家族と言う絆を埋めた手紙と言うなの繋がり - 手紙の感想

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手紙

3.883.88
映像
3.63
脚本
3.75
キャスト
3.88
音楽
3.88
演出
3.50
感想数
4
観た人
3

家族と言う絆を埋めた手紙と言うなの繋がり

4.04.0
映像
3.5
脚本
4.0
キャスト
3.5
音楽
3.0
演出
3.0

目次

手紙でなければならない理由

相手との距離があるから手紙?相手に自分の思いを伝えたいから手紙?相手に会えないから手紙?

そんな表面的な理由ではない、もっと深くて重くて辛い理由がこの手紙には込められています。

兄が思う弟への愛。それは、弟を大学無事卒業させて立派な社会人になってもらいたいと言う親心にも似た兄弟愛でした。その思いが深く、重く、そして辛いものに変わってしまったのがとても残念です。ある時、近所の家に強盗に押し入りそれを発見した家の人を殺害。兄の性格上決して犯罪を犯すようには思えないのですが、単なる虐げが人を狂気へと追いやるという現代の日本では起こりうる社会問題の一つとも言えると思います。しかし、それがドラマの始まりと言うのなら、スタートを切ったなら振り返らずにただただゴールに向かうのみです。でもそこに気づくまでの人間模様と、現実の辛さが生々しく描かれています。

その為刑務所に服役している兄が弟へ手紙を書き続けるのが、それが兄の目指す終着駅だというのなら、弟の目指す終着駅はどこなのだろうと言う別々の道を歩む兄弟の生き方に強い興味を持たされる事間違いなしです。

電話でなく、メールでもなくただただ兄の手で書き綴られる手紙に意味があるんですね。誠実さ、悔恨の情、謝罪そして絆が込められた手紙は、その代わりになるものは無いのだと納得できるに違いありません。

罪と夢と愛と…

兄の事件がきっかけで兄弟の距離は遠くなっていた。それは関係におていも物理的にも遠くなっていた。弟は目立たない工場での仕事を選び周囲の人との距離を取りながらの生活、それもこれも全て兄のせいだ。もうこの生活にも慣れたとどこかで諦めていたこの切なさがこの映画の根底にある世界観。

その孤独な世界にかすかな光となっていたのが、夢であるお笑い芸人として売れること。しかし言うまでもなくその夢さえも兄の事件によってもろく破れてしまう。相方と二人でやっていく芸人としての夢は現代の凶器とも言えるネットの書き込みによって切り咲かれて行く。「殺人者の弟」と言うこの書き込みが、憎い。違う犯罪者の兄が憎い。この感情に何度であってきたのか。辛い現実との再会が弟の孤独感に更なる深い闇を加える

犯罪者の弟の自分だけが取り残されて行くこの現実は、友情と夢の二つを踏みにじっていく。無気力な現代人はこの時心の中でポキッと言う音が聞こえるに違いない。

また、淡い恋心さえ兄に邪魔をされて、成就することを許されない残酷な世界。

犯罪者の家族というだけで、夢と愛を叶える事を許されないその中で兄からの手紙が届き続ける。

人が集まれば集まるほど問題が大きく複雑になる。時が経過すればするほど許せない兄への感情が濃密な闇として膨れ上がる

この相反する時の経過と感情と状況が独特の重引力として働く。よりリアルな3D映像のようなメッセージを伝えている様に思えます。

日本という孤独な現代社会を作り上げているものが何んなのかを垣間見れる世界観が描かれています。

トンネルを抜けられるのか・・・終着点はどこに?

弟の八方塞がりな状況に止めを刺すような仕事場での差別や区別。弟の視野が狭くなる一方。それはまるで五十円玉の穴から世界の風景を見ようとするような。そしてそこから見える風景は心のもやがかかり灰色にしか見えない廃人的感覚が襲う。

兄への手紙の返事も返す事も出来なくなる。そして自分のことしか見えなくなる中自分の変わりに自分を支え続けてくれた女性が兄に手紙を書き続けてくれていた事に気づく。

余計なお世話?お節介?誰も頼んでいない?そんな言葉では片付けられない繋がりを守り続けたその存在に感謝できた。自分しか見えてないそんな自分を全て受け入れてくれた女性の存在を通して新たな人生のスタートをそして決断を下す。それこそが「兄弟の縁を切りたい」と言う答え。

もちろんそれも一つの出口なのかもしれない、でも本当の終着駅ではない。

人は誰でも挫折を経験するもの。

でもそこから立ち直るのは自分。新たなスタートを切るのも自分。同じように、ゴールも終着点を決めるのも他の人に決めてもらうのじゃなく自分なんだということを教えられたような気がする。

一度は諦めた芸人としての道をただ一度だけ復活させた弟。

その弟が立ったステージこそが刑務所で服役している兄のいる所

慰問とい形をとってお笑いの復活ステージに立つ

そこには、今まで見せたことのない決意に満ちた弟の姿

大爆笑が続く客席の中、一人床に頭をこすりつけて泣き続ける兄。

弟を立派な社会人となって欲しいと言う思いから大学費を工面し、魔が差して強盗殺人を後悔し、謝罪し続ける兄だが、結局兄も自分の視点でしか見えておらず弟のことも被害者に対しても一方方向の視点でしか見えていなかった

その犯罪者を兄とする不運続きの弟は、その全てを受け入れて兄に向かい合う一回りもふた回りも大きく成長した。不器用で繊細で、決して器の大きな弟ではないが、許す、受け入れる、そして向き合うと言う終着駅に立つことが出来た事に大きな感動を覚えます。

ダメな兄、立派な弟と言うカタチの兄弟ではありませんが、でも最高の終わり方を目指して努力した兄弟の姿に胸を打たれます。

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