぐに思い浮かぶのは「ジャンパー」だろうか)。この映画もそう意味では記憶に残る映画だと思う。
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