苦しすぎるラストに涙する
ナイスな俳優陣で鮮やか
小笠原アキは天才サウンドクリエイター。クリュードプレイ(通称クリプレ)というバンドに所属していたが、自分たちの演奏する音をプロデューサーに使ってもらえず、脱退した。それでも、クリプレに対して楽曲は提供しており、音楽と関わらずに生きていくことができなかった。やさぐれていたアキは、偶然出会ったリコにナンパを仕掛け、一目惚れを装って付き合おうとする。そして理子は逆にがっつり一目惚れして、2人はお互いの素性を知らずにお付き合いを始めた…
漫画と同じ。いいねー
君のことなんか ちっとも好きじゃなった
というアキが、少しずつリコを好きになっていく過程、そして音楽から離れたいと思って手に入れたはずの人が、やっぱり音楽の人だったという運命のいたずら、好きなのに離れなければならなくなるせつなさ…いい映画。
ヒロインのリコはオーディションで選ばれ、演技プラス歌唱力も求められた。大原櫻子さんはこの役のおかげで大々的にデビュー。見た目のマッシュっぷりもよくハマっていて、いいキャスティングだったと思う。恋愛モノが初だったという佐藤健も、その流し目がエロいというか、大人というか、複雑な気持ちを抱えたアキをよく演じ切っていたなーと感心。高樹プロデューサーが反町さんっていうのがちょっと意外だったが、反町さんくらいイケてるおじさんじゃないと、茉莉は振り向かない気がするなと思い直した。シンヤ役の窪田くんの表情なんかは、漫画とよくリンクしていて自然。総じて主要なキャストはかなり良かったと言える。
ただのリコ・ただのアキに恋をする
物語の中では、アキは音楽以外の確かなつながりを求めていた。なのに、偶然手に入れたものも、全部音楽がすべてだった…。せつないよね。結局逃れられない。それでも、音楽なしでもアキを好きでいてくれるリコに対し、アキは特別な感情をいだいていくことになる。リコも、アキがクリプレのアキじゃなくても、そのままを愛していた。
リコのほうが年下だけど、アキを包み込む優しさと度胸がある。そして確かな歌唱力。アキはますますリコに惚れてしまうことに…リコを公私ともに大好きなアキが、リコのために書いた曲。そりゃー最高の出来になるに決まってる。そしてそれがデビュー曲として使ってもらえるってときに…2人は別れなきゃならなくなる。高樹さん、もっとうまいことやってくれよ。なんでそうなるんだよ!リコのデビューを守るために、アキが嘘ついて離れていくに決まってる。だけど、リコはアキが自分のために嘘をついてくれたことをちゃんと気づいていて、そして離れなければならないことを悟っている…物分かりが良すぎる。そうでなければお互いの立場を守れないからだ。
2人のことを知っていた瞬も、辛かったよね。最後、瞬のおかげで2人は話ができた。でもそれはちゃんとした別れ話で…あー苦しい。なんで君なんだろうね。嘘から始めたことなのに、本気になることがあるんだね。ただ君を好きになっただけなのに、一緒に入られないんだね…続編出ないかな…漫画も最終巻出たし。絶対最高になるのに。
本当はシンヤにもっと迫らなきゃ
物語の中で、シンヤって相当でかいんだよ。アキを揺さぶる唯一の人。確かに高樹さんもいるけど、高樹さんってアキのこと大好きじゃん。だから愛も感じるんだよ。重要なのはシンヤで、アキのポジションに入ったベーシストであり、アキに憧れてもいたし、嫉妬もしていた。それはアキもシンヤに対して同じような感情を抱いていて、リコとアキだけでなく、アキとシンヤの物語でもある。高樹さんはどちらかと言えば見守っている立場で、自分の経験をもとに、彼なりの愛でプロデュースする子たちを育てているんだよね。この映画の中では焦点がアキとリコに集中しすぎている感があるので、もっと言うべきことはたくさんあったのにな…って思う。そこがないと、ただの一目惚れからの恋愛が終わってしまっただけになる。
窪田くんのシンヤ役、よかったなー
僕の宝物にします
っていうその顔。すっごいワルそう。彼なりのアキに対する対抗心が、もっとクローズアップされてほしかった。そこだけが残念。2時間という枠の中で伝えきるには難しい作品だよね。原作の作者である青木さんの作品としても、22巻という超大作。それくらい、巻数かけて作られてるんだよ。途中までをうまくまとめるなんてできないよなー…。この物足りなさ、分かってくれる人もいるんじゃないだろうか。
スキャンダルって怖すぎる
スキャンダルってさ、怖いよね。それを利用してのし上がる人もいるが、たいていはのまれて沈んでいく。好きで付き合ってて悪いか?と思うが、デビューする時はクリーンでなくちゃ受け入れてもらえないらしい。誰と付き合ってようが、つくる作品が最高で喜ばれるものなんだとしたら、それでいいじゃんってならない。「イメージ」って大事なのはわかるけど、アキがいなかったらリコの最高の曲はできなかったし、リコがいなかったらアキは腐って死んでいくだけだった。2人がいたから、できたデビューでも、知らない人にはわからないもんね。テレビって、怖いわ。スキャンダルをネタにして、貶めようとする人だっているんだろう。自分が売れたいから、ライバルを蹴落としたいと思うんだろう。クリーンなだけじゃやってられない世界もあって、頭のいい人だけがつくれるものがある。真面目が損をするときがある…。難しい世界!
別にさ、不倫とかじゃないけど、デビューするときにすでにアキと関係があったってなったら、リコは体を使ってデビューに至ったのかって言われてしまうわけで。リコを守るために、みんな必死でがんばった結果なわけだ。苦しいが、今は離れていなければならない。でもいつか、2人が心通わせてくれるはず、と最後まで映画を見つめている自分がいた。
なんで結末あーなるの
結果、2人で「ちっぽけな恋のうた」を歌いながらエンドロール。おおーい…望みなし?と思いきや、キスしに戻ってくるアキがいて…終わり。は?終わり?どうすればいいのこの気持ち。冗談じゃないよ!
ファンの間では、あれはハッピーエンドだったんだという意見と、逆にリコの願望で2人は離れるしかなかったんだという意見が真っ二つ。ご想像にお任せされる身にもなってちょうだいよ!インセプションといい、夢オチ的な終わりは本当に具合が悪い。答えを教えてくれない映画って、しばらくその映画のこと考えちゃうから影響力がでかい。見事に策略にはまって、原作漫画も買いあさるという事象が発生してしまいそう。
自分としては、やはりあれはハッピーエンドで、アキが戻ってきてくれて、一緒にいてくれる道を選んだんだと思いたい。少しの間離れていたとしても、心が離れるわけじゃない。ずっと君を想い続けるよ。そうする自信があるんだ…的な。そうであってほしい。できることなら、漫画が最終回を迎えたことを記念して続編映画を出してほしいと思う。あのままさよならなんて、悲しすぎる。余韻がいいんだよ、とは言えない映画だと思ってる。サイドストーリーでアキと瞬、高樹さんの若かったころを描いたドラマを出すなら、続編も出して…。漫画が最終回を迎えてから、同じように騒いでいるファンも大勢いる。大原櫻子・佐藤健は売れっ子だし、また同じキャストでやっても全然人気は出ることだろう。
何はともあれ、曲と映画そのものの両方が人気になるのはなかなかない。いい作品だったなーと思う。
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