本能のままに生きすぎだと思う
キマッてるタイトル
「5時から9時まで」っていうタイトルは、なかなかない…と思っていたけど、実は大昔の少女漫画にはあったみたいだった…。古い方は、どちらかというと、朝から晩まで、夜から朝まで、みたいな意味合いが強い感じでしたね。こちらの「5時から9時まで」では、英会話教室の女教師の勤務時間を示しており、割と清潔な…雰囲気ではないんです。がっつり色恋が繰り広げられているんです。もう完全に奪い合いが起きています。はっきり言って狂っている気がしてならない…特に順子。大人の女がみんなこんなにモテて、しかも気の多いキャリアウーマンばかりだと思われては困るんです。
国際的な仕事がしたい主人公の順子。なかなかにベビーフェイスなお坊さんの星川高嶺に惚れられて無理矢理迫られる毎日。相手からすれば、もう肉体関係を持った時点でアウトなの!もう順子さんしか見えてないんです。嫁になんかなりたくないっていうなら、その成り行きの軽率な行動をやめたほうがいいよ…と言いたくなる。仕事がしたいの!じゃー仕事して!!自分の夢のために、相手を傷つけること承知で騙してしまおうって考えるような、心の狭き女です。だけど、それがいけないことだっていうことはちゃんと感じていて。そして少しずつ、星川のまっすぐすぎる気持ちに自分の信念が揺らいできているのもまた事実…絶対に愛してくれる人と一緒にいることと、自分が願う未来に向かって走ること。どちらが本当に欲しいのか、わからなくなってくる…結婚を取るか仕事をとるか。逆に男の立場だったら、わりと愛のほうに傾きやすいと思うんですよ。これが女だから面倒なんです。女が高みを目指すっていうのは、まだまだいろいろなハンデを覆して獲得しなければならない世界ですからね。
「5時から9時まで」時間は短かろうが、きちんとした仕事。大人は限られた時間の中であまりにも濃く、深く時間を過ごしている。すごく短いようだけれど、その時間を毎日積み重ねて、自分のキャリアにしようとしている人もいれば、閉じ込めてでも愛の時間にしようとする人、振り向いてほしくて必死に苦しんでいる人、自分のことしか見えていない人…あらゆる立場の人間、あらゆる考え方の人間がいるということがよくわかる。そして大げさっぽくても、実際こういう人いるんですよね。
それぞれの物語が絶妙に絡み合う
登場人物はちょっと多すぎ感があります…ただ、やっぱりどのキャラクターも読み込んでいくと深みがあります。どの立場の人間であっても、応援したくなっちゃう。作者である相原さんの作品では、こういうせつない展開が多いのでね…みんな応援したくなるんですよ。せつない状況の中で、それぞれがどんな未来を手にするのか。そういうのが楽しいですよね。最初から盤石に築かれた状況はあり得ないってことです。
順子さんは個人的にはあまり好きではありません。あまりに無防備、イラっとします。そのため、若干毛利(ゼクシィ)の肩を持とうかと思う…まぁ順子さんの気持ちもわからなくないんです。自分が進もうとする道の上で、何が必要で何が不必要かなんて、その場ではなかなかわからないものだし、欲望はあって当たり前のもの。孤独感を感じている彼女にとっては、甘い言葉は嬉しくてしょうがないものだしね…ただね、やっぱり三嶋への扱い、悲しいです。高校生のユキだって、悲しい。こう見ていると、女って有利だなー…。
三嶋が髪をいつもおろしてくれてたら嬉しい。そう思いませんでしょうか?そこにあの優しさが加わって、パーフェクト。彼が最も損な役回りです。一番優しいがゆえに、選ばれない。何かをつかみたいと思った時には、譲らない気持ちっていうのも大事なのかもしれませんね。人間的な能力の高さよりも、強さやたくましさ、自分にだけ見せるもろさが欲しいって、女は思うのかもしれない。星川なんて、独占欲の塊で、子どもの駄々をこねるような姿。軟禁するほど愛してるって、もう順子さんが許さなければ犯罪よ。女ってだから…こう…バカよね。
モモエ先生ラブ
