大好きの気持ちが炸裂するツンデレ物語
タバコ一本でトリコ
…うまい。このシーンは本当にうまい。確かにタバコ1本とその笑顔で完全なるトリコになった枢木ゆに。どっちかというと,最初のハルカ先生は遊びっぽかったと思うんだよね。生徒だけど,おもしろそう。それだけだった気がする。それが,少しずつ歩み寄って,理解し合って,好きだっていうより愛すべき存在に変わっていったと思う。ゆには最初からハルカ先生がどうしようもなく大好きで,だから嫉妬むき出しで困らせてしまう。天才少女だって,勉強とスポーツができても恋は初めてなんだから。経験もなければ,確かな事実と知識もない。二人の関係性において大事なのは,対話することと,歩み寄ること以外にルールなんてないんだ。
ハルカにとって,美麗とは全然違うゆには本当におもしろかったことだろう。感情のまま,引っかいたり,泣いたり,喜んだり,恥ずかしがったり。みんなからは何を考えているのかわからない,クールすぎる天才少女だと思われているけれど,ハルカにはなんでもお見通し。いかに俺を大好きなのか,嫌というほどわかってしまうから,ハルカは余裕でいられるんだよね。そのため,小南あずさとのキス事件があったあと,容易に振ってきたことには驚いた。やっぱりハルカ先生といえど,嫉妬はするんだなー…。いくら大人だからって,自分のものに手を出されるのは我慢ならない。そのあたりから,もうハルカもゆにのトリコだったんだよなと気づかされる。一足飛びに愛してしまえる方向に進んだのは,自分の家庭環境の問題もあったし,確かな誰かとのつながりを求めていた彼らしいというか。誰より,ハルカ先生自身が寂しかったんだと思う。
変人キャラクターも素敵
ゆには峰藤にハルカとの関係を黙っていてもらうかわりに,いろいろとコスプレをやらされる。それもまたかわいいし,周りはドン引きなのにハルカだけは寛容に見ていてくれることがすごくうれしい。ぶっ飛んでいるキャラクターは描くのが難しいと思うんだよね。ゆにも,普段は自分のツンツンキャラが邪魔して言えないことがあって,そういう複雑な部分をコスプレしていることで隠せている・あるいは隠されていることによって素直になれる。
必ず決まって朝の登校時にゆにの変人行動が発動するのだが,個人的な一番はなぜか一人でラジオのような,朝の報道番組のようなものを開始してしまう回。そのおかげでフジの番組見ようかなと思ったくらい,ツボったわ。野生のイルカに乗って海を満喫したり,馬に載せてもらって空港まで登場したり…なかなかの変人ぶり。一番は弟だけどね。超能力が使える3歳児。すべてを見透かし,すでに言葉も発育ばっちりで,お姉ちゃんのためにいろいろとやってくれる彼。肝心なところはゆに自身が決断を下すけれど,助けられたことがいっぱいあったね。お父さんのゆに溺愛ぶりもまた変人で,どこにもまともな人がいない家族…でもあったかい家族。ハルカ先生にはなかったもの。
本編ではないんだけど,「きょうのキラ君」の単行本で登場する番外編。あれが何より大好き。どれほどハルカ先生がゆにを大好きなのか。伝わりすぎて死にそうになる。どんだけ変人でも,生まれた子ども割とまともであることにけっこう驚いている。ハルカに似たんだろう。
ハルカ先生はチャラいけど真面目でイイ
早い段階で結婚の約束したのもすごいよね。絶対一度は離れる気がしていただけに,早々に結婚の約束をしてしまうなんてさ。結婚してもいいやと思うくらい,ハルカ先生にとってゆには大事な存在になっていた…ってことでいのかな?まだ序盤では愛の積り具合が足りない気がしていて,ゆにを納得させて引き留めておくために,ハルカ先生がわざと重い言葉を使ったのか…?と思ってしまったときもある。だけど。通して読めばわかるけれど,お互いぞっこんなんだよね。ハルカ先生のわかりにくさ,チャラく見せておいて実は一生懸命考えているところも,彼の魅力。
ゆにの幸せを願うからこそ,身を引くといったときはどうしようかと思ったよ。こいつ,マジで,なんなの!って。一生ゆにを好きでいる自信があるくせに,離れる時間を与えるなんてさ。ゆにのやりたいことを邪魔するような存在にはなりたくない。花音のことだって,気づいていたならどうにでもできたはず。もう,本当に真面目。チャラいくせに真面目!そこがいいところであり,歯がゆいところだった。…体の関係を持たなくても,大切にする自信がある。そう断言するハルカ先生がイケメンだったから,許すよ。
ゆにとハルカ先生のラブラブな夜は本編では見ることができなかっただけに,番外編は期待していたけれど,それもまた微妙な感じで…大好きすぎて大事にできない様子もがっつり見せてほしかった。感情むき出しで必死のハルカ先生が,ゆにも読者も見たいのだ!「そばにいたい」とか,「結婚しよう」とか,言葉も大事だし,行動も大事!
