箏曲部で繰り広げられる青春ストーリー
"不良少年チカ"と"お琴"のギャップが面白い
主人公の不良少年チカが、見た目とは裏腹な繊細で美しい琴の音色を奏でるというギャップが面白い。チカが琴を弾き、その音色の美しさに聴く人が驚いている様子を見ると、読んでいる読者としてとても誇らしい気持ちになる。あともう一つ、強面の不良少年チカの大好物が"苺"というところにも可愛らしいギャップを感じる。ストーリーの所々に感じる"ギャップ"から、作者をギャップ使いの天才と讃えたい。また、不良だったチカが琴を通じて努力することを覚え、仲間や顧問たちと心を通わせていく姿には目頭が熱くなる。この作品には、自分は1人ではなく多くの人たちの支えがあって今を生きているというメッセージが隠されているのではないかと感じた。
音が無くても躍動感あふれる感動の琴演奏
とにかく琴の演奏シーンの躍動感がすごい。私は、だいたいの演奏シーンで泣いてしまう。それぐらい音が無くても感動し、楽しむことができる。琴を演奏したことがない人、聴いたことがない人にも曲調や演奏時の緊張感などが伝わるコマ割りやページ構成がされているため読みながらハラハラドキドキが止まらない。実際に琴の種類や弾き方、楽譜の味方などが細かく描かれているため、読み進めていくうちに自然と簡単な琴の知識が付き、箏曲部の部員の1人になって演奏している気分にもなれる。琴の練習シーンでは、曲の躍動感は感じさせずに、部員の琴や部に対する葛藤を描いている部分が多く見受けられる。そういう葛藤に苛まれながらも部員全員で助け合いながら一曲一曲を完成させていく姿を見てきたからこそ、最後の演奏シーンで感情移入して(私の場合は自分の子供の成長を見ているかのように)見ることが出来るのではないかと感じた。
少年漫画には珍しい高校生の純粋な恋愛模様
「この音とまれ」では純粋な高校生の恋愛も楽しむことができるところが良い。私は、少年漫画には珍しい女の子目線で恋愛模様が描かれているなと感じた。男子のたわいもない言葉に一喜一憂し顔を赤らめる女子達の姿や、そんな女子達の気持ちには一切気が付かない男子達の姿が面白く微笑ましい。話が進むにつれてなんとなくではあるが、男子達も女子達の気持ちに気付き始める様子が少しずつに描かれていて今後の展開がどうなるのか待ち遠しい。描写的には少女漫画にのようなピュアで焦れったい様子で所々ストーリーに盛り込まれていて男女問わず楽しめる要素が沢山あると感じた。
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