百絵先生を何とか口説き落としたいアーサー先生と、アーサー先生の行動の意味が読み取れない処女で初心すぎる百絵先生の組み合わせ。最高です。唯一単独なので、一番落ち着いた気持ちで様子を見守ることができています。星川、三嶋、ユキと3人攻めをくらっている順子さんや、順子さんのものを奪いながらも年下の蜂屋に堕ちていく毛利、蜂屋に憧れていた順子先生の妹・寧々はユキに恋して…というあまりにごちゃごちゃな人間模様の中で、百絵先生だけは本当にラブ。腐女子だからってなんじゃい。見た目最高にかわいいし、鈍感すぎるその姿もまた王道少女漫画!大人なのに子どもなほっこりラブがここに…!癒しだわ。百絵先生ラブ。百戦錬磨のアーサー先生も、百絵先生へのアタックは暖簾に腕押し状態。本当にかわいい。「君にハマるつもりじゃなかったのに…」なーんて言うアーサー先生。百絵先生は見た目がとってもキレイなので、ぱっと見レベル高めな女性なんですよね~…なんかいいなそういうの。そんな勘違いされてみたいわ。大人になったってね、BLだってなんだって、恋の物語は好きなんですよ。それこそおばあちゃん・おじいちゃんになろうが、恋はいつでも人を元気にするよね~…!イケメンすぎるアーサー先生が、どうやって百絵先生をオトしにかかり、そして逆にオトされてしまうのか。よくある王道の少女漫画の展開に大人であることが加わると、なんかよりエロさが増すんですね。うまくいきそうでいかないそのもどかしさは、物語が進んでもなお続いているので多少やきもき・イライラもたまってきましたが、なんとなく大丈夫だろうなって気はしているので、ゆっくりと今後を見守っていきたいなと思います。
ドラマでは表現できないでしょう
やはりこの「5時から9時まで」は漫画で楽しむべきですね。実写になると全然世界が違って見えちゃう…ドロドロ部分がより気持ち悪く見えてしまうし、年齢の設定変更とかもあってちょっと忠実じゃないのは困ります。抜かしてほしくないエピソードもあったのでね。キャスティングが相当大事だし、難しいじゃないですか。アーサー先生はもこみちじゃない!!と声を大にして言いたい。漫画の中だからこそ許されるシーンが多いんです…。星川さんの、あの順子さんが欲しくてほしくてたまらないという表情とか行動とかも…漫画だからぐっとくるわけですよ。順子さんのキャリアウーマンぶり、百絵先生のあのピュア感…俳優さんって難しいね。なんか、自然な演技にしろって言ったって難しい。
どこまで続くんだろうこの話
作者の相原さんって、余裕で他の物語置いといて次を作り始めたりするじゃないですか。確かに出てくる漫画はおもしろいので、あまり文句も言えないのですが、長丁場になるとなかなか待ち遠しいという気持ちを通り越して、しばらく忘れ去ります。作戦なのかもしれませんけどね。この前だって、最新刊が出たってしばらく気づいてなくて、なんか損した気分でした。ネタが降りてくるまで、めっちゃ時間がかかる人ってことなんですかね。
それぞれの恋がどのような決着をむかえるのか、まだわからないところですが、だいたい決まってきてますよね。星川さんと順子、毛利と蜂屋、順子の妹とユキ、百絵先生とアーサー先生…三嶋だけが残る…三嶋だけが残る…!ここだけ、どうにかしてください。きっと君にも優しい女神はいるけどね。ただ、優しい皮をかぶった女に騙されているパターンが多そうな彼には、心も何もかもが天使のような人が舞い降りてくれることを切に願います。
順子の夢は果たしてこれから再び熱を取り戻すことがあるんでしょうか。もはや愛に生きる女となった気がしていますけれど…結局は、愛も大事だし仕事も大事だと思うんですよ。両方を尊重して生きていける道があるのかどうか、これから考えていけばいいと思うんです。譲れないもの、妥協してもいいものは、きちんと言葉にしないと伝わりません。いい終わりをむかえられるといいなー…怖いのは、途中で放り投げられて、物語がフェードアウェイすること…なんとなく、その可能性も否めない気がしています。
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