それぞれが持つ夢への道を爽やかに
家庭事情に難ありメンツのルームシェア
朝陽、善、しま奈、そして大家の虎。まさかの女子が1人だけ入った逆ハーレム状態のルームシェア。これはこれでちょっと怖いのだけれど、最初の登場の時点で朝陽のジェントルマン具合と、虎の誠実な親への対応、そして善のバカっぽさが十分に表現されたおかげで、妖しい雰囲気は作られませんでした。よかった…絵がとってもかわいくて、新装版なんてもうイケメン祭り。しま奈も相当かわいいし、こりゃー愛されるわけですよね、この漫画。
しま奈は母親と死別して、父親が再婚。弟もできて、それを喜んでいいのかどうかがわからなくて悩んでいる女子高生です。「行き場がない」と感じるのよりも、「喜んでしまうことが母親に対して申し訳ない」という気持ちがあるというしま奈。なんていい子。お父さんが嬉しそうで、新しいお母さんも歩み寄ってくれていることに気づきつつも、自分の中で納得できないことが悶々と渦巻いていたんですよね。それが、偶然出会った虎のおかげで、家族とも話すことができ、ルームシェアという新しいことへの挑戦も始まった。明るくあたたかな始まりだったなーと思います。
そこからは、善、朝陽、そして虎のそれぞれの「夢」にまつわるエピソードがつづられていきます。それぞれが複雑な気持ちで抱えている問題、それにより諦めようとしている夢を持って生きている。しま奈は、そんなみんなを全力で応援する立場として物語を動かしていく役割。自分に夢があるっていうより、誰かの夢をかなえてあげたいって思ってそれを素直に行動に移せるのがすごいですよね。最終的に見つける「ウエディングプランナー」という仕事もよく似合ってる!「夢みる人」と「夢を叶えてあげようとする人」の対比、そして子どもと大人の境界線を曖昧にしながら、恋と夢は何歳になっても大切なものだと伝えてくれています。
善が一生懸命すぎてかわいすぎる
虎としま奈は、登場の時点であまりに息がぴったりだったので、こりゃーどうせ虎とくっつくんだろうって思いました。疑いなく。そして善は当て馬だろうこともわかってて…とにかく善がかわいすぎて、悶絶でした…「絶対好きにならないはずだった。嫌いになるはずだったんだ」って言いながら、泣きながら告白する善がもうね…かわいすぎる…!パンダをこよなく愛しすぎているのが若干キモいと思っていたのに、一生懸命な善を嫌いにはなれなかったね。涙ボロボロ流してフラれるのわかってて告白した善が愛しすぎる!いつだってしま奈と同じ高さにいてくれて、話を聞いてくれて、支えてくれている善。虎のことしか見てないってわかってても、あきらめないでそばにい続けようとするその姿に勇気づけられます。なんだかんだ、しま奈のファーストキスが善でよかったと思ったよ!!
しま奈がとにかく人の事に一生懸命になってくれる人であり、善の諦めようとしていた夢を諦めさせない!と動いてくれたことが、何より大好きになった理由ですよね。善の兄・拳にとっても、しま奈は夢を叶えさせてくれた大切な人になりましたし、もうね、みんなにとっての天使です。はい。たくさんの人を虜にするので、小悪魔ちゃんとも言えそうですけど、ドロッとしたものがなく、正直で汚れのない言葉と行動がありますから、なんか許せちゃう主人公ですよね。
最終的に、善にも善しか見てない女の子・サエコが現れます。そして、お互いに好きになるんですよね。「失恋の傷は新しい恋で癒せ」ってやつで、善もすっかり優しいイケメンになったなー。
朝陽の大人っぷりが半端ない
しま奈の初恋の相手である朝陽。もう毒がどこにもない。見た目も中身も最高に素敵。そしてしま奈の良き理解者であり3人目のママとも言える人でした。しま奈のおかげで自分の恋に決着をつけることができたから…俺はしま奈の味方だ。っかぁ~!イケメン!誰より大人!!虎と無理にくっつけようとするのでなく、しま奈の気持ちを大切にしつつ、虎をも成長させた驚異的人物。末恐ろしい高校生です。朝陽以外、虎も含めてみーんな幼稚だからね。しま奈の駄々っ子も、虎の意地っ張りと鈍感さも、善のバカっぽさも。全部をまとめて管理してくれる朝陽が素敵だった。新婚初夜に何気なく押しかけるSっぽさもまた、普段の甘すぎる優しさとギャップになってね…悩殺ものです。
虎と半分血のつながった兄弟であると知りながら、そして自分の大好きな人と離れなければならなくなった原因が虎の父(検察官)であることも知っていて、それでも虎を一人の人として見てくれる。清すぎる。裁判の内容がもう嫌すぎて、恨みの果てにドロドロが起こり新たな裁判沙汰でも起こるんだろうかと心配しましたが、朝陽が本当に素敵な人だったからこそ、みんなが笑っていられる結果になったと思いますね。もちろん、いつかは弁護士になって引きずり降ろしてやるってくらいには闘志を燃やしている朝陽ですが。いつかきっと、やり遂げてくれると思います。それが朝陽にとっての「夢」ですから。
恋と夢を絶妙に絡ませて
高校生たちは、いろいろな経験をしながら、人と関わることでどんどん成長し、新しいものを吸収して、自分の力にしていきます。それには確かに虎の力もあってこそ。夢も恋も諦めた虎だからこそ、目の前でもがく若者たちを一生懸命応援するんですよね。そしてそれを通して、虎も変わっていく。何歳であろうと、抱えているものがある。そしてそれを打ち砕くものは、出会う人・モノすべてなんだなーと感じずにはいられません。
「夢みる太陽」は虎の本名が太陽であることからも、虎のことをさしていたでしょうね。検察官じゃなくて、本当は学校の先生になりたかった。一度は捨てた夢。だけどその夢を叶えさせてくれたのは間違いなくしま奈であり、正直に思いのたけをぶつけてきてくれた人も、生きてきた中で虎にとってはしま奈ただ一人だったわけです。もう恋するしかないでしょう。ずっとそばに置いとくしかないでしょう!それなのに、全然気づかない虎にはもうやきもき。元カノへの見せつけから気持ちもない(自覚していない)うちにしま奈と付き合いだしたときは、もうどうしようもない奴だと思った。そして両想いになってからの気持ちのオープン具合も若干引いた…笑。当初の大人っぷりはどこへ行った…?「大人の責任」とか言ってたやつとは思えないよね。特に10巻の冒頭…笑。まぁそんな奴でも、しま奈には必要で、虎にとってもしま奈は必要で。相思相愛ですから文句は言えません。「恋」と「夢」は、何歳になっても輝いているもの。いつまでも忘れずにいたいね。
遠距離恋愛を乗り越えての結婚
なんやかんや、虎の父親の妨害もあって遠距離恋愛になるしかなかった虎としま奈。それでも、お互いがやるべきことをやり、2年間の熟成期間を経て結婚することができました。もちろん、ルームシェアしてきた朝陽や善とのいい関係は変わりなく、まさしくハッピーエンド。いい結末を迎えることができて、読んでいるこっちが幸せな気持ちになりましたね。
夢を諦めた大人が、もう一度夢に向かって歩き始める。夢を知らなかった子どもが、自分の夢を見つける。恋を知らなかった人間が、互いに影響しあい、恋を知る。ほほえましく、あったかいお話でした。この物語の中では、ヒーローは間違いなくしま奈であったと言えるでしょう。しま奈みたいに、誰かを幸せにするような、太陽のようにあたたかい人になりたいものです。
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