つまらなくはないけれど物足りないグルメ映画 - 極道めしの感想

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極道めし

3.673.67
映像
3.17
脚本
3.67
キャスト
3.67
音楽
3.50
演出
3.50
感想数
3
観た人
4

つまらなくはないけれど物足りないグルメ映画

2.52.5
映像
2.0
脚本
1.5
キャスト
2.0
音楽
2.0
演出
1.5

目次

グルメ映画なのかギャグ映画なのか日常映画なのか

『極道めし』のジャンルを説明するのは難しい。というか、この映画の概要の説明をすること自体が難しい。ちなみにウィキペディアの説明ではハートフル映画となっているが、決してそんなことはない

『極道めし』の話のキモは、同じ房の囚人たちが、自分が一番美味いというメシを語り合う、というところにあるだろう。そのあらすじを聞いて、なんとなく興味を持って読んでみると肩透かしを食らう。

最大の難点は、優勝したらどうなるかを、最初にネタバラシしてしまったところにあるだろう。ここを伏せておけば、後半まで期待感を保てるのに、序盤であっという間にバラしてしまったからつまらなくなってしまった。しかも、「おせちの好きな具をとれる」というショボさよ……。

「おせちが唯一の楽しみ」という囚人のみじめさを描きたいにしても演出、シナリオ等々中途半端なので、やっぱりこの『極道めし』の説明をするのはひどく骨が折れる。いかにも「低予算で作りました」感満載の映画なのである。

以降は、このシナリオのどこに問題があるか更に追及していきたい。問題だらけでほとんど文句みたいになってしまっているが、そこは愛のムチだと思ってご了承いただきたい。

このシナリオはちょっと擁護できない

ちなみにコミックス版『極道めし』とは一部キャラクターを除き、ほとんど関連性がない映画オリジナルの展開である。

つまり、映画版は映画版として完全完結するはずなのだろうが……ここに、この映画の難点がある。

というのも、『極道めし』は基本的に伏線回収なしの投げっぱなしシナリオなので、観るほうにも相当の覚悟と寛容さが必要なのである。

南が息子と再会できたかも謎。スナックのママとちゃんこの再会についても投げっぱなし。出所した相田が何故、母親の元に戻らず、野菜泥棒をしていたのかも不明(結局、奴はうそつき、ってことでいいのか?)。

全てのエピソードが説明不足で観る側を置き去りにしていて、しかも肝心のグルメ映画というウリもちょっと中途半端だ。

出てくる「囚人たちが食べたい料理」も、なんだか偏りがある。確かに美味そうではあるのだが、演出が不足しているように思えるのだ。

細かいことを言ってしまえば、例えば調理過程が映らないところや、料理の映し方、あるいは出演者の料理の食べ方に、グルメ映画としての演出の未熟さが映る。まるで食品サンプルを見せられているような気分になってしまい、そそられないのである。しかも一番美味いのがスキヤキって当たり前だろ!!!オムカレボナーラや海鮮バーベキューはともかく、お袋の黄金めしとインスタントラーメンが勝てる訳がないだろ!!!

しかも、勝利の証であるおせちをゲットしたところで、特に感慨もなし。

このように、『極道めし』はグルメ映画としても刑務所映画としてもギャグ映画としても見どころがなく、ひたすら疑問だけが残る映画となっている。ちなみに、一番筆者が文句を言いたいラストについては次項で詳しく説明する。

これらのことがあってか、むべなるかなこの映画についての評価はさほど低くないようだ。

救い様のないラストは自業自得なのか

特に、この作品のラストは非難ごうごうだろう。

というのも、主人公・新入りこと栗原が救われないからである。三年服役した末にやっと元恋人のしおりの元を訪ねたら、しおりは旦那と子供をゲットして、しかも栗原が来たことにすら気づかないという残酷さ。

確かに新入りは元チンピラで、しおりのことを散々傷つけたのかもしれないが、それにしたってひどすぎる。登場人物たちにというか、視聴者に対してひどすぎる。

制作側としては元チンピラに対する因果応報、ということを表現したかったのかもしれないが、両親に捨てられ、元恋人とも破局した男に、この仕打ちはあまりにもひどいような気がする。この男に明るい未来の一つぐらい用意してほしかった……。

しかもちゃんこに手紙を喰われ、手紙の内容についても救済もなし。あっさりちゃんこと和解しちゃうし。むしろこっちが手紙の内容が気になってくるほどである。

彼を主人公とするなら、もっと観客が感情移入できるような男にしてほしかったし、哀れな生い立ちを描くならちゃんと救済するようなイベントを作ってほしかった。

こうして考察を書いてみると、余計にこの映画の物足りなさが露になってくる。繰り返すようだが、登場人物、シナリオ、伏線回収、料理、結末と全てが中途半端なのだ。唯一良かったのはちゃんこ役のぎたろーの演技に癒される、ということぐらい(スナックのママとのやり取りや、もーいーかい、は本当に可愛かった。母性をくすぐられた)。

低予算やB級映画を目指すなら、もっと何か一方向に特化した良い物が作れたはずなのに、これでは観た側も酷評してしまうだろう。特に原作がある話なのだから、しっかりと作ってほしかったところだ。

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