包容力ある男から若い男に変えて大丈夫か心配
なんで年上の男ってかっこよく見えるんだろう
もちろん、女性が年上のパターンだってあるのだが、基本的に男性は際限なく年上でも心ときめくものがある。年齢を重ねていても男性としての機能を失っていないっていうことはまず置いておいて、包容力が全然違うんだろうとは思う。余裕があって、わがままも流してくれて、心に自由をくれる感じがする。多くを要求することがなさそうだし、ただ大切に、愛してくれそうだものね。少しくらいのシワなんて気にしない、人間として側にいたいと思える人と結婚したいと思う女性が多いんだろう。
この物語では、そんな余裕ある高遠さんというご高齢な男性が20代の女の子をつかまえて結婚している。どんな風に心を寄せ合い、結婚したのだろうか。孤児だった妃菜に抱く感情が同情以上のものになったのはどんなきっかけだったのかとか、聞きたいことが山ほどある。なのに、すでに高遠さんは天国へ旅立った後で。妃菜が未亡人になったところから物語は始まっている。3巻という短さで高遠さんの魅力まで語るには足りなかったのだろうとは思うが、そんな後ろ姿ばっかりじゃ、もはや幻覚なんじゃないのと思ってしまうよ。遺産や保険金目当てではなく、確実にあなたを愛していた。一緒に生きていく時間があれば、他に欲しいものはなかったらしい妃菜。高遠さん、どれほど紳士だったのだろう…。年齢が離れているからこその愛し方、過ごし方のほうが気になるのに、すぐに若い者同士の恋愛の話に移るなんて。許せないところだ。
妃菜がとにかく大事にされすぎて
どいつもこいつも妃菜を好きになるんだもんなー小悪魔!天然キャラという最強武器を持ち、大食い・大酒飲み・酒乱というのをネガティブな部分に持ってきたのかもしれないが、むしろかわいくするわ!そこに年上男性と死に別れた未亡人というステータス、美人という要素を加えたら、こんな最強コンテンツのものに勝てるものがあるんだろうかと思ってしまう。死んでしまった高遠さんを想いながら、あとは一人で生きていこうと決めている妃菜。「全部高遠さんが教えてくれたの…」っていう響きもまたそそるからずるいよね、この女。いじめたいわ。
そのくせ、元テニスプレイヤーだった颯士に心ときめかせてずるずるー…っと体の関係を持ってしまうその浅はかさ!もう少しねばれ!と言いたい。もともとそんなに長編にする気はなかったのかもしれないが、何度読んでも許せないポイントである。高遠さんへの罪悪感、自分への許せなさから高遠さんが遺してくれたカフェを飛び出す妃菜。こんなに早く彼以上に想える人が現れるわけがないって信じたい妃菜。自分の軽率さに、少し反省したらいいよ…ってなんで弁護士さんのところに身を寄せるかなーおもしろすぎるよ妃菜さん、裏切らないなーその小悪魔な性格!よく考えて、あなたをモノにするためにしかがんばってないんだよその弁護士は。どうせ颯士が助けてくれるんでしょ、好きな人が!完全武装の妃菜ほど強いものはないと思うよ。本当に心の底からね。
妃菜に遺されたもの
高遠さん、なんていい人。自分の愛した人に遺すものは、お金なんかよりずっと大きくて、大切なものだった。小さなカフェと住居、そこに暮らす3人のイケメンギャルソンたち。その中から婚約者を選べばいいって…後からわかったことだからね、いいんだが、最初からこれが分かっていたらむしろ絶対再婚できないと思うんだよ。わざと何も知らない状態で引き合わせて、妃菜のことを深く知ったら絶対恋に落ちるはずだって確信があった。最愛の妻を相続争いに巻き込まないため、幸せで楽しく未来につながるものを遺してあげたいと願った高遠さん。…人格者なんてもんじゃない。策士でもある。自分が死んでも、未来に何かを遺そうとできる、その心意気が好きすぎる。
