藤原竜也さんの階段落ちがすごい!
「カメレオン」を視聴した感想です。
この作品はアクション映画でありながら、全体的に叙情的な感じを大切にしているように思えます。
朝焼けの町の空の色だったり、海の色だったり、寂れた旅芸人の舞台だったり。
見ていて心がきゅんとするような、感傷的になってしまうようなキレイな映像が多いなと思いました。
アクション映画は、アクションありきの作品が多いイメージ(いい意味で)なので、他の作品と比較すると、その辺りが特徴的なのかなと思いました。
また、ゴーロ達の最後の晩餐では、そこにいるはずのない観客達が現れたり、ラストシーンでは生きているはずのないケイコがゴーロと並んで歩いていたりと、映像的な表現もあり、ストーリーだけではない映画的な面白さもあったと思います。
また、撮り方の構図も、心に残るようなこだわりを感じました。
特に印象に残ったのは、恋人を殺害された後、敵がその亡骸を引きずったその床に、三角形の穴が空いていて、そこから藤原さんのアップに寄っていくシーンです。
かなりインパクトがあるというか、藤原さんの顔に集中する効果のある構図のように見えました。
藤原さんの表情とも相まって、際立つシーンだったと思います。
アクションだけではなく、映画としても映像美のある作品だったと思いました。
ストーリーも、映像も、独特の美しさの世界観!
また、映像だけではなく、ストーリーもアクション映画らしからぬ、センチメンタルな雰囲気がありました。
タイトルの「カメレオン」は、詐欺師として擬態するゴーロを揶揄するだけではなく、南半球で見られるカメレオン座を指す言葉です。
南半球ではカメレオン座がハエ座を追っている、北半球ではハエ座がカメレオン座を追っている。
その悠久を思わせる世界観が、青春映画のような切なさを感じさせてくれました。
珍しい、藤原竜也さんのアクションシーン!
また、この作品では、主演の藤原竜也さんらしからぬ演技が見所なのではないかと思います。
藤原竜也さんといえば、「デスノート」のような、知能犯の役が多いイメージがあります。
しかし、今回演じたゴーロというキャラクターは、知能犯というよりは、体を動かすシーンが多いですね。
藤原さんにアクション俳優のイメージはありませんでしたが、長い尺のアクションシーンを、本人が頑張って演じていたと思います。
「結構運動神経いいんだな」と思いました。
そもそも舞台出身の俳優さんなので、運動神経はいいんですかね。
キャラクターの設定も珍しくて、普段は仲間とつるんで詐欺をはたらいている青年ですが、実は世界中を回り、傭兵として雇われていた過去がある、ということになっています。
ですので、仲間の前では気を抜いた態度を見せますが、敵にはプロの顔になるギャップを見ることができます。
そうした緊張感の緩急も、画面から感じることができたかな、と思います。
また、狂気の表情も真に迫っていました。
恋人のケイコを殺害された時の、目をかっと見開いた表情や、ラストシーンで顔の半分だけでくしゃっと嗤う表情は、どんな作品にも、後にも先にも出てこないと思います。
迸るような憎しみだとか、怒りだとかが、セリフ無しにも伝わってきますよね。思わず心を持っていかれてしまいました。
藤原さんは、演じる役柄のちょっとした仕草や、セリフを自然に出すことが上手いですよね。
演技臭さが全然ないんです。そういう演出を、一回飲み込んで、役として自然に行っているように見えます。
恐らくこの脚本、キャラクターは、藤原さんでなければ、全く成立しないんだろうな、と思いました。
脚本は叙情的で感傷的な分、ともすると冗長に感じられそうでした。
アクションシーンまでの流れは、起伏に欠け、見ているのが辛くなりそうでした。
しかし、藤原さんのセリフ回しだったり、ちょっとした動きに惹き付けられるので、見ていられたと思います。
恐らく冒頭の「老後が不安なんですよ」という一連のセリフも、藤原さんでなければ、観客を惹き付けられなかったと思います。
それほどこの映画での、藤原さんの存在は大きいと思いましたし、他のキャストでは、つまらない映画になっていたのではないか?と感じました。
また、後半の怒濤のアクションシーンもかっこよかったです。
藤原さん自ら階段落ちを演じるなど、危険なシーンも多かったです。
殺陣は長い尺で撮られており、緊張感がありながらも、スピード感のあるシーン満載で、見ごたえがありました。
カーアクションあり、ガンアクションありで、結構盛りだくさんだったかなと思います。
ただ、オチの部分では、仲間はあっさり死んでしまったし、仲間を裏切って情報をマスコミに流した者も、なんの感慨も無く死んでしまうので、そこは唐突だったのかな?という感じはありました。
冒頭から詐欺仲間のシーンは積み重ねてきているので、もう少し何かエピソードがあっても良かったのではないか、とは思いました。
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