一生懸命生きていくために小さな愛を与えてくれる
生きていくために必死な人をどこかで救ってくれる作品
坂元裕二さんが書く脚本のセリフにはいつもなんでこんなに人の気持ちを理解しているんだそうと驚くことが沢山あります。それは良い意味でも悪い意味でもなので、とても恐怖に感じることもあります。
いつ恋は本当に生きていくために一生懸命な人たちがたくさんいて、今の自分の現状と重なる部分が沢山あり、一つ一つのセリフに心を痛めながら、心を温められながら、そして撫でてもらいながら観ていました。東京に上京してきて何もないところから始まった人生を送ったことのある人には特に浸透していく言葉がとても多くてこの作品を観ているときは指先でツンとされたら崩れ落ちそうになるくらいの心で観ていた気がします。
月9にしてはとてもヘビーな物語であったような気がするのですが、作品としてはとても大好きな作品で何度も何度も繰り返し見たくなる作品で大好きです。観たくなるというよりも、“言葉を聞きたくなるような作品”の方が合っている気がします。その出てくる言葉一つ一つには、本当に耳を背けたくなることも多く、でもそんな私の心までも察してくれているような包み込んでくれる言葉も多くありました。
『説得しようとしないで。』とプロポーズされた音ちゃんが言うシーンではその言葉をちゃんと伝えた音ちゃんの強さと、朝陽の無念さも同時に感じられてとても心が苦しくなりました。音ちゃんのことを考えているようで自分のことしか見えていない朝陽の心の隙間の大きさをすごく感じて、人の心がここまで開いてしまうことに本当に恐ろしくなりました。
『私たちって消耗品なんですか?』と音ちゃんの仕事仲間である玲美が聞くシーンでは、本当に私自身社会で働いているとそう感じることが沢山あり、いつも踏ん張って堪えている感情がとても溢れた場面でした。使い終わったら使用しなくなる、その社会の怖さを知っているからこそもっと自分は強くいなきゃいけないと自分自身にも言い聞かせた瞬間でした。
『恋は、お家もなくなって、お仕事もなくなって、どこも行くとこもなくなった人が帰るとこ。』と音ちゃんのお母さんが小さいころの音ちゃんに話すシーンは、すごくもどかしい気持ちになりました。何もなくても帰れる場所があるだけで確かに少し心が温かくなる。それだけでほっとできる。そんな状況でも大切にしたい人を見つけて大切にすることはとても難しいことだと感じました。
作品の中に散りばめられている言葉一つ一つが本当に愛おしくて大切にしたくて、どんなにきつい言葉でも自分の戒めにしようと思えるこの作品とこの脚本の強さはとても近年まれにみる社会派恋愛ドラマだと思います。
現代の社会問題を避けることなく取り扱っている
東日本大震災で被災しおじいちゃんにも罵声を浴びせられながら亡くなるまで見守ってきていた練くんは運送会社を辞めてブラック企業で働きます。本当に人柄が変わってしまった練くんの受けた被災での心の傷はとても大きなものだったように感じます。あんなふうになるわけないと思う人も多いかと思うのですがあれも被災地の現状で今もそんな状態に悩まされている人も多いのです。
そんな人をも変えてしまう震災の影響の大きさ、そしてブラック企業の裏側までとても黒い部分を描いている作品にとても月9とは思えない闇の深さを感じました。
恋愛を絡みながらも現実的に起きている問題から目をそらさずに描かれている脚本はとてもリアルで考えさせられる内容だったと思います。
人々が抱えているお金の問題や環境の問題、生活環境、就職問題、本当に日本で起こっているようなことには考えにくい問題が沢山描かれていて、でも目を背けてはいけないと感じました。
会社の中で起きている格差の問題や労働時間などの問題も実際に起こっている現実として受け止めていかなきゃいけないと思いました。好きでなければ続けることが出来なくなるような労働環境で働いている音ちゃんの強さには本当に勇気をもらいました。
心の根っこには優しさがあることを教えてくれた
人を傷つけている人も人間であることには変わりなくて、音ちゃんや練くんが心の中で何かを抱えているように他の人たち別のことで悩んだり苦しんだりしているのが人間が生きていくための試練なのだと思います。でもそんな中でも音ちゃんや練くんのように大切にしてくれる存在だったり気にかけて気づいてくれる人は絶対どこかにいて、そういう人に支えられて人は生きていけるんだということを改めて感じることが出来ました。
練くんの運送会社の人たちも、朝陽のお父さんも、音ちゃんの会社の人たちもみんなどこかでちゃんと誰かのために必死に働いて生きてるだけなんだと最終的には思えるストーリーで、人が嫌いになりそうなとき小さな幸せを人のおかげで見つけることが出来る人たちで溢れていました。
メインの若者6人はそれぞれ違う視点で誰かを大切に思っていて、それが相手に届いていないとしても誰かを少し傷つけたとしても、それは大切な人を守るための優しさであることは間違いないんだと気づかされました。
音ちゃんと練くんは今でも北海道と東京で仲良く暮らしているのかな、木穂子ちゃんは会社の人と結婚したのかな、小夏と晴太は仲良くしているかな、朝陽は誰と結婚したのかな、みんなのその後の生活が今でもきになってしまうような、ゆっくりだけど人間模様がとても気になる温かい作品でした。
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