時代が過ぎても破壊力のある作品
憧れさえ抱かせたかもしれない問題作
ディープラブシリーズ、ほんと流行りましたよね。女子高生をターゲットにケータイ小説から漫画になったこの作品。2000年になって登場し、2002年に書籍化が決まったこの物語は、本当に暗いです。いいところ一個もないかもしれません。だって義之は、大事にしていたもの全部失いますから。だけどね、ホストの世界でのし上がっていく義之は、かっこいいんですよ。何もない純真無垢。そこにありったけの夜の世界の嫌な部分をぶちこまれていく…せつなさがありつつも、どんなふうに大人になるのだろうかと興味を持たずにはいられません。この物語を読んで、夜の世界にあこがれを抱いてしまった若者もきっといる気がします。それこそプロとしてホストになりたいとか。決して職業を侮辱するわけじゃないです。自分に外見的な魅力、内面的な魅力があってそれをお金に直接変換できるのなら、もしかしたら最高の仕事と言えるかもしれない。ただ、のし上がっていくためにはとてつもなく努力が必要で、強者たちに勝てなければ金を失って敗北するのみ。厳しい世界だと思いますよ、ほんとに。そしたら普通に勉強して、普通にサラリーマンして、お金ためて結婚したほうがすげー安全だなーと思いますよ。穏やかに生きたい人は選ばないほうがいい職業です…男性は年をとっても魅力は衰えない場合が多いですが、それでも若いうちでしかできない仕事だなーと思いますね、ホストというのは。
闇の所業をすべて見せてくる
売春から薬物から、お金に関わるあらゆる闇の所業をとにかくぶっこんできます。ホストにとっては女こそがお金を落とす神様。いかに自分のとりこにさせるのか、それだけで済めばまだいい仕事だと言ってもいいと思うんですけど、だいたいがそれで終わってくれないんですよね…酒と女に溺れたら、薬物が必ずちらついてくる。2000年代に入って、どんどん薬物の使用がテレビで取り上げられるようになり、その危険性が叫ばれているけれど、それでも誰もやめようとはしないです。快楽をくれて、お金を落としてくれるから。嫌なこと全部忘れさせてくれるから。人間の弱みにつけこんで、利用する人間が必ず世界のどこかにいる。そしたら、弱み握られないように、一生懸命生きて、ターゲットにならない人生を歩むしかないじゃないですか。薬だけは絶対だめだ。楽しいのは薬を売っている売人だけですよ。売られたほうはお金はとび、依存症になり、カモになっていくだけ。
そして、闇の所業の餌食になるのはだいたい若い子たちです。若いからなんでも押し付けられて、やるだけやらされて捨てられる。みーんな自分の事ばっかり考えてる。自分が楽になりたいってそればっかり考えてるから、みーんな不幸になるんだよね。誰かのために。人間らしくそこは人のためにがんばりましょうよ。そしたらこんな嫌なこと、わざわざ漫画で訴えられることもなく、消え去ってくれると思うから。誰かのために、元気に生きていかなくちゃいけないんだ。だから、大事なのは健康だけだ!
女はいつも欲望の餌食
今もね、世界各国で戦争・紛争があり、そしてレイプがあるわけですよ。女はいつでも餌食なんです。恐ろしい戦いのストレス解消のはけ口で、奴隷なんです。そこから脱却できないこの世の辛さ…日本に生まれてなかったら、もしかしてアフリカに生まれていたら…ぞっとするよ。しかもそれを当たり前・仕方ないと思って生きているなんて、嫌すぎる。お金がないなら体で払え。お掃除洗濯なんでもやるから、体だけはやめてくれないだろうか。
義之にとって、アユはすべてだった。なのに、キレイだったアユは、汚いものを全部知っていた。知っていたのにキレイに笑っていた。苦労を知らずに生きていたのは自分だけ…義之のこの辛さ、女の立場から考えると全部は理解してあげられないんだけれど、
知りたいから
といった時の義之には胸をえぐられるような気持ちになりました。ディープラブリアルの前に、アユの物語も知っていると、序盤から涙が出てきます…
女は金になる。もっと違う意味で、財産だと言われたいですよね。拓も沙羅のことがあってようやく気付いたけど、もっと早く気づいてくれよ!自分のし上がって、お金手に入れて、それでどうした?何があるんだろう?金で物を買うな、自分の財産になる経験と知識を買えよ!しかしそんなことも、お金のないご家庭では誰も教えてくれない。お金がある人だけが知っていたりするんです。世の中平等なんてあるんだろうか。そんな桃源郷があるなら教えてほしい。どうか義之たちに教えてほしい。そう願わずにはいられません。
死ぬときに気づくなその前に気づけ
気づくときは、いつも遅い。ディープラブリアルは後半に入るほど辛すぎです。薬物がからみ、お金がからんだら、もう後戻りできない犯罪の域ですから。最初はですね、龍二さんと隆・翔との掛け合いもちょっとおもしろいなぐらいには思えていたんですよ?義之も、ホストとしての才能を開花させていく明るい兆しがあった。なのになんで…めっちゃ死んだりすんのかな。昼の世界があるなら、夜の世界があったっていいと思うんです。ただ休んでりゃーいいじゃないか。来る朝に向けて。なのに、夜はたくさんの人が理性を失います。
ある研究では、日光を浴びる時間が少ない国では、うつ病になってしまう人がとても多いらしいではないですか。光がないと、人間簡単にダメになるようにできている。だから、そこにつけこむ悪しき輩が出るわけだよ。ディープラブを読んでるといつも思うのは、どうかあらゆる世代、あらゆる家計の人が、たくさんの知識に出会える世界になりますように。これだけは言いたいってことです。渦中にいるときにはいっぱいいっぱいで絶対わからないことがあります。一歩引いて、見つめたときにようやく見えてくるものがある。苦しくなったら、一人で考えないで、たくさんの人・たくさんの考え方・たくさんの世界に出会うべきだなーと思いました。そして、自ら動くべきだなと。他人がいなければ、自分がどこにいるのかもわからない。人間って本当に弱いです。だけど、道が見えたら、あとは簡単な世の中だと思うから。
みんなもっと本を読め
ということで、本を読めばいいのに…と思いました。漫画も、フィクションもノンフィクションも、なんでも大事だし、なんだっていいから、自分だけじゃなくて、いろんな人の話を聞いてほしいなと思う今日この頃です。本読むと、なんかいろんな人いてもいいなとか、自分ってどんなだろうとか、もっと考え深まると思うんです。悲劇に見舞われた人たちは、悲劇しか知らないから、楽しいことがわかんないんだよ。拓だって、義之だって…誰だって平等にチャンスは転がっているのに、つかむもの・つかむタイミングが全然違うんですもんね…街中にわんさかといる、夜の街で働く人たち。どうかまっとうに働いてくださいね。そして、自分を安売りする人がいたら利用せず叱ってやってください…自分がもしそんな子たちに出会ってしまったら、ウザいと言われようが、やめたほうがいいよと言いたい。一緒に働こうと言いたい。身分も何も関係なく、等しく働けるようになりたいものです。
最終的に、義之はアユもレイナの娘のアユも、そして何かにつけ諭してくれたホームレスの元医者も…自分を知ろうとしてくれた人はみんな失いました。こんな悲劇を生まないように、という気持ちで読むといいと思いますよ、ディープラブは。
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