設定の意外性にびっくりする作品 - 愛を歌うより俺に溺れろ!の感想

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愛を歌うより俺に溺れろ!

3.753.75
画力
4.25
ストーリー
3.50
キャラクター
3.75
設定
3.75
演出
3.50
感想数
2
読んだ人
2

設定の意外性にびっくりする作品

4.04.0
画力
4.5
ストーリー
3.5
キャラクター
4.0
設定
4.0
演出
3.5

目次

序盤の「まさか」には、大打撃

タイトルからして、もしや「快感フレーズ」の二番煎じなのではという印象があるこの作品だが、最初の10ページを読んだだけでまさかの設定暴露に驚かされる。

もしかしたら、新條まゆ氏の作品を読んだことがなく、初めて読む作品が本作だったという人は、意外は意外でもものすごくびっくりはしないかもしれない。

しかし、新條まゆ氏の作品と言えば、年齢よりはるかに幼い童顔で、可愛い以外は比較的凡庸な女性主人公に、どういうわけか実年齢設定よりはるかに大人びた男性が彼氏となって、その彼氏は富豪だったり手の届かぬアーティストだったりという、定番設定がある。

だからこそタイトルに騙される。そして最初の2.3ページで、またイケメンバンドマンに童顔のファンがお近づきになり、うっかりラッキーにつきあってしまい、エロ描写の多い漫画なんだろう。快感フレーズが人気だったので第二弾のような漫画に違いないと思った瞬間、イケメンバンドはガールズバンドで、ファンの童顔の女の子が男子だったことが発覚。

この作品は、ルックスのテイストは新條まゆ作品の定番通りなのだが、性別設定が逆になっているという斬新なものなのだ。2012年には実写化もされているが、女子高のボーイッシュな女子と、男子高の女装の似合いそうなかわいい男子との恋愛という設定は非常にユニークでドラマにしやすいと思われる。新條まゆ氏の思い切った設定に、ファンだからこそ意表を突かれる。

色々な要素には好き嫌いが分かれそう

この作品は、女子高と男子高の生徒間でのラブストーリーだが、普段なら主役の二人のカップルの関係を脅かすのは、当然主人公から見た異性になるところを、異性だけではなく同性も絡んで来てしまう点が斬新である。男子ばかり、女子ばかりの学校だと、同性愛的な憧れを描かないわけにはいかないのかもしれない。

どう見たって女性主人公の桜坂水樹は黙っていたらイケメンだし、水樹と恋仲の男性主人公、白石秋羅は可愛い女の子にしか見えない。また、水樹も秋羅も、異性のように見える服装などにはさほど抵抗がないようであるし、これでは同性愛的側面からは逃れられない。単純に見た目だけが逆転した恋愛だけを描くのではなく、同性が恋の横やりを入れてくることもある。

作中は、ややBL要素があったり、女性同士の同性愛のような、少し同人誌っぽさがあるため、新條まゆ氏の描くイケメンとかわいい女の子の恋愛の方が好きだと言う人には、好き嫌いが分かれそうである。

性格の二面性にやや疑問

外見クールな男装の麗人水樹が、秋羅の前では弱い女の子のような一面を見せたり、逆に華奢な女の子の様な秋羅が水樹の前では男らしいところを見せるのは、ある意味当然なのかもしれない。

しかし、ツンデレ設定があるようで、水樹が時にルックス通りのクールな態度を取ったり、秋羅も甘えっこになってまうシーンもあり、全く別人のように感じてしまうこともある。

これについては、人間相手にちょっと意地悪したい時もあるし、甘えたい時もあると思えばそうなのだが、快感フレーズやラブセレブなどの作品と比較すると、非常に登場人物の性格付けとしてはつかみにくく感じる。二面性がある性格、というよりは、男装の麗人と華奢な男の子の恋愛の色んな部分を、性格設定を変えて読者に楽しんでもらいたいという作者のサービスのように思える。

色々な側面を見たい人には受け入れられると思うが、一定の恋愛傾向にこだわりがある人には、性別が倒錯的になりがちなシーンが苦手だと思う人もいそうなため、読者層が限られてしまいそうな作品ではある。

性描写が少ないのはなぜか?

この作品の特徴の一つに、大胆なタイトルにしては性的描写がほとんどないという点である。それに期待して読んだ人は若干肩透かしを食うかもしれない。

ラブセレブのような性的描写がある漫画を連載していた少女コミックに掲載されていた作品なので、多少の性的描写は許容されていたのではと思うが、なぜ性描写が少ないのか?

考えられる理由として、もしかしたら新條まゆ氏が本当に描きたい憧れのストーリーというのは、やはり顔が童顔の女の子と、年齢不相応の男の子の恋愛なのではないか、そんな気もする。

可愛い男の子に、イケメンルックスの女の子の恋愛は、恋愛までは描けても、あまりきわどいところまで描くと同人誌っぽさが強くなってしまう事もあり、少しでも万人受けしづらい設定を万人受けするようにした結果が性描写のカットだったのではないかと感じる。

新條まゆ氏による、童顔のドジで平凡な女の子ではなく、凛として誰から見ても羨望の的になるような女性の恋愛も見たい。そんな願望をかなえてくれた作品がこの作品とも言える。しかし、水樹は凛としている女性ではあるが、それを通り越してオスカルの様な男装のイケメン麗人というインパクトの方が強い。秋羅にも見かけによらず男らしい一面もあるものの、やっぱりかわいさが勝ってしまう。

見た目と内面とのギャップがどこまで読者に受け入れられるかという問題で、イケメンの女性がかわいい男の子に抱かれてしまうというのは、受け入れられる読者層が限られる。そんな背景も感じさせる作品である。

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