目的地は灯台下暗し
登場人物一人一人のエピソードが素敵
「盗られたものは奪り還す」
Get Backersとして依頼主からの要望を叶えていく美堂蛮と天野銀次。2人は特殊な能力を持ち、それを生かして立ちはだかる敵を倒していく。蛮と銀次のお互いの信頼は絶大なものがあり、それぞれに闇を持っていることを理解し、時にはケンカもしながら、支えあって生きている。そんな2人がかっこよく、連載の続いていた当初も毎回楽しく読んでいた。
少しとっつきにくそうな蛮は、悪そうな見た目・悪そうな言動とは裏腹に愛のあるやつ。相手を十分に吟味するが、善とわかればそいつのためにいくらでも頑張れる、カッコ良すぎるキャラである。相棒の銀次は、見た目からしてとても優しそう。困っている人をほっとけず、疑うことを知らない…と思いきや、一番怖いのは銀次なんだが。それもまたおもしろすぎた。
銀次は電流を、蛮は邪眼とスネークバイトという特殊能力を持ち、体一つで強大な敵を打ち破り、依頼をコンプリートさせていく。依頼されるものは危険な仕事ばかり。その分報酬も弾むが、すぐに使ってしまう2人なので仕事をしなければ飯代もままならない。そういうハングリーな状態での極限の闘いであっても、人への思いやりとか、仲間を守ろうとするその心意気がやはりカッコいい。憧れた男子も多いことだろう。
蛮のこと、銀次のこと、こいつらは何者なんだ?ということに関しては、本当に少しずつしか明らかにならない。すべてが明るみに出たのは最終局面に入ってからであり、持っている背景は待たせただけあってなかなかにディープだった。優しい銀次が雷帝として無限城のロウアータウンの王に君臨していたことよりも、やはり蛮の背景がすごい。邪眼、握力200kgという能力だけでなく、魔女の血を受け継ぐというドイツ人とのクウォーターで…おっと血筋的には明らかに悪の組織。最高の相棒である2人がぶつからざるを得なくなる状況は、苦しくもあるが、必然であったかのように語られていく。
無限城が戻ってくるっていう驚き
マクベスと闘うため、仲間たちと協力して無限城を攻略していく蛮と銀次。銀次が自分が雷帝であったという過去と決別し、これからを生きていくために、無限城での試練を乗り越えていく。これだけ引っ張るってことは、こりゃー銀次の暗い過去を浮き彫りにして物語は終わり…をむかえると思っていた。しかし、最終的にILという東京壊滅のための兵器をストップさせ、マクベスと和解するに至り、物語はここからさらに深くなっていく。やはり銀次だけでなく、蛮に迫らなければならないということだろう。
終盤にかけて、宿敵・ライバルとされる人物との決着がどうなるか、というところが見ものになる。花月は十兵衛と、シドにはマドカ、ポールにはデル、そして蛮と銀次…大切に思いながらも闘わなければならないのか?そこはもう男のよくわからない、優劣をつけたがる性というやつであろう。お互いいい奴なのに、どっちが悪とか正義とかもうわからないのに…悲しい闘いがとても多かった。結局、悪い奴っていないっていうね…こういうのが一番苦しいわけだ。雑魚い考え方をする奴はハイレベルな闘いには残ることはできず、強い意志と意志のぶつかりあいができる場には、心身の強者しか残っていない。お互いがそれなりの理論を持っており、甲乙つけがたい。そういうもんだよなーとは思いつつ、やっぱり相容れないことが悲しかった。
そして、親と子の決別と和解でもある。最終的に無限城のさらに上にそれはあり、戻ってくる演出はなかなかおもしろかった。失っていたいろいろなものを、少しずつ取り戻していくその姿が、まさに奪還屋であったと思う。
無限城のさらに上での闘いに満足
マクベス編で片が付いたようであった無限城。しかし、再び舞い戻ったのは…まさかネタが切れたから、というわけではないだろう。ロウアータウンのさらに上、この世界を壊そうかという存在があるらしい。まさか、最後に奪還するのは「刻(時間)」とは。いったいどうやるんだか…もともと特殊能力はあったわけだが、いよいよファンタジーな世界が加わってきた。ここまできて、ようやく蛮の昔のことを教えてくれたし、ポールが初代のGet Backersであり、その相棒が蛮の父親であるデル・カイザーで…というノリはわりにおいしかったと思っている。銀次のオリジナルが死んでて、今の世界はそれを生き返らせるためのバーチャル世界だった…というところまでくると、もはやわけが分からない状態へと陥ったが、銀次はとにかくあらゆる人間から守られようとしていたわけである。
生と死はコントロールされたくない・自分たちで好きなように生きたい、というのが人間だろうから、そりゃー反発されるだろう。銀次自身がそう思っているというのに、扉を開くためには最強にならなきゃないって…めんどくさ。でも、ここまできてようやく、それぞれの過去編がどうもしっくりこないなー…という違和感が解消されるわけだ。つくられたもう一つの世界の人間。だからこそ記憶があいまいだったんかなー…と納得。今ここに在ることは何よりも真実。それだけで確かにいいと思う。命が何よりも重いということを、忘れずに生きていきたいものだ。
蛮が最強だ
最後の最後まで、蛮が夢を見せてくれた。もう銀次にとってつらい状況になるほど、これは邪眼だ、そうに違いない…と言い聞かせ、やっぱり邪眼で。本当に良かった。蛮は銀次のお兄ちゃん的ポジション。そのまんまでいてくれて、手厳しいけどそれは優しさからくるものであり、オウガバトルをすっきりとパリーンとさせてくれてありがとう。いつも気になるのは、邪眼にかけられた人たちが邪眼にかけられていない人たちからみたときにどんなことになっているか…いや、これはいいか。
邪眼っていう名前がおどろおどろしいが、やってくれることは「夢」を観させるということであり、優しいよねって思う。闘いがとても悲しく痛々しかったからこそ、より沁みたね。救世主は銀次ではなくて、実際には悪魔の蛮。そもそも悪魔の定義ってなんだっけってくらい、素敵だった。人からどう思われようが、貫き通すものを持ってる主人公って…好きだ。銀次はずっと自分自身と闘っていたけれど、蛮が闘っていたものはもっと大きかったってことだ…いや、実際いたらこえーけどね。近寄りがたいけどね。
おふざけもお楽しみ
お姉さん方の過激シーンもたっぷり、刺激的なおふざけシーンが満載のGet Backers。少年誌ですからね。それだけでなく、バトルをとにかく楽しむということと、蛮と銀次の影がある魅力がいい。え?死んだでしょ?っていう致命傷をくらっても死なない人もいたけど、そいつもそいつなりにいい奴だった。たぶん。殺し合いをする相手同士であったとしても、お互いに譲れないものが確かなものだとしたら、絆も芽生えるのかもしれない。というか、そう信じていきたい。というのは中二病だろうか…(汗)。
無限城の造りはかなり複雑で、登場人物たちの関係性や、最終的な結論の受け取り方は少し難しい。2~3回くらい読むとわかってくると思う。奪還するモノに関しては、マニアックだが文化財みたいなものや歴史の遺産からとったものが多いので、説明が長い。好き嫌いはあるだろうが、個人的にはいろいろ妄想を膨らませながら読んで楽しめたと思う。
お互いが持つ、信念と信念のぶつかりあいが最初から最後までみっちりだが、個人的にはやはりホームレスのおっちゃんが忘れられない。
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