脇役たちも熱い
小南あずさに関しては,程よく揺さぶりをかけてきた相手だったなーというくらい。でも好きな相手に一生懸命で,大好きなのが丸見えなところが愛しいやつだった。ゆにのことも,幼馴染として大事にしてくれていたし,藤峰先生に恋しちゃってるのもかわいらしかった。藤峰先生はデレた子に弱いよね…
ナミちゃんに関しては,ゆにの理解者というか,ゆにのそのままを肯定してくれる存在。それはぶっ飛んでるよ…って言ってもゆには聞かないだろうけど。ナミちゃんとゆにの友情が深まる回もあって,けっこう感動したな~少女漫画は,恋と友情の物語。女の子にとって,相談できる相手がいることって何よりも大事なことだからね。ナミちゃんと咲くんの紆余曲折も見せてほしかったけど,あまり本編では登場しなかったのが残念。それにしても,咲くんといい,小南くんといい,的場くんといい…みんな髪型よく似ているよね。
花音に関しては,性格的にもうこじらせまくっていて,やばいわー。そこを的場くんがそっと優しく包んでくれているのだろう。間違いなく,ハルカ先生にとっても最大の敵だったと思うわ。何しろ的場くんの存在感,やさしさといったらキュンキュンしすぎ。包み隠さずオープンで,そこもハルカ先生とは全然違う。同い年だからこそ気取らなくて済むことってたくさんあって,年上だからこそカッコつけていなきゃって思う感情がある。そんなの取っ払って,ただ好きなんだと告げろと言う的場くん…最強。
天才少女は自分で気づける
なんだかんだ,ハルカ先生は大事なときに確かな言葉をくれるけれど,決断しているのは間違いなくゆに。行動して,認められるために努力して,そしてそれを現実のものにして。ハルカ先生が考えていることなんてフっ飛ばして,それ以上の結果を常にもたらしてくれる。何よりすごいのは,ゆには自分で考えて,気づけるというところ。ナミちゃんのことだって,花音のことだって,なんだって自分で決めて,行動して,まっすぐに向き合っていた。そういうところに的場くんは惚れていたし,ハルカも助けられてきたんだよね。ハルカが慎重になっていたことも,ゆにが一足飛びに解決してくれたりして,心肺損だったり…さすが,天才少女は,自分で考える力・そこからの立ち直りが素晴らしい。本当に魅力的なキャラクターだった。
枢木ゆにのツンデレキャラが流行ったわけだけれど,物語を経るにつれ,ゆにはどんどん感情豊かになっていったよね。変人行動はそのままだけれど,ナミちゃん以外にも理解者を得たこと,ハルカ先生と出会えたこと,すべてが彼女の人生を明るくしてくれていたと思うよ。
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