仏のうっかりが初回から炸裂
予算の少ない冒険活劇、再び…
「勇者ヨシヒコと悪霊の鍵」を視聴した感想です。
この作品は、2011年に第一シリーズが放送され、好評を博した「勇者ヨシヒコ」シリーズの第二作目です。
初めて勇者ヨシヒコを観たときの衝撃は忘れることができません。
深夜のドラマ枠で、まずドラゴンクエスト風の冒険活劇をやろうという企画を、よく思いついたなと思います。
ありそうで無かった題材ですよね。ドラマが始まった時、「新しい物が始まった」ワクワク感がすごくありました。
勇者ヨシヒコは真面目な物語ではなく、ドラゴンクエスト風を装ったコメディです。
「壺や樽は壊してもいいルール」に乗っ取り、ヨシヒコが真面目に破壊していったり、井戸の中に親切な魔物がいたりと、ドラゴンクエスト本家のオマージュ的な笑いの数々が登場します。
その笑いの持っていき方も引き出しが多く、「よく考えているな」と、非常に気合いが入っていると思いました。
また、勇者ヨシヒコを始めとした、冒険の仲間たちも面白いです。
まず勇者の名前が「ヨシヒコ」という所からして、情けなくて笑ってしまいます。
伝説の剣をあっさり引き抜いて、あっさり勇者になってしまったヨシヒコ…。
ヨシヒコはとても真面目で曲がった事が嫌いな熱血漢ですが、みんなとちょっと違うテンションの子です。
道中で出会った村娘のムラサキは、常にヨシヒコの寝首をかこうと狙ってきますし、魔法使いのメレブは変な魔法しか覚えません。
剣士のダンジョーはオッサン臭すぎます。
そして、いつもふざけている仏…。
このメインのキャストのやり取りだけでも、かなり面白いと思います。
また、予算の少なさを開き直っていくスタイルも笑いを誘います。
宣伝ポスターの迫力が嘘のような、衝撃的なチープさの数々は、とても地上波で放映されているドラマとは思えません。
段ボールで作られたと思われる魔物、襲いかかるコアラの人形、どう見ても映画村で撮っているとしか思えないロケーション…。
オープニングに「予算の少ない冒険活劇」という一言が登場するほどに、作中の至るところに予算の無さが表れています。
スケールアップしないという選択
こうした数々のコメディ要素を擁し、前作の「勇者ヨシヒコと魔王の城」は、第一話から最終話まで、ついに一度も真面目な展開になることはなく、怒濤のくだらなさで幕を閉じました。
そして今作の「勇者ヨシヒコと悪霊の鍵」も、スケールアップすることなく、やはり第一話から最終回まで、いつもの笑いのペースを貫き通しました。
この「第二シリーズに入ってもスケールアップしない」というのが大事ですよね。
よく、こうした作品の続編が出ると、新キャラクターが登場したり、欲張ってシリアスな話を入れ込んできたりという、製作陣の迷いが見られると思います。
そして、結果的に前作のファンの期待を裏切ってしまいがちです。
今回勇者ヨシヒコでは、全くそのような迷走は見られなかったので、良かったと思います。
やっぱり第一シリーズと同じような完成度の物を期待しているので、それを裏切られなかったのは良かったと思います。
多分第一シリーズよりスケールアップしているのは、メレブのカツラがちょっといいカツラになった事くらいだと思います。
メレブさん、私にもその呪文をかけてください!!
やっぱり第一シリーズでもそうでしたが、キャストの面々が本当に演技力が高いと思います。
特に主演の山田孝之さんはさすがの一言です。
不良を数々やってきた人とは思えないほど、ヨシヒコの生真面目さが、歩き方や姿勢にまで表れています。また、発声もちょっと舞台っぽいというか、いい声を意識しているのだと思います。
そしてその真面目な顔で、堂々とバカなセリフを吐くので笑ってしまいます。
また、メレブ役のムロツヨシさんも面白いです。
結構ムロさんのアドリブ的な演技が多いのかなと思っていて、何ならもうメレブ=ムロさんみたいな感じにも捉えていたのですが、やっぱり他の作品と比べてみると、メレブにも役作りはあるんだなと思います。
ちょっと高貴で、ゆっくりとした喋り方にしているんですよね。
やっぱり最初は、村でお偉方をやっていたからなんでしょうか。
表情もトロンとしていて、姿勢も杖にもたれがちと、メレブのやる気のない感じが伝わってきます。
色々工夫して演じているんだなと思いました。
木南晴夏さんは、シリーズを通して変顔がすごく多いのですが、今回も初回から、白目やしゃくれ顔をやっていました。
しゃくれながら話すのがすごく上手でした。
元々がきれいな女優さんなのですが、潔さを感じました。
木南さんはおとなしい役も他のドラマでやっているのですが、跳ねっ返りなムラサキを見ていると、とても同じ人物には見えません。
宅間伸さんは、今回は女装もあったりと、さらにコメディ要素が増したと思います。
ダンジョーは多分、トリオ芸に例えると、ヨシヒコが大ボケでダンジョーが中ボケなんですよね。
その難しい立ち位置を、面白く演じていたと思います。
しかし、ふとした立ち居振舞いやセリフ回しが格好良いとも思いました。
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