ハッピーエンドはないってわかってた - 誰かがカッコゥと啼くの感想

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誰かがカッコゥと啼く

3.503.50
画力
3.25
ストーリー
3.00
キャラクター
3.25
設定
3.50
演出
4.00
感想数
2
読んだ人
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ハッピーエンドはないってわかってた

3.53.5
画力
3.5
ストーリー
3.0
キャラクター
3.5
設定
3.5
演出
4.0

目次

いきなり始まるダークな世界

冒頭から登場する火男。これは妖怪の話だろうか?妖怪を退治する、勇敢な小学生たちと、子どもを怖いと思いながら教師になってしまった作間先生の改心への道でも語るのか?そんな予想とは裏腹に、物語はどんどん作間先生を苦しめていきます…いきなり人体改造されますからね。いったいどうなっているんだこの世界…

作間先生は火男とかコトリとか、いろいろな生命体に憑りつかれて子どもをさらってしまう。いったいなぜなんだ?僕は小学校の教師になって、教師として勉強を教えるだけの存在なのに。僕がいったい何をしたって言うの?体は改造され、死ねないし、魔王と呼ばれる代表格の子どもたちによって何度でも再生させられてしまう。作間先生の恐怖に呼応して呼び寄せられる不気味な生命体。こいつらを喰らうことで力を手に入れる魔王たち。生命体が欲するのは作間先生と罪なき子どもたち…子どもたちなんて、すべての事情を知ったうえで、いずれは喰らわれてしまう恐怖におびえながら、それでもどうすることもできずに生きている感じです。救いようがない…食べるときが一番衝撃的で、作間先生に憑りついたところを、先端が丸くカーブした特殊な槍みたいなもので作間先生の体から引っぺがし、それを喰らうんです。

「こんな世界にしたのは作間先生のせいなんだよ」

いったいなぜ?こんな弱そうな先生に何ができたっていうのだろうか?まったく先が読めないので、これは最後まで読むしかないですよね。3巻と手ごろな巻数で終わることもわかっていたし、一気読みしたわけですよ。

予測不能の連鎖

徐々に明かされていく真実。実は、村田郁美という人物が、宇宙の破壊と創生を司る役目を持っていたという…ちょっとただのホラーでは済まされない話のデカさになっていきます。こんな別に何の能力もなさそうな作間先生の真実。それは、村田郁美と初めて出会っていた過去にさかのぼるわけです。

先生は何も覚えていなかった。宇宙の破壊と創生なんかよりも、ただ童貞喪失のための興味本位だっただけ。小学生の若気の至りだったわけですよ。かわいそうに…ただ村田をいじめから助けただけだったのにね。救った時のサイコパスか?っていう村田と作間先生の反応はさすがの怖さです…。

村田にとっては、自分をいじめから救ってくれた恩人でもあり、村田の語る誰にも信じてもらえないようなレベルの宇宙の話を信じてくれた唯一の人物。似たような価値観を持ち、共鳴できる人物。彼と契りをかわすことで、この宇宙をもう一度創り直そうって…いや、君はどういった経緯でこの地球にいらしたの…?そしてなんで無理くり相手をゲットしようとはしなかったの…?宇宙の創生とか言っといて、結局人間の愛だの、タイミングだの、考えなければならないなんて、話が小さすぎる。もっと威力のある形で、なんだってできたんじゃないの?白い卵と黒い卵。大人たちの世界と子どもたちだけの取り残された世界。2つの世界が混じり干渉しあっている今の地球…話がでかいのやら、小さいのやら…という感じが否めませんでした。

行田を救おうとした作間先生のシーンはすごくよかったな…なんかフォルムがかっこよかった。他は全部ダサすぎて、全然応援できない。でも、この世界のキーになる人物なんです。万物を覆す何かは、案外と身近なところにある。そんなことを伝えているのでしょうか。

恐怖に導く演出

子どもたちが、とにかく怖いです。平気で人を喰らいます。平気で作間先生を傷つけます。魔王は一人一人がまったくタイプの違う子どもたち。どう考えても結託することはリアルにはなさそうな性格をしています。そんな魔王たちが自分たちの世界を壊そうとするものを喰らっていく。そして、お互いすらも…

