勇者ヨシヒコの面白さ
とにかく面白い!
この作品を見て、笑わなかった人はいないだろう。なんといっても、個性的なキャラクターたち。
私が個人的に好きなのは、メレブである。独特の口調といい、魔法のポンコツさといい、憎たらしさを兼ね備えた、個性の塊のようなキャラクターとなっている。
そのほかのキャラクターたちも、個性豊かで、それぞれの個性の掛け合いが、面白さを生み出している。
メインキャラクターの4人以外にも、個性が豊かで、少し変わったキャラクターが多い。
仏。
仏は、このドラマに大きな笑いを生み出す一因である。佐藤二朗さん演じる仏により、ストーリーが少しずつ進んだり進まなかったり…と、ストーリーに重要なキャラクターでもある。出てくるたびに、ヨシヒコたちとの面白い掛け合いが起きる。佐藤二朗の元々のキャラクターが生かされているようにも思える。
また、ヨシヒコが、仏を目視するには、日食グラスを使わなければ見えない点は、シュールである。
これは、ドラマなのか。
私なら、ドラマといえば、恋愛ものやサスペンス、学園ものなど、ストーリー性のつよいものをイメージする。しかし、この作品はどうだろうか。例え、前話を見ていなくとも、1話ごとに楽しめる。ストーリーはあるものの、ストーリー性を重視しているようには思えない。むしろ、ネタ要素を強め、視聴者を笑わせようとしているように思えなくもない。爆笑するというよりは、ふふっと笑ってしまうというほうが近いように思える。
手作り感
見ていると気になるのが、スライムなどの魔物たちが、いかにも段ボールで作られたものであったり、雑な人形である点である。完成度は、そのぶん、低く感じてしまう人もいるのかもしれない。私は、この手作り感こそが、このドラマのシュールさを引き出しているひとつの要素であるように感じる。裏世界という、邪悪さが強い場面であっても、手作り感は消えていない。裏世界で4人がスライムに変身した様子を、かわいらしく思った人は、私だけではないはずである。4人の個性がスライムにあらわれている。
第二話
私が特に笑ったのは、第二話である。悪霊の鍵を手に入れるため、姫を救おうとする話である。姫を救うことができたとき、ヨシヒコは辛辣な言葉を姫にぶつける。女性である姫に、手加減なく悪意なく、「ブス」と言っている場面は印象的である。ヨシヒコの悪意の無さが、辛辣な言葉を笑いのタネとしている。また、ヨシヒコの素直さが仇となっていることを表している場面でもある。普通は、殿やメレブのように、容姿が劣っている相手に対して、曖昧な表現や態度をして、相手に容姿のことを伝えようとはしない。この2人のリアクションによって、対照的な反応のヨシヒコが強調されているように思える。
第四話
この話で、印象的な場面は、幽霊の出る宿での4人の滞在である。幽霊が出る ということは、少なからず、怖い状況でなければならない。そのような状況でも、笑いを生み出してしまうのが、このドラマである。
ヨシヒコのうしろに子どもの青白い幽霊が現れたとき、私は、正直怖く、驚きもあった。その後、ヨシヒコが振り返ってうしろの幽霊を確認したとき、ヨシヒコには確実に幽霊が見えてしまっているはずである。素早く振り返るヨシヒコ。うしろに隠れきれない子どもの幽霊。幽霊が見えてしまっているのに、いないと主張するヨシヒコ。この、単純な流れであるがゆえ、わかりやすい面白さを生み出している。
また、ドラマのストーリー上、ヨシヒコは見えてしまった幽霊に対して恐怖で怯えるはずだが、ヨシヒコを演じる山田孝之さんは、子どもの幽霊が視界に入ってしまい、笑いをこらえている様子がうかがえる。笑いをこらえながら、幽霊はいないと強がる様子が、さらなる面白さを引き出している。
ちょっとした楽しみ
毎回、ストーリーの前に、メインキャラクター4人とゲストとのコントのような掛け合いがある。
第四話では、4人は山賊に絡まれてしまう。ただの山賊が襲ってくるのではなく、山賊の仮免許の試験中の山賊が襲ってくるという、予想外すぎる設定である。試験に合格しようと強がる山賊と、細かく注意していく教官を見ているだけでも面白い。
この、ちょっとした笑いの場面を入れることによって、中心のストーリーが始まるワクワク感を高めているように感じる。
結局、このドラマは…。
このドラマは、最初に述べたように、とても面白いドラマである。作品のクオリティ自体は高くはないが、その低いクオリティさえも笑いにしてしまうような面白さがある。欠点のように思えて、実は作品のイメージを作り出している点が多い。ヨシヒコたちの老いた姿を演じる老人たちの言葉の棒読み感、仏のグダグダ感などである。上記した手作り感もそのひとつである。
このドラマは、他のドラマとは趣向が違いすぎる。斬新さと小さな笑いの積み重ねが、この作品のファンを増やしているのだと思う。
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