初めて買った小説をあらためて読み更けてみた感想 - びりっかすの神さまの感想

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びりっかすの神さま

5.005.00
文章力
4.00
ストーリー
4.50
キャラクター
4.00
設定
4.50
演出
5.00
感想数
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初めて買った小説をあらためて読み更けてみた感想

5.05.0
文章力
4.0
ストーリー
4.5
キャラクター
4.0
設定
4.5
演出
5.0

目次

話の主題

出来の悪い人だけが見ることができる、『びりっかすの神様』。世間的に言えばきっといいものではないのかもしれないが、一度は出会ってみたいと思わせる。

人は誰しも“苦手”はあると思う。しかしその一面だけを見てしまっている教育現場がこの話の主となる小学校のとある教室である。

集団心理と子供たちの純粋な心理が、びりっかすの神様を神様に仕立て上げている。

冒頭

転入性を主人公とした話で設定的にはありふれているかもしれないが、主人公が『びりっかすの神様』という未知との遭遇をした時の表情が手に取るようにわかる、柔らかい文体が印象的。

初めから未知に好奇心を持つの主人公の姿は、誰しも経験してきた『幼いころの好奇心』を呼び覚ましてくれる。

登場人物と教室内の考察

主人公。母親からの心からあふれたような言葉の意味がくみ取り切れないまだ情緒も幼い男の子である冒頭ではその年の割に冷静であまり心を表に出すようなキャラクターではなく、周りを一段上から眺め見ているような淡々としている印象。しかし、『びりっかすの神様』との出会いから少しずつ自分を言うものを表に出せるようになっていく。くすぶっていた感情が『びりっかすの神様』との出会いで開花するようにも見て取れる。

びりっかす。その話の重要人物で少々乱雑な口調でぶっきらぼうなキャラクターと感じる。まさに『びりっかすの神様』らしい振舞いである。

先生。成績や目の前の事柄だけで生徒の良し悪しを決める、よく言えば単純明快、悪く言えば競争を正しいとして、正しい事でしか生徒を見ることのできない不器用人間。現代社会に当たり前のように存在する“ノルマ”や“成績”に縛り付けられてしまっている会社や上司をそのまま教師に振り当てたような方針。しかし、それを当たり前としている管理職の人々も、また、それを受け入れている我々もある意味『びりっかす』。この先生一人でとても考えさせられてしまう存在感を生み出している。

そして、先生の不器用さに気が付けないほど生徒たちはその先生を信用し、教室という狭く一部分の環境に“洗脳”されてしまっている。まるで今の教育現場や会社のオフィスを見ているかのような、ありふれた空気管なのかも知れない。

話の中盤に差し掛かってくると、主人公の他にもびりっかすの神様を見ることができるようになっていく。それは、生徒たちが思い思いにその未知との遭遇を望んで思い思いの方法で自力で得た結果である。しかし、少しずつ少数派が多数派に移り変わっていくところが、世の中の”日和見菌”のような集団心理を切り取っていて滑稽さを感じる。

ラストシーン

それはまさしくびりっかすの神様の最後であり、びりっかすの『神様』になった瞬間である。

主人公の転入という誰の顔も”のっぺり”してみえていた不安だけの世界から”親しみある”顔ぶれに変えたのも、生徒たちが競争ではなく切磋琢磨することを知った教室も、『びりっかすの神様』の魔法だったのかもしれない。

解説から見た考察

『日本人の集団は理屈ではなく情緒で動く』

解説者のこの言葉をこの話を読み終えてから理解することになった。正しいではなく楽しいで人々は大きなことを成し遂げてしまうことができる。それを子供時代に知っているはずの大人は、正しいを振りかざし、子供に正しいを植え付けていく。そして大人を見て育った子供はまた子供に正しいを振りかざす。これが日本の凝り固まった考えを形成してきたのかもしれない。

しかし凝り固まった考えを押し通すことに必死になる者と対するように、楽しいを謳歌する者もいる。

その差は何なのだろうなんて質問をこの話を読んだ人は簡単なことだと笑ってのけてしまうかもしれない。『楽しさに好奇心を持ち、楽しむ勇気を持つ』、頭を使うのではなく時には心で動くのだ。たったそれだけの微々たる差だ。

作者はそれを読者に伝えてくれているのだと推察できた。

先生とびりっかす

どうしても不思議でならない点がある。それはびりっかすと先生の関係性だ。この話の中では関係性を全く触れずに終わっているが、私にはとても強い関係性が含まれているように思う。

上記でも言ったとおり、先生はとにかく不器用なのだ。なのに、生徒の苦手を受け入れていない。当初はそう思い読み進めていたが、自己心理と重ねてみるとそれもまた答えにたどり着いた。

先生は不器用を自負していわば“コンプレックス”ととらえているように見える。コンプレックスには誰もが目をそらし、触れたくはないものだ。つまりは『弱点には誰にも触れてほしくない』のだ。

そして弱点に触れられない早急な方法とは何か。それは相手に知られる前にの弱点を先に付くことだ。先生はそうやって先生であり続け自分を守っていたのだと感じる。

しかし、それは自身の弱点を隠すと同時に人としての相手からの好意を根底からなくすことにもなる。そこで生まれたのが『びりっかす』ではないだろうか。びりっかすは上記の通りぶっきらぼうでとても情けのない人物だ。

そして先生が教室内に完璧な競争空間を作り出した瞬間に先生の弱点が意思を持ったのではないだろうか。先生は弱点を誰かに見つけてほしかったのではないだろうか。また、弱点は皆に愛されたから先生の中に戻っていたのではないだろうかと。

最後に

この話はどこにもありふれた教室内の風景の中に、少しのスパイスを加えたファンタジーである。

しかし、フィクションと強いるのは“正しい”を求めすぎて“楽しい”を失ってしまう。

『びりっかすの神様』はどこにでもいるありふれた存在なのかもしれない。

そんな期待をこめて感想とする。

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