天使の歌声
魔法少女でも大丈夫
『アイドル伝説えり子』の後番組として誕生したのが、この『アイドル天使ようこそようこ』ですが、どう見てもようこ達の外見は魔法少女ものですよね?ヒロインのようこのデザインはシルエットでも分かるようにとあの独特なピンク色のヘアスタイルになったらしいのですが、赤いマントのような上掛けと、お供として連れているムササビの「ムー」の存在が、さらに彼女を魔法少女に見せています。ようこと親友になるサキも、大きなリボンとサラサラの青いロングヘアというこれまた魔法少女のようで、アニメ雑誌で『ようこ』を知った時は本当に彼女達を魔法少女だと勘違いしてしまいました。ようこを一方的にライバル視する星花京子も、やっぱり魔法少女テイスト満載なので(笑)、三人揃ってもし、ステッキでも持っていたら、かなり完成度の高い魔法少女ものになったでしょう。ただ、残念なのはそんな個性的な女の子キャラと違い、男の子キャラがかなり地味だという事です。ようことサキを何かと助けてくれる豊と亮ですが、その外見も含めてかなり地味です。せっかくあれほど女の子キャラが個性的なんだから、男の子ももう少し個性的でも良いのにな。その方がバランスも良いしもっと女の子のファンも増えたんじゃないのかな?
何でもアリ
『ようこ』の特徴としては、何と言ってもその自由な発想です。まず、主役のようこですが、彼女は性格こそ単純ですが、何とも謎めいたキャラです。「ようこのようは、太陽の陽っ」というあの不思議なフレーズと人を疑う事を知らない性格という以外に彼女の素姓が明かされる事はありませんでした。それなのに、なぜか周囲の人間は彼女に惹かれます。偶然出会い、意気投合したサキは、どうしてあれほどまでにようこと仲良くなれたのでしょう?普通、素姓が分からない人間とはあまり親しくなりませんよね?でも、ようこの周りはいつも彼女をすんなりと受け入れます。あれほどまでにようこを嫌っていた京子さえ、ようこの優しさに心を許します。そんなようこの正体が実は古代人の末裔だと分かった時には、驚きを越えました。だって、古代人の末裔がヒロインのアニメなんて今までなかったのですから。これほどまでに自由な展開になった理由は、おそらく脚本にあったのではないでしょうか?『ようこ』の場合、決まった脚本家ではなく、舞台俳優や一般の主婦などさまざまな人達が手掛けていた作品だそうです。だからこそ、毎週展開が読めず、自由な発想だったのでしょう。それを一番表していたのが、あのミュージカルシーンだったのではないでしょうか?普通、あり得ませんよね?唐突に歌い出す作品なんて(笑)。それなのにそのシーンはそんなに違和感はなく、気が付くとそれが普通に感じられるから不思議です。本来、アニメとは自由な発想で良いのだと教えてくれたのは『ようこ』でした。
まさに天使
ミュージカル調の演出がいかに斬新だとしても、それらを成功させたのは、ようこ役のかないみかさんの、あの透き通った歌声でしょう。かないさん自身、『ようこ』は初めての主演で出世作となりました。かないさんの歌声なくしては、『ようこ』の成功はあり得なかったでしょう。彼女の歌声を最初に聞いた時には、「こんな可愛らしい声で歌う人がいるんだ」と感動しました。更に、サキ役の林原めぐみさんは元々歌唱力に定評がある方で大好きです。林原さんがサキとして歌う曲は彼女の繊細さを見事に表現していて、お二人が同時に歌うシーンは、ぜひとも歌番組にも出して欲しいぐらいです。いかにストーリーが良くても、いかにメロディーや歌詞が良くても、お二人の歌声なくしてはここまでの魅力は感じられなかったでしょう。最終回では、ようこはほとんど出ません。笑顔が消えた未来で寂しく生きる人々の姿は、まさに太陽が消えた世界です。すっかりベテランとなった京子が、しみじみとようこを思い出した時に、唐突にようこは帰って来ます。あの、明るい太陽のような笑顔と共に。そして、やっぱりミュージカルシーンで終わるのですが、そこには一種のさみしさも感じました。製作者側の都合で短縮されてしまったらしいので、まだまだエピソードが隠れていた筈なんです。それらが見れなかった事は本当に残念でなりません。もっとサキや京子の過去も見たかったし、何よりもようこが最終回でほとんど出なかった事が残念で、残念で。現在も、アイドルを題材にした作品はかなりあります。『アイカツ』などがその代表でしょうが、『ようこ』のような個性は感じられません。ただ、可愛らしい女の子達が歌ったり踊ったりしているだけです。これでは、面白いとは言えない気がするのです。本来、アイドルというのは人々を明るく照らす存在です。そして、そんなアイドルの理想像を体現したのがようこではないでしょうか。出来れば、また彼女のような存在が現れる事を願います。
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