オトナの階段をのぼったのはだあれ?
ギャグマンガか恋愛マンガか
子どもの頃、夢中になって読んでいたなー。掲載は少年コミック誌だったはずなんだけれど、女子の間で大流行していたわ。時代のせいか、クラスメイトにも「みゆきちゃん」という名前の女の子がいて、男子からは「マンガと大違い」ってからかわれていたっけ。アニメにもなったしね。絵も可愛いし、少女マンガ以上に人気があって、回し読みしたものだ…と思い出話はこれくらいにして、マンガ「みゆき」を名作だと思っていたわ、当時は。これは、恋愛マンガの枠だと思い込んでいたけれど、大人になって読み返すと、前半から後半の真ん中までは、どちらかというとギャグマンガのテイストが強いかな。
だって、現実感が薄いでしょ?体育の先生が女子中学生にやたらあからさまな恋心をアピールしたり、鹿島さんは真人クンに合わせてたいしたことのない大学を受けて挙げ句の果てに一緒に浪人生活したり。過剰なほど女の子のパンチラシーンが登場するしね。コミカルな恋愛マンガって言ってしまえばそれまでだけれど、優ちゃんが登場してからはググッとシリアスになっちゃうんだな。この結末は最初から決めていたってどこかで作者の意図が書いてあったけれども、急展開だったね。急ぎすぎの感じがあったわ。大人の事情なのかしら。ま、だいぶマンネリで間延びしてたと思う向きもあったからな。
衝撃的なラストは問題山積み
そう、急展開。前触れのない真人クンのスピーチでの告白。もっと前に言うチャンスなんていくらでもあっただろうと思ってしまった。あんなにまでして、優ちゃんと鹿島さんをコケにしなくってもよかったんじゃないの。アレが、感極まってってヤツなのだろうか。読者にはそんな素振りも見せない作戦か。それで、私、昔はそのドラマティックなエンディングを素敵って思ったの。ギリギリで王子様が間に合ったわ…みたいな感覚。どちらかと言えば、女子は若松派が多くて実は私もそっち側だったしね。感動で泣いたわ。でも、大人になって読み返してみると、もう、いろいろ頭の中がクエスチョンマークだらけになってしまう。
マンガはいいよ、いい場面しか書かないからね。しかし、あの結婚式の後、真人クンは鹿島さんにどう謝ったのか。鹿島さんだけじゃないよ。若松兄妹と一緒にスキーに行ったり、娘の浪人まで許して交際に理解を示してくれた鹿島さんのご両親の気持ちは?私が母親なら、スピーチの途中で「ちょっと待った!!」と叫びたいところだ。最後に鹿島さんは優ちゃんといい感じになるかもね…みたいなところで終わったけれど、大人になった私は納得しないよ。まず、アンタたち大学生じゃなかったっけ。キャンパスで会ったりしないのかい。大事なことをうやむやにしたままキレイなシーンだけを見せてくれるマンガっていいわね。それを楽しめる寛大な心を持って拝読しなくちゃいけないわね。私は、このマンガが好きだったし、今でも好き。それでも、結末を知った上で読み返すと、もう若松派ではいられないの。オトナの階段を駆け上ったのは私なんだわ。今はもう下り坂だけどね。
男の子向けのファンタジー
さてさて、幸せに外国で結婚式を迎えた二人は、その後どうなったんでしょうか。相変わらず「お兄ちゃん」と呼び続けているのでしょうか。私の子どもは息子と娘…兄と妹なので、そういうマンガは敬遠してきたの。お兄ちゃんが好き!みたいなフィクションは、生理的に受け付けなくなってしまった。このマンガを読み返した時も、何だか二人の夜の営みとかを想像してしまって、その後の物語とかがあっても絶対に読みたくないと思っている。でも、お互いに血がつながっていないことを、ずっと知っていたのだから問題ないんだろうか。照れるよね。安室ちゃんの「Can You Celebrate?」の歌詞みたいか。
若松さんのみゆきちゃんのほうは、お兄ちゃんのことが好きなんだろうなってずっと分かっていたのだから、優ちゃんのプロポーズを受けるべきではなかったんだけど、もしかしたら試したのかい?お兄ちゃんの気持ちを。実は可愛い顔をして小悪魔なのかもしれない。あだち充さんの書く女性キャラクターが女子ウケしないのは「タッチ」の南ちゃんだけではないのか。その時に若松さんのみゆきちゃんがお兄ちゃんにホントの気持ちを伝えていたら、こんな大事にならなかったのにな。作戦失敗か。兄妹として育ててきた二人が結婚するって、若松パパもどんな気持ちなんでしょ。これからの二人の暮らしぶりは変わらないのかな。そういうことを考えると一番いいところで読者から物語を取り上げたね。優ちゃんも真人クンの気持ちが分かっていたんだったら、自分がピエロになることはなかったのに。演出だわ。
兄と妹の素敵な恋愛。夢があるな。少年コミック誌掲載だったから、男の子向けのファンタジーに仕上げたのかもね。可愛い子二人に思われて、一人は一緒に暮らしてる。男の子ってそういう妄想するのかも。
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