やってることはおかしいけれどヒットする
明らかに変な学校
高校2年生の蓮は、容姿端麗かつ文武両道であり、その優しさと甘いほほえみによって数多くの人間を恋の病に陥れ、告白された女子の数は星の数ほど…とんでもないモテ男であった。一つ年下の弟・澪は、兄とは似ても似つかぬコミュ障であり、アイドルオタクでヘタレ。親や学校のクラスメイトから何か言われるたび強烈な傷を心に負い、男らしさの欠片もなく家出を繰り返す奴だった。そんな澪にも唯一蓮と瓜二つなところがあった。
顔である。
メガネをはずせばその優しき微笑が…!コンタクトにして髪も切ってすっきり見せれば、背は低いけど蓮そのもの。物語は、心を壊した蓮に変わって、澪が蓮の学校に忍び込み、誰が大切な兄の心を壊した犯人なのかを突き止めていく物語である。
とにかく絵がかわいく美しく、蓮と澪は本当にイケメンで、目の保養になる物語だ。内容は、蓮の前に立ちはだかるあらゆる性癖を持った女子たちを屈服させ満足させることにより、「ワンダーラビットガール」という存在を明らかにする目的。簡単にまとめると、ワンダーラビットガールにたどり着くために、あらゆる性癖を持つ連中の性癖を突き止めて満足させてやる物語だ。
ぱっと見その手のエロ本なんじゃないかと思ってしまうが、全部澪の頭の中で繰り広げられる妄想で…実際には、言葉攻めとシチュエーション攻めしかしていないという…毎回の妄想がどんどんレベルアップしていくのだが、すべて女子たちの頭の中・または澪の頭の中で行われる行為である。女子たちといい澪といい、どちらも妄想の中ではあられもない姿をご披露しており、みんなしょせん変態だよね…って思う漫画だ。罵られたい、お医者さんごっこしたい、盗んで罪を責められたい、ただ視られたいなどなど…エリート学校に通っているとか関係なく、こいつらとにかく変態だ。
細かいところは追究しない
いきなり澪が難関高校に通う蓮の高校に忍び込んで、勉強はどうなってるの…?と思ってしまうのだが、そこはスルー。すべて、ワンダーラビットガールを探すことだけに尽力している。出会う女子はみんな蓮に告白したことのある女子たちであり、澪から発せられる攻めの言葉にみな昇天してしまう。もはや快感だよここまでくると。
また、たいして性癖を刺激するようなことをしていないにも関わらず、女子たちは勝手に昇天していることがほとんど。憧れの蓮に自分が認められているような気持ちになって、頭の中でどんどん妄想を大きくし、勝手に満足してしまっているのだ。蓮が手の届かない存在であるからこそ、フラれても仕方ないやってあきらめていたのに、そんな意中の相手が目の前に現れて、自分の大事な部分を刺激してくる…!(妄想で)こんな嬉しいことはない…!ってことらしい。好きな人に自分という存在を見せつけるチャンスとばかりに、悶えてしまう女子たち。…蓮がいかにいい男か、すべてを持った男なのかを痛感させられる澪なのだった。
みんな性癖と言う名の個性をそれぞれ持っていて、隠しておきたいのに実は誰かに知ってほしいとも思っているみたい。確かに、自分の心の中だけにしまっておきたいこともあれば、得意分野を知られたいっていう欲望があるのもまた普通の事。かるーく表現するとそれはフェチなわけで、そこに不純成分を若干増やしただけのことだ。世の中の若者よ、自分はノーマルだと思っているなんてもったいない。みなアブノーマルな部分があったっていいし、そこが魅力になるのだよ。作者はこの漫画でそれを言いたいのかもしれない。
顔がたまらなく素敵
蓮と澪は本当にきれいなお顔。美しすぎて高嶺の花だ。兄はまさに完璧だけれど、自分の顔以外を愛せなくて心が病んでいたらしいと分かる。
自分の顔以外 愛せないんだ…!
