Angel Beats!の設定に矛盾はない!
はじめに
今回私が考察するのは、2010年放送の「Angel Beats!」というアニメだ。まずはそのあらすじを読んでいただき、そんな話だったなあと思い出していただけると幸いである。
Angel Beats!ってこんな話。
舞台は死後の世界。生前の悔いを持つ魂が来世へと旅立つために存在する学園である。大半の生徒が魂を持たないレプリカ「NPC」なのだが、生前に悔いを残した「人間」たちは「死んだ世界戦線」を結成し、人間の魂をこの世界から消してしまう力を持つ「天使」と終わらない戦争を繰り広げていた。
戦いの最中、記憶喪失の状態で死後の学園にやってきた主人公・音無は死後の世界に戸惑いながらも戦線に加入する一方、天使とも友好的な関係を築く。
その正体は一人の立華奏というとても不器用な女子生徒で、音無は奏と協力し戦線メンバーを来世へ旅立たせようと奔走する。
永遠の世界に芽生えた戦線リーダー・ゆりからメンバーへの愛情、音無から奏への特別な感情は世界のリセットのスイッチとなり、死後の世界は崩壊しかけるが、戦線メンバーの活躍により死後の世界は救われ、彼らは最後の戦いの中で永遠の世界に留まることより来世へと旅立つ決意をする。奏を含めた戦線メンバーは成仏するが、奏への愛を忘れられない音無だけが世界に残ってしまうという、少し切ないお話だ。
Angel Beats!は矛盾している?
このアニメ、最終回ではるか前から世界にいた奏の心臓は、劇中で一番の新参者である音無がドナー登録の上、提供したものだという描写がある。
数十年前から戦線と敵対していた天使、すなわち奏の心臓が音無のものであるという描写。これがまあ設定の破綻やこじつけ、あるいは後付けじゃないのかと言われることがままあるので、今回は奏、音無がはたして本当に同世代として生きていて矛盾がないか考察しようと思う。
学園にやってくる生徒たち。その時系列は?
私が触れたいのは、この学園にやってくる生徒たちの時系列についてだ。しっかりと見てみれば、この時系列がかなり前後しているのだ。
戦線メンバーの中に一人、くのいち風の女子生徒がいる。名を椎名というのだが、Episode1のオーディオコメンタリーにおける大山の発言によれば、椎名はギルドができる前の地下深くのダンジョンで生活していたという。それにしても現役のくのいちが生きていた時代を考えると、いくら死んでも死ねない世界だからとはいえ何百年もの間を地下ダンジョンで生きていたとは考えにくい。
他にも例えばユイは、生前の病床でプロ野球中継を毎日見ていたと言い、憧れのサッカー選手はマラドーナだと言っているのに多少の時代錯誤を覚える。昨今ではプロ野球中継など減る一方だし、いくらビデオで見たとはいえ今時の中学生の憧れのサッカー選手はロナウドでありメッシではないだろうか。
さらに岩沢の生前には年頃の中学生の描写があるにもかかわらず、携帯電話の類を使用していた描写が一切ない点も気がかりだ。急に倒れたのだから、そういう描写がないのは不自然に思える。
日向も甲子園を目指していたという話だが、その試合中に水を飲むことが許されない世代で、やはりスポーツ科学の発展からみれば今より少し古い世代だと思われるし、直井は兄弟で柿の木に登って実を取っていた時代の出だ。やはりこの二人も最近の高校生だった、とは言えないのではないだろうか。
一方で、音無の生前の描写には携帯電話が登場し、センター試験を受けに行く電車の描写から察するに最近の高校生であっただろう。音無から心臓を受け取った奏も彼と同世代であるだろうし、ゆりも幼少期から現代風の一軒家に住んでいた。
マラドーナを崇拝するユイが新参者扱いされ、携帯を使っていた世代と思われる奏は古くから戦線と敵対している。いつ死んだのか見当もつかない椎名がいれば、戦線のリーダーは現代のわれわれが見ても比較的おしゃれな一軒家に住んでいたゆりなのだ。
ようはこの世界にやってきている生徒たちは、実は生きていた時代が全くもってバラバラなのではないか、という事実が推察できるのである。落命した順番もバラバラなら、死後の学園にやってくる順番もバラバラなのだ。
賛否両論の最終回。そもそもの固定観念が矛盾を感じさせたのでは?
最終回に話を戻す。唐突に出てきた奏の心臓=音無の心臓という設定については、学園にやってくる生徒たちの時系列がそもそもランダムであるという今回の考察から決してありえない話ではないし、この二人が同じ時代を生きていたとしても全く矛盾はないように思える。
事故に遭い心臓をドナー提供した、すなわち先に落命した音無が、その心臓を受け取り、音無よりは生きながらえたであろう奏よりも、はるか後に学園にやってきたというのは時系列がバラバラであれば全然あり得る話で、戦線メンバーと「天使」との戦いは何十年にも及ぶと何度も言及されているが、現代風の一軒家に住んでいたゆりは試合中に水を飲んではいけない世代の日向より先に死後の学園にやってきているのだ。
こうなると、そもそも初めから落命した順にこの世界に降臨する、という固定観念が矛盾に感じさせるだけで、決して設定の破綻だとは簡単に言えないのではないだろうか。
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