言い回しがおもしろい少女漫画 - うそつきリリィの感想

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うそつきリリィ

4.754.75
画力
4.75
ストーリー
4.50
キャラクター
5.00
設定
4.75
演出
4.00
感想数
2
読んだ人
2

言い回しがおもしろい少女漫画

4.54.5
画力
4.5
ストーリー
4.5
キャラクター
5.0
設定
5.0
演出
3.0

目次

ほぼギャグと言っていい

「うそつき」と言っているわけだが、嘘はないよね。だって全部カミングアウトしちゃっているもの。女装が好きな苑に関しては、設定がすごく曖昧で、都合がいい感じがするよね。決して男であることを捨てているわけではなくて、女の子が大好きであることに変わりがないんだけれど、自分が男の姿をしていること・周囲に男がいることに嫌悪感を抱いてしまうという特殊性…そこがまた絶妙なところをついて、広く人気の出た漫画なのかもしれない。

いたるところに男女逆転や、典型的な発想では絶対に表面に出てこないような、恋愛がたくさん詰まっている。これだけたくさんの恋愛のパターンを一気に出せるのも珍しいが、1つのストーリーを軸に展開させていく、というよりも、たくさんのカップルのお話を詰め込んで、時には4コマ漫画だけで仕上げちゃったり…ガサツではあると思う。作者の思いつきがそのままお話になったり、考えていたモノが直前に変わってしまったという過程をそのまま漫画にしてしまったり。かなり自由な作者だよね。でもギャグに磨きがかかっていくというか、ボケに対する鋭いツッコミは毎回笑わせてもらった。かなりユニークな作者なんだろう。さすがにこのキャラクターは本当はこうする予定だった、とか言われると、若干夢が壊れるのでやめてほしかったところではある。

一番いいのは、やっぱり苑とひなたの組み合わせ。何しろひなたは見た目が普通の女の子なのに、物事のとらえ方・行動する時の潔さが本当にかっこいい。苑がぐるぐる悩んで拗ねちゃったときも、ひなたのキスと言葉で簡単に仲直り。誰より男らしかった。だからこそ、男装ひなたのモテモテ具合は納得。見た目も言葉も、すべてがイケメンだったから、17巻の中で男装ひなたが引っ張るお話はかなりのお気に入りだ。

キャラクターが多すぎるからこうなる

そもそも、キャラクターをいっきに出し過ぎなんだよね。だからすぐネタ切れを起こしちゃうし、つながりも脈絡がないから、いつのタイミングだったとしても、いつでも方向転換できるじゃない?作者の狙いもそこにあるようで、いい具合に進んでネタが切れてきたらきれいさっぱり終われるように、リア充はすでにくっつけておくというね。…そんなことまで書いちゃうって…逆にすがすがしい。

数々組み合わせがある中で、もちろん苑とひなたが一番いいけれど、どのキャラクターにも愛着が湧いてしまったね。小次郎たちはピュアできゅんきゅんしまくった。双子同士の組み合わせでは、どんなキャラクターにするのかとても悩んだ跡がみられたね。直太はどういう展開を起こすキャラクターにするか、最初の段階だと横恋慕的ポジションが強めだったはず。そこを敢えて「いや、違うけど?」って持って行ってるのがすごいよね。勇気があると思う。直太のフォルム的には、やはりひなたを思う当て馬キャラってのもアリだったなー。太陽と展もいいけど、一番は後藤さんと委員長…!この組み合わせ、驚きの展開…最高すぎる。後藤さんがまさか男装するとは思ってなくて、でも心も仕草もちゃんと女の子なのが苑たちとの違いだよね。そこに委員長というまさかの王子様。まさかの金髪にまさかのイケメンフェイス…!メガネの奥に潜んでいたびっくり宝箱ぶりは、絶対最初から用意していたなかったよね?って思った。

あまりにキャラクターが増えてしまったことで、どこまでも学校イベントをループさせることに成功してしまった、唯一の漫画と言える気がする。この組み合わせではどうだったのか?あっちはどうなったのか?読んでいるほうからしても気になるところが多すぎたが、作っているほうはさらに大変だったのではなないだろうか。