魔王たちは子どもの姿をしているけれど、おそらくは作間先生が大人になるまでの間、ずっとそこに取り残されていた人物たち。彼らがどうやって作間先生にたどり着いたのか…全然教えてくれないんですよ。知らないのは作間先生だけで、他の子どもたちはみんな事情を知っていて行動をしている。自分だけが知らない何かが、この世界で起きている…常に作間先生視点で描かれ、彼の困惑、死への恐怖、子どもへの恐怖、罪悪感の苦しみなどが、気持ちの悪い絵と共に絶妙に表現されています。オエっと吐きたくなるようなグロい展開ではなくて、得体のしれない何かにおびえる恐怖と、それに成すすべなく荒廃していく世界を描いた展開になっています。

魔王たちも、自分たちの世界を守るため、自分を守るために村田郁美と戦おうとしている。そのために力をつけ続けてきた。でも、お食事のシーンを見ても、魔王が食べているんじゃなくてお面が食べているというか…その先に今地球にいる生物の未来なんてなさそうだなーとは感じましたね。結局はすべてが操り人形。時が来るまでのお遊び時間。未来のないであろう漫画を読むのは、人によっては苦痛でしょうね。

大人と子どもの境界線

大人が感じる、子どもへの恐怖って、なんかわかる気がするんですよ。子どものころは、大人が絶対で、信じて疑わない存在であるのに対し、大人は心も体も経験を積んで大きくなるのに、いつまで経ってもどこかが子どものまま、もがいているような状態ですよね。子どものころに思い描いた未来とは程遠かったり、自分が今どこにいて、何をしたくて、これからどうやって生きていくんだろうっていう悩みが、いつもあふれている。大人になってわかったことだけれど、子どもは可能性の塊で、大人の手によってどんな形にも変わることができる。だからこそ、いい子どもたちを育てようって思えるような高尚な人ならまだしも、自分なんかに何かを伝え継承していけるだけのものなんてないんじゃないかな…?って思ったらもう全然動けない。そんな大人もいるでしょう。

子どもがいる・いないに関わらず、自分が社会に対して何かをすることで、自分はお金をもらい、社会はマンパワーをもらい、持ちつ持たれつ生きていく。当たり前なのに、壊れればいいと思ったり、壊れたら壊れたで、驚くほど単調に過ぎていく生活がありがたいものだと気づいたり…本当に人間ってめんどくさい。だから、こんな衝撃的な感じで、摂理を吹っ飛ばしてくれるような漫画を読みたくなるのかもしれませんね。そして、我に返ってまた前向きに生きていけるというか。体は成長するけれど、心はずっと自我を持った子どもの時のまま、ベースは変わることなんてないのかもしれません。

ハッピーエンドじゃないけどね

結局お月様になるという不思議な最後。なんかいい話系で終わられても困る。でも、それまでの過程の中で変わっていく作間先生は、悪くはなかったかもしれません。100歩譲って、ですけどね。逃げまくってた彼が勇敢になることができたというか。作間先生と村田郁美がこれから始まる時代のアダムとイブだったとも言えます。なんて衝撃的な創生…

悲しいのは、作間先生が、教師としての何かをつかみかけたことなんて、宇宙にとってみれば塵の1つにもなってない、ということ。そんな終わりがせつないです。どうにもならない運命に堕ちていき、戻ってこれなくなった悲しい男。よく考えてみれば、作間先生は全然悪い奴ではなくて、周囲との人間関係に悩み、孤立が好きになり、たまたま手を出した村田に翻弄され、そのまま世界に起きた歪の元凶とされ、最後も人間として生きることはかなわなかったという…何もかもが残念だった男です。たった一つの判断が、これだけのことを引き起こす…かもしれない。人生は選択の連続ですが、より慎重に何事も選びたいものだなと考えてしまいました。

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作間先生の悲運を見て日々のありがたみを知れ

世界観は飛躍しすぎているこの物語の舞台は、妖怪の類が人間を殺す。そんな単純な世界じゃない。オトナの世界と子どもの世界が別れてしまった歪みの世界だ。その世界をぶっ壊す強烈な存在と対峙するために、歪みの世界に囚われた大人になれなかった子どもたちが魔王として君臨する。何も関係がないと思い込んでいた作間先生だったが、過去にさかのぼり、自分の罪と愚かさを知り、絶望と、初めて自分が社会にできることを自身に問うのだった。ホラー系のくくりに入るのだろうが、全然怖くはない。グロさもあのイラストの感じだとだいぶマイルドで、それほど気にならない。確かに解体されて生かされている作間先生はきもかったけど、なんかもうそういう生命体かなって思えるような描かれ方をしている。内臓が内臓っぽくなくて、ただの紐みたいなもので紡がれてできているような…そんな生命体だ。いつの間にか記憶を魔王たちに飛ばされて、いつもの日常に戻さ...この感想を読む

3.53.5
  • kiokutokiokuto
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