って叫ぶ蓮が何とも痛い。っていうかここまで引っ張ってきて、最終的に蓮の病はナルシストだったっていうオチはなんかせつなかった。でも確かに、蓮は設定から何から、すべてがイケメンで素敵すぎる。自分以上の人がこれから見つかるのかどうかと言われたら、きっと出会えないかもね…。しかも、心を壊した原因が、自分が自分の顔しか愛せなくて、多くの女子たちの好意に応えられずに、女子たちを困らせて悲しませてしまっていることに絶望していたという…優しさ通り越して、もはや悪寒がするレベルの悩みだった。そこを澪がちゃんと理解してあげるのがすごすぎて、結果、澪が一番イケメンで不器用で最強キャラのモテ男になったことを痛感させられる。
生徒会長が、寝取られたいという欲望のために蓮を選んだらしいのだが、もはや男子生徒の性癖になるとキモイんだよね。イケメンだったのは、やっぱり蓮と澪だけだと思う。他の男は眼中にない。
一番は、蓮の場合はあのアンニュイなせつない表情だよね…。弟を溺愛していたのは、同じ顔だからっていうのが一番大きかったみたいだけど、それでも自分とは全く違う考え方をする澪をちゃんと大事にしているのが伝わってきて、嬉しくなるというか。BLや禁断愛でお腹いっぱいになりたい人たちの心もきっちりつかんでくれている。
次々現れる女子たち
確かに、男の性癖もいれなければ、女ばかりで相当疲れたと思う。目の前に立ちはだかる女子たちの性癖を見抜き、攻略しなければワンダーラビットガールにつながる情報は得られない…。まさにRPGゲームなのだ。物語が全体として一辺倒になり、シチュエーションを変えたエロを妄想で楽しみながら進んでいくスタイルが最後まで変わることがなかった。そうすると飽きも出てくる。さっぱり核心に迫れずにいる間、確かにかわいい女子たちの妄想エロを楽しみたい人にとってはよかったが、ストーリー展開を重要視して楽しみたい人にとってはだいぶつまらなかったと思う。
だいたい、わりとノーマルに近いであろう、一般女子生徒が全然登場しなくて、みんなかわいくて変態の女子ばかり。いったいこの学校どうなっているんだ?というレベル。みんな攻められたいドMばかりで、Sはいないし、パターンを変えていたのはいいことだけれど、早く最終回が見たいなーって思っちゃったよ。
蓮はお友達もいない感じだったし、九重くんとの話をもっと深めて読みたかったなー…。お友達との硬派なお楽しみがもっと見れていたら、個人的には盛り上がった。
ラストは拍子抜け
女子たちと生徒会長、あらゆる人たちを攻略して、最後にたどり着くのはいったいどんな人…?って思っていたら、なんか秘書がキーになって、蓮のナルシストコンプレックスに対し、澪がビシッと言ってやるっていう終わりだった。
少し拍子抜けしたね。
だってここまでこれだけエロっぽくしてきて、ここにきていきなり真面目っぽくなり、蓮の自分への愛に対して、
兄さんは失恋するべきだ!
って澪が言ってあげて、はい解決…?蓮が生徒会長になって、それぞれが持つ個性を大事にする自由な校風を掲げて終了…?たどり着いた岸は完全に別の世界だった。
それまでに攻略された女子たちがいったい何だったの?ってくらいの終わりで、結局は澪が蓮を攻略して終了した形だったね。だったら最初からそうできればよかったのに…と思いつつ、澪が蓮になりすまして人と関わることをがんばったからこそ、コミュ障を解消して蓮よりも心が強くなれたってことで…無駄ではなかったのである。
どこかでは、澪そのもののアブノーマルな部分も出てくるのかなーって思っていたけど、さおりへの愛だすでにそういう成分だったということで、それがなくなった彼は実にまっさらな状態。あの最終回だと、これから澪に群がる女子が急増しそうだが、蓮よりも確実にうまく女子たちを転がす、最強のイケメンになることだろう。そして彼女に選ぶのはさおりのような地味目女子…。
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