でも出てくるみんなを応援したい

次々と登場するキャラクターたち。どのカップルのことも応援したいと思いながら読み進めてしまった。こういう大所帯の漫画だと、ヒロインの取り合いが起きたりするものなのに、すでに出来上がった関係っていうのがある意味すごいんだよね。“普通”の少女漫画の形をとにかく壊している感じがして、おもしろい。

当人たち以外、さらにはその家族の中でのトラブルについてもどんどんと描いていき、必ず1つ以上は面白い要素を加えて描いているよね。苑の家族なんてネタの宝庫すぎて、掘ればいくらでも描ける…!ってくらい個性的なメンツだった。なんだかんだ、一番は苑とよく似た展だったけどね。庵、軒、苑、展の4人それぞれの恋だけじゃなく、お父さんとお母さんのラブラブぶりもみせてくれて、これでもかってくらいの愛の形を描いていた。それくらい、愛のカタチ・示し方は千差万別だってことが伝わってくる。

全体として、ツッコミの具合は福山リョウコさんの作品によく似ている。「悩殺ジャンキー」などの代表作を筆頭に、福山さんの漫画も同じテイストのノリツッコミがあるからね。どちらかというと、福山リョウコさんのほうが普通の少女漫画。ストーリー展開・紆余曲折や大事なところでの言い回しが独特で、一筋縄では解決されない雰囲気が漂っている。「うそつきリリィ」は、最期に絶対丸く収まるって信じられるから、常におもしろいなーって気持ちだけで読み進めることができるので、比べるとかなり違っていることに気づく。

太陽…!

恋愛のカタチは人それぞれ。それを表現しているのだから、BLがあったってしょうがない!とは思っていた。直太がそれっぽい雰囲気だったのに、普通に巨乳先輩にベタ惚れでびっくりした…普段ドSのくせに、恋愛においてはめっちゃドMな直太は萌だけどね。まさかひなたの弟・太陽がその道に進んでしまうなんてね。

でもさ、よく考えたらすっごい不憫なキャラクターだよね。姉のひなたは最初から最後まで苑とラブラブしまくってきたというのに…。太陽は女装男子の苑に恋して玉砕。次は別の年上女性に恋したのに、恋した人はレズだった。ひなたが男装したときにそっくりだから、弟の太陽にも同じようにイケメンボイスをやってほしい!って好きでもない女たちに群がられ、太陽の本当のところをわかってくれるのは、姿も中身も男なのに太陽に恋しちゃっている展だけ。「俺はノーマルだったはずなのに…」そんな気持ちがありつつも、展との関係性を発展させる方向で落ち着いてしまったのは、完全に作者の好みだろう?幾度となく恋の悩みにぶち当たってきた太陽の、これからがとても心配だよ。

偏見なく読み進めていこう

みんな真剣に恋をしていて、心のつながりを何より大事にしている。そんなリア充たちの毎日をこんなにたくさんの側面から見て楽しめるなんて、なかなかない漫画だ。LGBTいろいろあるけれど、みんなの恋はどれも輝いていたし、変に「そんな組み合わせ嫌だな…」とは思わなかったね。全部がアリだと思えた。

心がオトコ寄りか、カラダがオトコ寄りか、曖昧なものも多かったけれど、思考がオトコ寄り・女寄りの違いははっきりと出ていた。一番男らしかったのは、小次郎と言えるかな。年下の癖に、レギュラーメンバーの中では一番にオトナな関係への発展を迫った男らしいキャラクターだったよ。巨乳好きの直太も手が早いだろうが、小次郎が手が早いってなるとドキドキが止まらないね。

太陽には、できればあのレズの人といい感じになってほしかったんだけどね。なぜこうも切ない恋を太陽にたくさん経験させてしまったのか…謎だ。打たれ強いわけじゃないけれど、打たれ続けている男のキャラクター…そんな太陽が、作者はめっちゃ好きだったとしか考えられない。

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5.05.0
  • ちびびんちびびん
  • 155view
  • 660文字

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