やっぱり意地っ張りな男が勝利する - 虎と狼の感想

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虎と狼

4.504.50
画力
4.17
ストーリー
4.67
キャラクター
4.33
設定
4.33
演出
4.17
感想数
3
読んだ人
4

やっぱり意地っ張りな男が勝利する

4.54.5
画力
3.5
ストーリー
5.0
キャラクター
4.0
設定
4.0
演出
4.0

目次

定食屋の娘の非日常が始まる

ひまわり食堂の娘、ミー。おばあちゃんが切り盛りするこのお店で、料理を作るのはミーの担当。両親を列車事故で亡くし、おばあちゃんと二人っきりの生活だけれど、おいしいと言ってくれる常連さんたちのため、学校が終わったら食堂を手伝い、学校の休みの日にも食堂を手伝い…そんな生活をしていた。決して恥ずかしいわけじゃないけれど、みんなとは違う生活をしている自覚はあって、匂いがたまに不思議だと言われれば、少し悲しくもなったりして…そんなミーが健気で、かわいい。もちろん、おばあちゃんのお店を守っていくため、立ち退き交渉の人たちにも屈せず、言いたいことをはっきり言う、ミーは素敵だ。

ひまわり食堂に突如やってきたトラとオオカミ。ミーがひそかに書いているBL作品のまさにモデルといってもいいくらいの美貌と雰囲気を持つ2人。出会い方がいいよね。お店にやってきた大学生の2人が、最初は感じ悪くて、徐々に理由がわかって打ち解けて。少し憧れを持たせたところで、大学卒業と共に離れ離れになって。かと思いきや、学校の先生として2人とも赴任してくるっていうミラクル。近づいたり離れたりする、絶妙な距離感がうまい物語だった。

花より団子の時もそうだけど、やはりいいところを持って行くのは、オオカミみたいに我の強い引っ張っていくタイプの男性なんだね。そして今回は、まさかの歳の差。オオカミは社会人でミーはまだ高校1年生。一歩間違えば犯罪レベルのところで、でもその関係性からは不純さとかがダダ漏れするわけではなく、爽やか。心があったまる、いい話に仕上がっている。

短い巻数でグッとくる

6巻という短さで、すごく納得できるラストまで持って行ってくれている。出会いの1巻、そこから教師と生徒という関係になった2巻、嬉しい事と悲しい事を経験して近づく3巻と4巻、そして5巻では波乱を迎えて、6巻にはそこからの巻き返しといいエンディングまで。しっかりと起承転結があるストーリー展開になっていると思う。

ひまわり食堂という1つのお店の観点から考えても、ミーとお店の道のりのリンクしている感じが好印象だ。おばあちゃんが守ってきたお店。それをミーも一緒に守ってきて、来てくれるお客さんにおいしいご飯を出し続けていこうって決めていた。それが、ミーを陥れようとする人のせいで壊れて、お店もダメになって、たたむことになった。そこから、もう一度その味を作り上げればいいってところまで盛り返して、ミーの料理の腕を生かした確実な就職先を見つける。しかしそこからさらにもうひとひねり加えて、ラストの島での食堂という…どこまでローカルな場所で店を経営するオチになるらしい。みんなのためだった料理が、今度は家族のために。ミーの料理を誰よりも必要とする人に贈られることになるのだ。

最初は、トラとオオカミでミーを取り合うことになるのかなーという予想をしていたけれど、どっちかというと、ミーとトラでオオカミを取り合ったような形だ。トラにとっては、オオカミの存在はなくてはならないもの。それはオオカミが誰を一番に大切にしようとも、これからも変わらない。まとめ方として、ミーとオオカミが一緒になってくれて実にちょうどよかったと思う。

トラの気持ち

トラがオオカミのことをどう思っていたか?それはもうBL的な意味で求めていたわけではないってわかるのだけれど、どうしても読者は求めてしまうね…。ちょっと曖昧にされて、微妙にトラがそうだったかも…?っていう残り香を残して去られた印象だ。自分の才能を愛してくれていて、一生懸命応援してくれて、何かあったら確実に助けてくれる。絵に没頭しすぎてご飯を食べるのも忘れるくらい集中するトラもまたすごいけれど、確実に助けてくれるオオカミもまた、愛だね~…そりゃ誤解されるわ。

