本質をシュールに描く、革新的かつ斬新な学園ドラマ
既存の学園ドラマを覆す内容
こんな学園ドラマは初めてだった。
時代も変わったものだと感動すらおぼえた。
好みはかなり分かれるかもしれないけど、
私は、今までのどんな学園ドラマよりも面白いと感じた。
とはいえ視聴率は2%台の週もあったほどで、
その数字もオドロキだが、
ホントに数字は関係ないと思わずにはいられない。
視聴率はボロボロだったが、ドラマの質を高く評価され
映画版も製作された、というのも実に納得。
教師が主人公の学園ドラマはいろいろあるが、この作品は、
不良学生たちを破天荒な教師や熱血教師が更生させていくものでも、
教師と生徒との恋愛を描いたものでも、
生徒のいじめや、スクールカーストなどを描いたものでもない。
そういう、何か奇抜なテーマや特殊な人物設定によるものではなく
教師も生徒も、ごくごく一般的で、標準的な学校の日常が舞台。
ただ、「これ、地上派だよね?」とびっくりするくらい、本質的。
人は体験から何を学ぶか
体験をどう捉えて自分の人生に活かしていけるのか
そういう、人生哲学ともいえるものを
中学校教師「鈴木」とその生徒たちの関わりを通して描いているのだ。
「鈴木」は、生徒たちの心の問題や色んなトラブルに対し、
実に冷静に分析し、物事の本質に沿って、
わかりやすく論理的に、解決と成長に導いていくんだけど・・・。
これがもう、見ててものすごくスッキリするし、感心する。
「鈴木」はいつも、物事を俯瞰しながら、
感情に流されたりおぼれたりすることなく、冷静に観察している。
そしてとても論理的だ。
でも、決して「理屈屋」ではないのが、「鈴木」の素晴らしいところ。
というのは、
「人は、理論や理屈を教えられて理解するのではなく、
自ら体験して気づくことで初めてその意味を理解する」
ということを鈴木自身がよくよく大事にしていて
常にその上で生徒と接し、 決して生徒の「体験」を奪わないのだ。
生徒が自発的に自分なりの「答え」に到達できるように
ガイドすることはあっても。
だから、どんなに論理的であっても、
理論や理屈を教える「理屈屋」ではない。
これって、言うは易し、行うは難し、だと思う。
特に教育者のような立場の人は、親でも教師でも上司でも、
先に「答え」を示してしまう人は少なくない。
しかもその「答え」は、
その人本人にしか通用しない「個人的な価値観」だったりすることもあって
教育や指導という名目で、
結果的に個人の意見や価値観を一方的に押し付けてるだけ、
ということも、よくある話だ。
実際、そんな典型的な教師もドラマの中には登場するので
その対比も秀逸で面白かった。
自分軸の在り方を描く、という斬新さ
この作品に私が感心してしまった一番の点は
「鈴木」の視点と在り方の描き方だった。
彼は、自分が体験することや目の前の現象を
自分を軸にして、見て、捉えている。
彼は「学習率」という公式で生徒たちに教えていたが、
「学び/体験=学習率」
つまり、
体験からいかに学ぶことができたか
その学習率を上げていくことで 人生は豊かになっていく
ということだが、
「体験から学ぶ」ということに意識的になることは、
自分軸で生きていないとなかなか難しい。
この体験から自分は何を学べるのか、
この体験は自分にとって何を教えてくれるものなのか、
そういう視点で物事を捉えると、
すべては自分自身の問題であり、
自分自身の心の持ち方、在り方が、
自分の体験を作っていることが分かる。
それが分かると、
他人に依存することはなくなり、
他人のせいにする必要もなくなり、
自分を見つめ、許し、満たし、整えることで
結果的に他者を尊重することにつながる、
ということが、理屈ではなく分かるようになる。
「鈴木」は、
生徒たち自身の中に眠る「本質」に気付かせる「教育者」でありつつ、
何より「鈴木」自身が、生徒たちとの問題から
自分自身にとっての「学び」を得ようとしている 、いわば
「人生の生徒」であるというスタンスで生徒と向き合っている。
だから彼と生徒たちの間に、「命の格差」は生まれない。
年齢差や、人生体験の差、教師と生徒、という立場の違いはあっても、
「人として同じ」視点で生きている。
そこが、生徒人気ナンバーワンのゆえんなのだろう。
ドラマの中で、彼のそんな意識的な在り方を
「鈴木方式」と、彼個人の教育方針として表現されたり、
「鈴木」自身が「僕は実験をしているのです」と言っている描き方が
なんとも絶妙で、ウマいなあ・・・と思った。
漫画が原作、ということなので納得ですが。
それにしても、こういうことが
ここまで直接的に描かれた地上波ドラマを観たのは
これが初めてだったんだけど
こんなドラマが他にもあれば、もっと見てみたいと思いました。
本質的なことをわかりやすく
この作品は舞台は中学校だけど、ハッキリ言って、
「鈴木」と生徒たちが繰り広げる「体験」と「学び」は
40オーバーの私の今の日常とて、なんら変わりはない。
ここで描かれているのは どんな年齢でも環境でも関係ない、
私たち人間にとって普遍的な精神的営みだと思う。
だから、劇中で何か問題が起きた時、
「私だったらどう対処するだろうか」
「私だったらどういう言い方を生徒にするだろうか」
と、リアルタイムで自分自身に問いかけながら見ていた。
で、「鈴木」の対処の仕方や話し方が、
これがまあなんとも見事で、参考になることばかりなのだ。
相手が中学生、ということもあって、
説明の仕方がすごくわかりやすくて、言葉の表現もやさしい。
だけど本質は外さない。 相手の立場や心情もちゃんと汲む。
なるほど、こういうふうに接すれば
相手から反感や抵抗を生まないかもしれない、と、
何度脳内メモ帳に記録したことか(笑)
かなり学ばせてもらいました。
学習率、少しは上がった、かな?(笑)
哲学的なのに超コミカルでシュール
全体的にとても本質的で論理的で哲学的なんだけど、
お堅い学園物か、といったらまったくそうではないのが
このドラマのニクイところ。
お堅いどころか、超コミカルでシュール。
「鈴木」の内面の心情をナレーション代わりに、
克明に描いていくんだけど、これがもう面白すぎ。
どれだけ明晰で意識的な「鈴木」であっても、
色んなことに悩み、ビビり、
えっちな妄想にニヤけもする普通の人間だものね。
長谷川博己さんのおとぼけな演技が絶妙。
彼の出演作品は結構見たけど、もしかしたら私的には
これが一番好きかも。
そして、怪演でおなじみの富田靖子さん、
今回も期待を裏切ることなく、気持ち悪かった~~(笑)
ブラボー(笑)
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)