家族で一緒に見づらい学園ドラマ
原作に忠実なドラマ
似ている…似すぎていて思わず笑ってしまったほどである。ドラマ「鈴木先生」の生徒役、カーベーが。この役にこの子をキャスティングした人にお礼を言いたいくらいの気持ちになったよ。カーベーはこのドラマに欠かせない重要な役どころなのである。まあ、それはのちに語るとして…。
私はドラマが始まる前から、原作のコミックスを楽しみに読んでいた。ドラマになると聞いて「最近のドラマって、たいてい原作ありきじゃないか。オリジナルで勝負すればいいのに」と、いつも思う感想を抱いたのである。ところがどっこい、予想は嬉しい方に外れて、見ごたえのあるドラマにしあがっているじゃないか…と素人評論家は思ったくらいだ。だいたい、私は学園ドラマが大好物なのである。
テロップで映し出される鈴木先生の心の声に、教育現場の苦悩やオトコの本音を見知った気がした。そもそも、長谷川博己はメガネが似合う。オープニングで、生徒たちが順番に鈴木先生のメガネをかけ、最後に長谷川博己がメガネを受け取り、それをかけた瞬間、鈴木先生の出来上がり。素敵なオープニングだなあと惚れ惚れしてながめていたよ。
ドラマの内容もほぼ、原作のまま。生徒たちの個性も生きている。また、その一話一話が考えさせられるような問題ばかりで、例えば「給食から酢豚を無くすかどうか」という一見どうでもいいような話にも深い意味があり、私もまた真剣に思いをはせるほど引き込まれるのである。たかが酢豚、されど酢豚。酢豚滅亡の危機に悲壮感を漂わせる樺山さんもまた、原作によく似た子役さんを使っていてそこは笑えるところなのだけれども。
中学生の性に対する意識
ここで、カーベーである。彼女はヤンキー(言い方、古い?)でも、今でいうスクールカーストの上位の方でもない普通の女の子である。どちらかというと、幼い風貌をしているように見受けられる。しかし、実際は男性経験のある首に絆創膏を貼ってキスマークを隠している。一つ上の先輩と性行為にふけり、それが優しくないからと言ってクラスメートの竹地に乗り換えちゃうのである。明らかに性行為が目的で。避妊具を使わないで。それについて、鈴木先生と当事者たちは輪になって公園で議論し合うシーンがあるんだけど、もう私はめまいがしそうになったわ。中学生の性行為の経験って何パーセントくらいなのか。自分が中学生の頃には考えられない話なんだけど。今どきは中学生の性行為はまだ早いです…ではなくて、性行為をするときにはきちんと避妊をしましょうと教えているのか。鈴木先生も驚くことなく、いや驚いた表情を出さずに冷静に諭していたけれども。「だって竹地はセンパイと違って優しくしてくれたもん!」と泣きじゃくるカーベーに私は助演女優賞をあげたいと思ったよ。まさに迫真の演技。アンバランスの妙。
あと、性行為について言えば、小学校4年生の女の子と性行為に及んだという回もあった。そういうもんなのかね。それが、奇異な出来事なのか、特別なことでも何でもない今の中学生の日常なのか、私は知りたい。今の子たちは、そういった情報がすぐ身近にあるし、インターネット環境も整ってるし、禁止したり隠したりはできないだろう。だからといって、快楽を求めるだけの性行為を容認するのはどうなのかなーと大人として不安に思ったし、自分の子どもにはまた違った形の性教育をしてきたんだけれどなあ。常識って移り変わっていくものなのね。
こういったことをまさかここまで赤裸々にドラマで扱うと、家族そろって仲良く見ようよってわけにはいかないね。気を使いすぎてテレビに集中できないわ。
職員室の裏事情
足子先生と山崎先生の狂乱ぶりもまた良かった。富田靖子に脱帽したって感じ。職員室の人間関係にも興味があったので面白かった。教師になる人って仕事に対して温度差があると、教師同士うまくいきそうにないものね。最終的な目的は遠からずのところにあるわけだけど、やり方は何通りもある。仕事とプライベートのバランスも大変そう。先生の中でも「あの子が可愛い」とか話題にするんだな。実際にもありそうだけど、それを良しとしない先生も絶対いると思う。鈴木先生のやり方を許せない足子先生の気持ちはよくわかるけれども、生徒に余計なことを告げ口したり、鈴木裁判の時に盗聴器をしかけたりするのは、ドラマのリアリティーをさげるので、なくても良かった気がする。
リアリティーといえば、鈴木先生の恋人が念をとばす設定とか、鈴木先生が小川さんに対して抱いている気持ちを夢で見るようなシーンも不要だった。オカルトな話はこの学園ドラマにいらない。あ、先生のできちゃった婚は個人的にはオーケーだし、そんなに生徒たちが問題にすることでもないと思ったけど、話し合いの中で自分の両親のいきさつなどを語る場面は素敵だった。ただ、こんなに真摯な生徒ばかりでもないとは感じたけど。フィクションだし、いいか。
生徒の人気投票に過剰反応する山崎先生、実際にいそう。体育の先生ってところが、また笑える。そういうところは変わってないんだ、昔も今も。安心。微笑ましくてホッとしたわ。
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