未亡人って恋してもいいですか
歳の差婚はこうなる
歳の差婚においては、女性がめっちゃ年上っていうパターンよりも、男性がめっちゃ年上っていうのが多いですよね。それは男性だって若い女性のほうが好きだし、年とってからでも若い女性から好かれたら嬉しいじゃないですか。女性も、包容力があって、自分を養ってくれて、自由でいさせてくれる男性って安全だから、少しくらいのシワよりもオスっぽささえあればストライク圏内だって人は多い事でしょう。
ということで、私は主人公の未亡人・妃菜さんと高遠さんとのなれそめのほうが聞きたかったんだよね。だけど3巻というコンパクトさからか、キャラクターの薄さからか、全然描いてくれず、顔もわからず、もはや幻想だったんじゃないのという気すらしていました。出会ってすぐ、すでに妃菜さんの心は颯士に持っていかれていたのかもしれません。
年齢がかけ離れていると、本当に愛が試されますよね。世間体だったり、子どもの問題、将来の問題、遺産の問題などなど…いろんなものを置いといて、「ただあなたと一緒にいる時間を大切にしたいと思っているんだよ」という深さが本当にあるのかどうか。利用しようと思えばできてしまう危うさがあるのが歳の差婚ですから。遺産目当て、保険金目当てとして利用する犯罪者もいますし。残されたのが若いほうなら、再婚するチャンスがいくらでもあって、相手が死んでさえいれば何度でも新しい相手と楽しめる…いや、この物語はそんなディープな展開は全然ありませんからいいんですけど、歳の差婚ならではの何かっていうのが足りなかったことが残念でした。
世間知らずなお嬢さん
ヒロインの妃菜さん、キャラクターとしては天然・大食い・大酒飲み・酒乱という組み合わせでした。見た目はかわいい・キレイ系なのに残念、でも親子ほど年の離れた男性と恋に落ちて結ばれ、そして2年足らずで未亡人になってしまった可哀そうな女性…みんなの前では元気で、時折一人で涙を流す。男としては庇護欲をそそられるものがあるんでしょうか。個人的には、死んだ人を想いながら死んでいこうという割には、あっさり第1話で颯士で決まりだなと思わせるフラグをでっかく立て、ずるずると揺れるがままに一線を越えるというところまで…なんじゃそりゃ。あなたの決心・操はそんな簡単なものだったんですか…たいていは、まさか一気に体の関係つくるところまではいかないで、心が持っていかれちゃう!っていう焦りを描いたりとかするのに、全部飛び越えていくとは思いませんでした。ここはそれなりにびっくりしておもしろかった。
亡き夫に対して裏切っているような気がして、思わず忘れ形見のカフェから出ていった妃菜さん。心変わりを認めたくなくて、彼以上に想える人が現れるわけないと思っていたはずの自分が許せなくて、3人の甘いギャルソンたちにも親友にも申し訳が立たない…ってことで、妃菜さんをひそかに狙っている(妃菜さんはまったく気づいていない)弁護士のところへ身を寄せることとなります。弁護士にとっては願ったりかなったり。妃菜さん、どこまで小悪魔展開するつもりなんでしょう。天然は度が過ぎると悪意と取らざるを得なくなるというのは本当ですね…。
ワケありメンツ
そもそも、なぜ妃菜さんに亡き夫の莫大な遺産が残らなかったのか。それは、卑劣な相続争いに彼女を巻き込まないための、高遠さんの作戦でした。で、ご丁寧に、今までその能力や人柄をかって大切にしてきた3人の若者たちを、妃菜さんの再婚相手にと準備をしていたのです。自分が死んだら彼女をどうか守ってほしい。いやいや、自分のものだけであってほしいと思わないところは紳士的だが、何も知らされず用意される方の気持ちになってくださいよ。自然と惹かれてはいったみたいだけど、迷惑な話やで!ご丁寧にQUEEN’S CAFÉというお店兼住居という住まいで、1つ屋根の下の展開にさせ、否応にもお互いを知るようにさせて…なんてお人。さすが資産家。お金儲けだけでなく人の扱いもわかっていらっしゃるようだ。
颯士、望、美澄の3人とも、高遠さんに感謝してもしきれないという恩を感じており、その奥さんだった妃菜さんを大事にしないわけがないんです。キレイに言えば、「彼女はとても真面目な人だから、僕が先立ってしまったらもう誰も愛さないとか言い出して、一生1人で生きていこうとするんじゃないかと思っている。そんな悲しく寂しいことは、長い彼女の人生の上で絶対にさせたくない。僕の見込んだ君らなら、僕の大切な人を任せてもいいと思っているんだ…」ってことになりますが、悪く言うと、「お古で申し訳ないが、僕の大切な人をきっと君たちなら幸せにしてくれるはずだ。だって君たちは僕が助けた子たちなのだから…」という恩返し最初からお願いするつもりだったんじゃん?という疑惑も浮かびます。なんか胡散臭い。
望がよかったのに
個人的には、颯士よりも望でした。美澄はキャラ的にたぶんないだろうなとは思っていたので予想通り。おそらく颯士とくっつくんだろうという出だしをそのままに、結局揺るがすものもあまり強烈でなくぬるかったですね。キャラクターや心に抱える闇の深さ、ギャップも含めて、颯士よりも断然かっこよかったのになー。人との関係性に悩みながらも、妃菜との出会いによって少しずつ前進していく姿がもっと見たかった。颯士は、元テニスプレイヤーという手に職が実はあり、妃菜がファンだったことから、お互いを意識せざるを得なくなっていく。一目惚れに近い感じかな。だから行動も衝動的で、理由がないまま本能で動いちゃってる感じなんですよ。自分の境遇と照らし合わせたからってあんなに心配にはならないもんだし。
望だったら、今度は年下男子ですか?というツッコミもできたはずなんですよ。また、自分を守ってくれるときもあれば、否定するときもある。望の本当の良さってやつは、3巻くらいじゃちょっと足りないんだよな~…過去編を出すなら、もっとこまかな背景情報を入れてちょうだいよ。というか、颯士も含めて、全体的に情報足りな過ぎるんです。もっとこう…爆発させたい気持ちってやつがあるんじゃないの?ほとんど最初から出来レースで固めちゃってていいってこと?
弁護士でストーカーってシャレにならない
唯一の危険人物。それが弁護士の藤堂さんでしたね。未亡人となってしまった妃菜さんを最初から、徹底マーク。ご予定から実は3人のギャルソンが結婚候補者であったこと、今までの過去のことまで何もかもご存知。だけど弁護士としての仕事の前に、一人の男として妃菜さんを支えたいと考えていた彼。もはやストーカーなのではないかというくらいのリサーチ力でしたね…怖すぎる。いつ心の防波堤がぶっ壊れてケダモノと化すかわからない。そんな危険な藤堂さんのもとへ、何食わぬ顔で挨拶に伺おうとする妃菜さんの天然という名の悪意。居心地のいいあのお店を出て、行き着く先は藤堂さんですか…せめて親友のところにでも行ってくれりゃー少しは常識的なところも残っていたかと褒めようと思ったのに。結局焦った藤堂さんのもとからも逃げ出して、最愛の元夫のお墓へやってきたら、颯士が待っていて、めでたくゴールインを遂げました。
なんか、人ってそんなに弱いですかね?一人になることだって、誰かと支えあうことだって、焦らなくても時間をかけてできていくものだと思うんですよ。少しずつ、少しずつ隙間を埋めていってほしかった。まさかの華麗な変わり身が、どうにも受け付けません。
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