心のどこかで、ミーとオオカミは似合うってわかっていて、もしかしたら、トラもミーに惹かれていたのに、身を引いた可能性もある。ミーに嫌われたって思ってご飯が食べれなくなっちゃう時点で、かなりの脈アリ。トラとミーの組み合わせは、まさに「花より団子」の花沢類とつくしの組み合わせと同じだよね。心ときめかされる相手はトラなんだけど、どうしようもなく張り合いたかったり、自分をさらけ出してぶつかることのできる相手はオオカミ。いつも土壇場で助けてくれるのもオオカミ…道明寺だわー。道明寺の謎のパンチパーマよりも全然オオカミイケメンだわー。

トラがいったいどういう気持ちでいるのかはわからずじまい。しかし、トラとオオカミ、ミーとの歳の差を考えると…ちょっとずいぶん甘っちょろい奴だよね。16歳ごときに何振り回されてんだよ!って思う。そこは余裕かまして振り回してやるくらいの気持ちでいけよ!時々彼らの歳の差を思い出して違和感を感じてしまうのだった。

紅子との一件はあやふやなまま

紅子に関しては、トラとオオカミを独占しているミーが許せなくてあんなめちゃくちゃな方法を使う悪女だった。みんな騙されてて、誰も本性に気づかず、気づいたのはオオカミであり、正し方も全然先生らしくなくて…どこまでも紅子してやったり!って感じだった。彼女に何か罰が与えられたかというと…そうでもないよね。もっとガツンと何か言ってやるもんだと思ってた。ミーとオオカミとの関係性って…実にクリーンだったのに、ちょっと仲がいいってだけでここまでやる?っていうね。

どうしても女の子って、女の子とのバトルをしなきゃいけない時がやってくる。それが恋がらみなのか、友達付き合いにおいてなのか、どちらになるかはわからないけれど、避けては通れない道。それをいつ経験したかによって、人生を歩んでいくうえでの経験値の差になるなーってつくづく感じる。ミーは、きっといい女になる。これだけは断言できるね。今までも十分、意志の強さ、信念の強さ、自分が大切にしたいと思うものをとことん大事にできるところ…などが垣間見れて、十分いい女だったけどね。ここに年齢が重なって、さらなる経験が重なって、どんどんいい女が磨かれていくことだろう。ミーのつくる料理のレシピ。ほしいなーそれあったらめっちゃ最強の料理上手になれそう。オオカミばっかり独占してずるい!

ラストはミーらしいご決断

オオカミが離れ小島の先生になる。やっぱり親父の跡は継がないわけね…そりゃフードコートを建てる仕事のどこに魅力が?って感じてもしょうがない性格ではある。何気に人をよく見ているし、的確に勉強のアドバイスができることからも、学校の先生が似合っているんだよね。毒舌だけど、イケメンで、怒ってばかりだけど、大事なところでちゃんと褒めてくれる。そういう先生こそ愛されるし、重宝されるはず。きっと九州の島でもうまくやっていけるはず。

ミーも軽々とついていって、そこでひまわり食堂を始める。今度こそ、お花いっぱい、笑顔いっぱい、心置きなく料理を作ることができるね。年頃だから、女の子たちと一緒に遊べなくて、知らないこともいっぱいあった。それが手に入っても、やっぱりミーは食堂のことばかりが気にかかっているくらい、根っからの女将さんタイプに成長してしまったんだよね。料理上手な女性で、小さくて、かわいらしくて、オオカミに溺愛されている。そんなミーがうらやましくなりつつ、どうかこれからも幸せに、協力し合って歩いていってほしいなーと思う。

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他のレビュアーの感想・評価

「花より男子」とは違った面白さがある

1つ面白かったと思っても、次も面白いとは限らない。そう思っていたのですが、「虎と狼」は「花より男子」とは全く違った面白さがあるような気がします。強烈な始まり方をするわけでもなく、ごく普通の少女漫画のような出だし&内容のようにも思えますが、それでも面白い。教師と生徒ではあるけれど、友達のような関係。そのうち違う思いに縛られるようになるのでしょうが・・・。主人公を取り巻く美男子君たちの呼び名が、最初は変な名前だと思っていたし、受け入れられないような気もしていたのですが、その呼び方をする理由が書かれたシーンを読んだ時からすんなりと受け入れられるようになり、全く違和感なく読み進めることができました。まだ1巻しか読んでいないのですが、早く続きが読みたくて仕方が無いです。まだ、「花より男子」のようなドタバタ&笑いのようなものは感じませんが、これからどんな展開になっていくのか、とっても楽しみです。この感想を読む

5.05.0
  • ちこちこ
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