多くの中年の青春の記憶にある作品
「想い出がいっぱい」と共に思い出す名作
みゆき、と聞くとH2Oの「想い出がいっぱい」という曲と共に作品を思い出す人も多いのではないだろうか。
楽曲のイメージと作品が一体化して印象に残る作品としては、恋愛ものでは非常に珍しいと思う。高校生という多感な時期から大学生へと、青春時代の大半を登場人物のそれぞれが、互いの立場で葛藤してきてた上での結婚というラストだったため、アニメのエンディングとして起用されていたこの曲が原作のラストにも使用されている点は漫画としても珍しい。
また楽曲のイメージが二人のみゆきが葛藤を乗り越えて大人の女性になったことを示すには非常に効果的だと言える。
ラストは無駄なセリフが一切なく、楽曲の歌詞と絵のみの表現であったが、振られてしまった彼女の方のみゆきに明るい兆しが見えた点は、非常に救いになった。
たいしてモテる要素がない男子の二股優柔不断設定は人気が出る
みゆきにしてもそうだし、きまぐれ☆オレンジロードや、電影少女などもそうだが、正直主人公の男性がいまいちパッとしないのに、どういうわけか二人(もしくは複数)の女性に好かれてしまい、本当は内心大事にしている女性は決まっているのにずるずる迷う系の作品は、どういうわけだか男性受けが良く人気が出る傾向がある。
男性からしてみると、うらやましいやらで自己投影しやすいのかもしれないが、女性誌の場合、あまり魅力的でない主人公がむやみにモテてしまう設定だと、何でこんな子がモテているのか、実際にはあり得ないと読者の共感を得られにくい。
そのため女性誌では、複数の男性にモテる設定になっている主人公などは、それなりに頭がいいとか美人だとか、性格が良いなど女性読者から見ても魅力的な女性に描かれていることが多い。
みゆきに関して言えば、若松真人は基本優しい男性ではあるが、あまりお勉強熱心ではない上にそそっかしく、普段もどうも行動が後手に回ってしまい頼りない印象である。
最終的に妹のみゆきを選んだにしても、有名人の優ちゃんに恥をかかせて公の場で大迷惑をかけてしまう点や、浪人まで付き合わせた彼女の鹿島みゆきに与えた打撃を考えると、本当に真人は誠実なのか?という点では疑問視せざるを得ない。母性本能くすぐり系男子だからこそ、比較的支えてくれそうな女性に好かれたとも言えるし、男性としては理想なのかもしれないが、ラストについては優柔不断のツケもここまでくるとあまりに酷いと思わざるを得なかった。
また、きまぐれ☆オレンジロードは別だが、みゆきも電影少女も、親が子供を放任して海外で働いているあたりは共通している。かわいい女子との同居を描くには、親の存在を希薄にせざるを得ない点も共通している。
戸籍の謎
真人が妹みゆきが父の後妻の連れ子で血がつながってないことに気づくのは、高校になってみゆきに再会した後である。「今まで考えたこともなかったけど、新しい母親と妹がいっぺんにできて」と映画館で母親が無くなるシーンを見て思い出すのだが、後妻と妹がいっぺんにできた時点で、妹との血がつながっていないか、つながっていても父の隠し子で腹違いだとか、普通は早々に気づくのではないだろか。
その証拠に頭がいい妹のみゆきの方は、最初から血がつながってない連れ子同士であることに感づいていたようである。
真人は天涯孤独を妹に感じさせないよう気を使って自分たちに血縁関係がないことを黙っていたようである。これも優しさなのだが、むしろ今までそのことを隠し通せていたことの方が不自然な感じもあり、かえって連れ子同士だと兄妹が知っていた状態の方が物語が白熱したのではないかと思う。
しかし、表立って兄妹じゃないことが分かってしまうと、理性ある兄としての真人ではいられなかったかもしれない。双方が知っていて黙っていたからこそ物語として葛藤が生まれ、それに読者が引き込まれたとも評価できる。
鹿島みゆきはうすうす感づいていたのでは?
彼氏の真人と妹のみゆきが血縁でないことまでは知らなかったにしても、彼女の鹿島みゆきは、なんとなく真人が妹のみゆきへの思い入れが兄という立場を超えていることにうすうす気づいていたようにも思う。
優一と妹の結婚披露宴でのショックな真人の挨拶に対し、鹿島みゆきが浮かべた表情は、「えー、おいおい・・・」という衝撃的ショックではなく、「やっぱり・・・」という諦めに似たものだったのが印象深い。
先に挙げた電影少女でも、歴代の洋太の彼女である伸子やもえみは、彼女の地位を得ても洋太があいにしか見せない「自然な姿」に、本当に洋太が心を開いているのは自分ではなくあいだと終始感づいていた。
血のつながった妹であるはず、という思いがブレーキをかけてきた部分はあっただろうが、彼女は妹みゆきに自分では勝てない「何か」を感じ続けてきたように思う。そう思うととても切なく、優柔不断男性が若干小憎らしく感じるのだ。
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