強い剣士がつかむものとは何なのか
大事な部分が薄いがキャラ設定は好き
戦争しまくりの西洋っぽい世界。その中のちっぽけな国サンクワールは、王様のおつむが弱くてもはや属国間近…そんな状況でも、有能な人間はいるもので、その中でも一番の策士である騎士レインは戦いに勝つ方法を提案する。王様は話も聞かずに進軍を開始してしまうのだった。
主人公がすでに最強としてあがめられており、その噂は隣国にまで届いている様子。何しろレインはドラゴンに1対1の勝負を挑み、勝利したことによって、ドラゴンスレイヤーとしての称号と能力、歳をとらない体をもった、稀有な存在だったからだ。そんな設定がいかにも小説っぽくて、おもしろいなーと思う。登場人物たちの設定は実にこまかく、それでいて漫画の中でごっちゃにならないようにしっかりと顔・性格・能力などをうまく分けてくれているので、楽しく読めることだろう。
少し気に入らないと言えば、レインの過去。大切な人を殺されて、自分を奮い立たせて強くなるための武者修行を開始したレイン。無謀なほど強いギルドや傭兵団、しまいには魔族とドラゴンにまで闘いを挑み、いずれにも勝利をおさめてきた実力の持ち主。そんなすごい子だったのに、どうにも漫画の中で彼の過去編が薄くて…レインが人間だけでなく魔族でさえも惹きつけてしまう理由を妄想するためにも、もう少し要素が欲しいなと思うわけよ。レインは剣の能力だけでなく、戦に挑むうえでの頭の良さもピカイチだからね。そんな彼のルーツをもっと語っておくべきだと思うんだよ。ドラゴンとのたたかいだって、あっさりしすぎだろう?
なんでこれほどまでにモテるんだ
確かにね、レインは歳をとらないよ?だから容易に死なないし、イケメンで強くて最強レベルだったらそりゃー…モテてしまうだろうよ。18歳の見た目でありながら、年齢的には25歳くらいになっていて、それなりに修羅場もくぐってきている。そして紳士的な態度と優しさで、どんな人も助けてしまうイケメン行動…惚れないわけがないのである。ドラゴンの恩恵なのかわからないが、人を魅了してしまう能力まで身についてしまったらしい。
サンクワールを治めることとなるシェルファとレインがうまいことまとまるのかなーっては思うのだが、とにかく登場する女の子たちが多いので、どのタイプも想像してしまうんだよ。レインは爽やかボーイ君だから、どんな人が合うかなーシルヴィアかなーまさかのミシェール実体化してそっちになるかなーノエルかなー…って選択肢がとにかく多すぎるので、妄想も広がりまくっておもしろくなる。
そもそも、こんなすごいドラゴンスレイヤーがなんでこんな小国でモソモソと生きているかというと…それは単にこいつの故郷だからなんじゃないのって話なんだが、力を求めてさまよう存在ってやつらしい。シェルファに忠義を尽くすと決めてここにいるけれど、こういう長い小説のお話は、展開がどうなってもおかしくないので、まだまだわからないところだ。発刊遅すぎてイライラするわー早く続きがみたい。
サンクワールの重要な綺麗どころはすべてレインに心奪われているし、ギュンターもはっきり言って怪しいし、そのへんもまとめてくれないだろうかを期待している。ラストになるまで甘いお話は出ないんじゃないだろうかと思ってはいるけどね。
キャラクター設定と国同士の攻防も楽しむ
さすがは小説が原作なだけあって、とにかく設定がこまかい。そこが嬉しくもあり、物語に慣れてくると若干ウザくもなる。大事なことなんだけどね。もちろん詳しい方が頭の中でいろいろ妄想したりするときにちゃんとイメージが固まるから嬉しいし。これだけ多くのキャラクターを登場させているにもかかわらず、漫画の中で手抜きのイラストにはなっていなくて、それぞれに特徴ある見た目になっているのがすごいなーと思う。RPGゲームにあるテイルズシリーズのように、ある程度固定のメンバーの中で物語が進行するのとはまた違って、どんどんキャラクターが増えて逆に大変だなーって思うね。そのたびお国の状況と隣国の状況とを考えながら、要所で必要なキャラクターを輩出するって…なかなかに頭を使わなければならないと思う。…かわいい女の子ばっかり増えるので、単純に女の子の花園にしたいのかもしれないけどね。
若干気に食わないのが、ザーマインがただの通過点であったとしても、あっさりマジックアイテムでレインのところに帰れてしまったこと。全然おもしろくなかった。そこにたどり着くまでが大変になっちゃったら、物語の進行がとんでもなく遅くなってしまっただろうけど、そんなあっさり帰還できても一喜一憂が忙しいし。レイグルがラスボスって設定なのに、そこに一度あっさりたどり着いて、何やら適当に闘いが始まって、強いとかどうだとかいう話をして…戦争だっていうのに、ギャラリーが悠長に無駄話できる環境なんて、シリアス感が全然ないだろう?レイグルとの闘いは、もっと後に取っておいていいんだよ。
それと、捨て身の作戦は本当に最終手段。早々に出すのはやめてほしいね。そのあとどうすんだよ!って心配になっちゃうしね。
国同士の関係の複雑さは面白みが増す
ザーマインとサンクワールの間だけで物語が進むのではなく、他の国の立場とかも含めて進んでいくのがリアルっぽくていいよね。たいていが1対1のような状況で、どちらかが悪くて、どちらかが正義のように表現されるけれど、安易にそうさせずに、お互いの譲れない部分をどうにかするための闘いなのだ、というのが好感が持てる。実際、魔人たちは人間から恐れられているが、レインに力を貸してくれる魔人もたくさんいるし、レイグルだってレインのことは認めているわけで、完全に悪な存在が立ちはだかっているわけではないんだよね。レイグルとは最後まで分かり合うことは叶わなそうなので、どこかでどちらかが死んでしまうのかなーと予想してしまっている。
もしくは、ミシェールの存在を消すことが平和につながると判断されてしまい、レインも守れず結果的にはそういう悲しみの結末に至る可能性もゼロじゃない。いったいどのあたりから仕上げにかかるつもりなのか、気になるところである。
レインの強さは重々わかっているのだが、それでもまだ発揮しきっていないものがあるような気がしてならない。それと、ビッグな闘いになるたびに、レインが傷つくことも増えてきて、若干最強感が薄れているのも悲しいところ。一気にバッドエンドにされないかとひやひやしている。
複雑なのがおもしろいところだけど…
さすがにね、勢力図がもう複雑極まりないところまできている。これだけキャラクターが増えたら、あとはスパイの存在だよね。絶対どこかで何かが動いているはず。そして十中八九、それは女だね。数少ない男キャラには、そんな人いないと思う。危ないのは女。サンクワールの中にいる女なんて一番恐怖。リエラとか、一番シェルファ(ミシェール)に近い存在こそ危なすぎると感じる。さすがに、副将軍がスパイだったら泣いちゃう。絶対受け入れられずにそっと本を閉じてしまう気がする。
瀕死状態を乗り越えて、レインはまた戦いに赴くだろう。強いからとすがられても、傷つくのは確か。どうかハッピーエンドになって、レインが孤高であり続けてくれると、夢があるなーと思う。レイグルと刺し違えて死ぬとか絶対やめてほしい。それならいっそ仲良くなってくれ。
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