Lの親切な解説から始まるリライト版の続編
10分弱に及ぶ前編の解説
金曜ロードショー枠の作品ならではの演出として、この作品の前編に相当する「幻視する神」の解説を、死んだはずのLとワタリが行ってくれる。
暑い日が続きますが冷房は27度に設定してなど、視聴者の健康を気遣うLのセリフなどもあり、「いい人」の演出にも役立っている企画と言える。
正直前後編の作品とは言え、10分弱も前編のあらすじの解説を入れるのは珍しいと思うが、やや残念なのはあまりにLと月の頭脳戦の攻防が根深いため、ダイジェスト版を見ても前編の内容や世界観を、初見の人が把握するのは若干困難である印象を受けた。
また、死んでいるはずのLが自分の出番を気にするセリフもあり、もしかしたらあっと驚くオリジナルな展開を期待してしまうのだが、実際は肩透かしを食うので、あくまでLはゲストだと思って割り切った方がいいだろう。しかし、Lを前編紹介に起用する辺りは、死ぬのに惜しい人物としての彼の人気を感じさせる。
アニメ媒体を生かし切れていない感じも
前編の「幻視する神」の際はあまり感じなかったが、後編である本作は、ややアニメという媒体を生かし切れていなかったように思う。
理由としては、前編については、レムやリュークなど死神という非現実的存在が活躍していたこと、ヨツバキラを追うカーチェイスなど迫力あるシーンがあり、アニメ媒体の良さが生かされていた点が挙げられる。それに対し、後編は本来原作では活躍するはずの死神シドウの活躍が割愛された関係で、リュークもほとんど活躍しておらず、殆どが登場人物同士、携帯やパソコン越しのやりとりがメインになってしまっているため、動く媒体が生かし切れなかったという感じを受ける。
強いて言うなら圧巻だったのは、最初の方でニアが見事なドミノ倒しを披露するシーンだろうか。そのシーンのような若干脚色がかった演出は、実写だとどうしてもCG臭くなるがアニメならではの迫力が出ていた。メロは行動的な人間なのに対し、ニアはインドア人間なので、心理戦がどうしても文明の利器を使用したものになりがちだし、原作もその通りなので仕方ないのだが、ノートを盗んだメロたちとの原作での攻防などが割愛された関係で、やや「動」のモーションに欠ける作品となっている。
もっと月の狂気を見たかった
アニメ版は狂気じみた月の作画に迫力もあり、声優の宮野真守氏の演技も素晴らしい。原作のイメージを損なわない狂気を表現できている。
しかし、ニアが月を出し抜いて勝利するまでの過程はほぼ原作通りであるにもかかわらず、この作品では月の最期を改変することで追いつめられる月の絶望感が半減してしまっている。今まで利己的な正義感で多くの人間を殺めた月が、最後に見せる狂気、みっともなさこそこの作品の一つのだいご味であり結論でもあると思うのだが。
原作では一見友達のように振舞ってきたリュークの冷徹な行為により、命乞いをするみっともない月のインパクトが強烈であった。実写も手を下すのはリュークだが、命尽きるまでの40秒の往生際の悪さと、方向性が違っても自分なりの正義を信じて行動した父と息子の対峙が素晴らしかった。
しかし、この作品では、途中まではほぼ原作同様の往生際の悪さや狂気はそれなりに描けているのに、月が命尽きる直前まで命乞いをするようなことがなく、意外にあっさり死んでしまっている。
月の最期についてはこの作品の発表段階で、原作や実写で最後の最後まで月が自分の利己的な考えを曲げなかったこと、その様子を周囲に哀れに思われる点が重要であることが示されているのに、狂気の断末魔もなくひっそり死んでしまうというラストに製作者はどんな思いを込めたのだろうか。
結局勘違い神様になってしまった月は最後一人になってしまいましたということなのかもしれないが、この作品では父親である夜神総一郎が捜査から手を引き、前編で仲良く生活していた母親や妹の描写は一切ない。ニアと月の攻防を知らぬ母や妹は月の身を案じていたのでは?総一郎は息子がキラと把握していたのか?そのあたりこの作品は描き切れておらず、不完全燃焼を感じる。
リライトの意味
このシリーズはまさしくその名の通りリライト(rewrite)された作品と言う意味もあるが、奇遇にも主人公が夜神月(ライト)であることから、デスノート、ライトの活躍再びという(relight)という意味もあるのではと思うと、非常に作品の主旨に合ったタイトルだと思う。
何度もリメイクされているという意味でも、非常にわかりやすいし他作品への広がりも感じさせる。
デスノートについてはやや原作の領域を超えた実写化もその後されているが、非常に二次創作欲をかき立てられる作品ということだろう。ただ、原作並びに最初に発表された前後編の実写の評価があまりに高かったため、内容を改変したリライトにも、そろそろ限界がきているのではないだろうか。
このアニメは、デスノートを知らない人がもっと深く内容を知りたいと作品の深みにはまるきっかけとしては駆け足ながらも良作だと思われ、リライトとはいえ入門書的位置づけになりそうだ。
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