外から見られるママ友の世界。
ママ友の世界ってリアルにこうなの?
セレブママにステージママ、経営者など、読者モデルを除けばどの街にも大体いる人たちを主人公に「ママ友地獄」のストーリーが進んでいきます。出る杭は打たれるし、目立たなければ下に見られる、なんとも生きづらい環境ですが、現実に悩んでいる人が多いからこそ関心を集め、最大視聴率15.7%にまでなったのだと思います。そんな世界を「外から」見られることに価値があったのでしょう。
自分は、周りのあの人は誰に当てはまる?
わずか幼稚園1クラスにも満たない人数の中に、よくここまでというくらいあらゆるカテゴリのママが集約されています。確かに、開業医の妻(最初の頃にちらほら出てきて嫌味を言っていた人)とサラリーマンの妻が居合わせるのは、小学校以降ではあまりないシチュエーションになるので、幼稚園という舞台はベストな選択だったのかもしれません。正直に言うと、侑子夫妻がお受験することに決めた動機付けがちょっと弱いような気もしましたし、さすがにみんながみんなお受験するなんてことにはならないとは思いますが…。
モラハラを「ちょっとしたストレスの結果」かのように描いた害
気になった点を一つあげます。
夫・英孝(高橋一生)による暴言や金銭的束縛などのモラルハラスメントを受けていたちひろ(尾野真千子)夫婦は最終的に離婚を思いとどまりますが、実際モラハラが治るケースというのは極々少数派で、現実的ではないように思いました。モラハラの根本原因と言われている幼少期の愛着障害(自分の子供時代の経験に原因があるから、自分に子供ができて当時と同じような世界が出来上がることをきっかけにその特性が露呈するのです。妻が「結婚前や出産前には気づかなかった」ということが多いのはそのためです)、そう簡単に、カウンセリング等の介入もなく解決するものではなく、だからこそ被害者は苦しみます。ドラマでは、仕事のストレスのはけ口が一時的にモラハラや痴漢行為に向かったかのような描写をしていましたが、そのことにより、モラハラの根深さ、解決しにくさを誤って社会に伝える結果になったのではないかと思います。この誤った見解が、被害者を二重に追い詰める「二次被害」を引き起こす恐れがあります。
「空気を読め」とは言うけれど…
ママ友問題で一番追い詰められるのは「自分以外みんな敵&傍観者」になってしまった場合かと思います。現実では特に何をしたわけでもない人が何かの拍子に槍玉に挙げられ、行き場をなくすケースがままありますが、流石にそれに対する解決策は同ドラマでも提示できなかったということでしょうか。
侑子を見ていると、「お受験は親のエゴだと思う」など、端々に空気を読まない発言があることがわかります。ママ友世界を生き抜くためには、自分の意見はそれが正しいか間違っているかではなく、誰の神経も逆撫でしないことを基準にしなければならないのでしょう。実際、侑子の意見は決して間違いではありませんが、結果としてそれに腹を立てたママたちが、自分の子を使って侑子の子を攻撃しています。
と言っても、一生続くわけではないだけに、言い分があっても涙を飲んでやり過ごしてしまうことも多く、自分が悪者になったままうやむやになって、すっきりしない人もいるでしょう。
こんな特殊な世界が、ドラマによって当事者でない人たちにも見えるようになった点では、この作品に価値があると言っていいのではないでしょうか。
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