ルーブル美術館の絵画移送計画を阻止する、ナチスへのレジスタンス・アクションの傑作 「大列車作戦」 - 大列車作戦の感想

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ルーブル美術館の絵画移送計画を阻止する、ナチスへのレジスタンス・アクションの傑作 「大列車作戦」

4.04.0
映像
4.0
脚本
4.5
キャスト
4.5
音楽
4.0
演出
4.0

1944年8月------パリ解放がまじかに迫る中、パリ・ルーブル美術館に所蔵されている「フランスの栄光」とも言うべき、ルノワールやドガなどの絵画や美術品をナチス・ドイツの将校ヴァルトハイム(ポール・スコフィールド)が、自国に持ち帰ろうと移送する計画を実行しようとする。

レジスタンスより、この計画の妨害阻止計画を依頼された仏鉄道のラビッシュ(バート・ランカスター)は、各地のレジスタンスの仲間の協力のもと、命懸けでドイツ軍と戦っていくが------。

第二次世界大戦中の実話を題材に、壮大なスケールで「影なき狙撃者」「ブラック・サンデー」のジョン・フランケンハイマー監督が描ききった、実に痛快で迫力に満ちた、レジスタンス・アクションの傑作だと思う。

ドイツ軍の美術品輸送を阻止せんとする「終身犯」「山猫」の名優バート・ランカスター扮する仏鉄道の修理士ラビッシュと、軍資金的な価値よりも絵画の芸術性に魅せられた「わが命つきるとも」の、これまた名優のポール・スコフィールド扮するドイツ軍将校のヴァルトハイムとの虚々実々の頭脳戦が、名優二人の迫真の演技で、スリリングに展開されていきます。

ここで瞠目させられるのは、バート・ランカスターのアクションです。連合国軍の爆撃に間に合うよう、パリ市街の操車場まで列車を遅延させる作戦で、空襲警報が鳴り響く中、頑固者の機関士のブルは、列車のスピードを落とそうとはしません。

高い鉄塔のような指令室にいるラビッシュは、それを察知するや両手だけで縄梯子を降りて行き、走って来た列車に飛び乗ります。更に、ブルに蹴飛ばされて線路ぎわに落下して行くのです。蹴飛ばされるシーンはカットが変わるので、本人だとは断言できませんが、それにしても、バート・ランカスターという俳優の身軽さ、体力、運動神経の凄さは見上げたものだと思います。

機関車よりも彼の力のこもった大柄な体躯のほうが、勝って見えてくることの驚き。機銃掃射を受けてトンネルにもぐり込むシーンや、破壊工作のために走り回るシーン、列車の脱線にあくなき執念を燃やす場面など、バート・ランカスターなしには考えられない迫力と興奮が漲っているのです。

もちろん、それはジョン・フランケンハイマー監督の骨太で豪快で、ディテールをよく描き込み、尚かつ、適度にヒロイックにしない作家性が、このフィクションをこの上もなくリアルなものにしているのは言うまでもありません。

絵画を積んだ列車が、各地のレジスタンスの仲間の協力で、フランス国内を一回りして戻って来るユーモアをはさみながら、あくまでも"戦争の愚かさ"を我々観ている者に、突き付けてくるのです。

そして、この映画のラスト------。敗走するドイツ軍のトラックに、まだ絵画を移送しようとするヴァルトハイムの愚かしさ、人質をいとも簡単に皆殺しにしてしまう冷酷さ------。

美を愛する心に共存するエゴイスティックな残酷さを、あますところなく描き尽くして、絵画とそれを守るために流された夥しい人命を対比させて、実に見事です。

そして、最後にこのドイツ将校ヴァルトハイムを殺したラビッシュが、肩を落として去って行く姿には、爽快なカタルシスとは対極にある、重く厳しい"反戦への訴え"が、色濃く滲んでいるのです。

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