高遠さんが遺した3人の若者は、みんな高遠さんに恩義を感じている人物であり、かつ心優しき者たち。何も知らされずに用意されて、まんまと打ち解けていくことになった彼らは、滑稽と言えばそうだが、でも確かにいい関係性を築けていた。好きになる相手まで世話になったらもう一生高遠さんに頭が上がらないよね。もう亡くなっているのもあって、一生勝つときはやってこない。それってなんかすげー悔しい気がする。別に颯士・望・美澄の3人が高遠さんに勝ちたいとか思ってるわけではないだろうけど、何もかも用意されてるのは癪じゃないのかな?そう考えると、颯士が鈍感で、優しくて、妃菜と波長が合う人物だったなーと思う。深く考えられない感情的なタイプね。
本当は望になればよかった
望とだったら、影と影を引き合うような、そして助け合えるような関係になれたんじゃないのかなーって思うんだよ。美澄みたいに複数人数いるなかでのチャラキャラというのは絶対選ばれない。だから予想通り颯士と妃菜で順当なんだろうとは予測できた。でも将来高遠さんみたいな器になるのは望のほうだろう。心に抱えた闇や、自分を偽ることも、ギャップのかわいさも、全部が真っ向勝負の颯士よりもかっこよくて、不完全さがよかった。人に悩んでいるからこそ、妃菜が成長させてくれた。妃菜は誰かからもらうばかりだったけれど、望とだったらお互いに与えあって生きていくことができたんじゃないかなーって思う。
序盤から妃菜のほうが颯士のほうに惚れている感じがしたし、高遠さんそれも狙ってたんじゃないのかって思うし、よく考えて選んでほしかった…。3巻という短さが問題なんだよ。6巻か7巻くらい続けられてたら、絶対望になった。美澄は相談役のままだけど。
望が選ばれていたら、年上男性の次に年下男性?というタイプの全く違うことになっていたかもしれないが、妃菜が生きるこれからへの変化として受け入れられる内容になりそうじゃないか。颯士が元テニスプレイヤーでどんな感じだったかの情報も薄いのに、望の情報のほうが多少濃かった。それもあって思い入れが相当深いのだ。出来レースで進むより、どんでん返しを本能的に求めている自分がいる…。望の爆発・かっさらいでもいいから見てみたかった。若いんだから、頭でばっかり考えるな!
ストーカーはいけませんよ弁護士さん
弁護士さんのことは絶対誤算だったと思うんだよ、高遠さんにとって。未亡人の妃菜を隙あらば落とそうと狙っている紳士。当初から、ギャルソン3人たちが妃菜の結婚候補者であることを知りながら、何もかもをわかっているうえで妃菜を落とそうとしている…怖い。しかも、ちょっと純情なところが残っているから余計に怖いんだよ。ワルな人だったら、酒乱の妃菜に迫られたらそこではいごちそうさまってなるのに、そこをならずに我慢して我慢して…どうにか正攻法でいこうとして踏ん張ってるから、爆発したら手が付けられなさそうじゃない。
それを知ってか知らずか、妃菜はカフェを飛び出して藤堂さんに身を寄せる。あーあーひどいよこの女ー!!せめて親友の家に行け。もはや悪意しかない気がする…藤堂さんの心をもてあそんでいるんだ妃菜は。そして案の定強引になった藤堂さんから逃げて、最愛の高遠さんのお墓へ…悲しいとき、助けに来てくれるのは颯士だね。そのままめでたくゴールインする2人なのであった。
人は一人じゃ生きていけないが、それは物理的にも確かに一理あるけど、精神的なものが7割だと思う。大切な人を想って生き続けるって、けっこういい気がするんだよ。未亡人が恋しちゃいけないわけじゃない。亡くなった夫が望んだことなら、なおのこと新しい人と結婚することを選ぶかもしれない。それでも、もう少し迷いと、紆余曲折が欲しいんだわ。
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