ある意味バトル漫画のお手本 - 無限の住人の感想

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無限の住人

4.254.25
画力
3.75
ストーリー
4.65
キャラクター
4.40
設定
4.50
演出
4.25
感想数
2
読んだ人
12

ある意味バトル漫画のお手本

4.54.5
画力
4.0
ストーリー
4.5
キャラクター
4.0
設定
4.0
演出
4.0

目次

最強談義

無限の住人の話の前に、前置きが長くなることをここに断っておく。

おおよそのバトル漫画というもので、強さを議論しだすとキリがない。誰がしが最強、あれより誰それのが強い、それなら奴のほうが相性が……うんぬん。強いってなんだっけ。こう言ってしまえば元も子もないが、漫画において、強さというのは「演出」である。実際の格闘技や剣技、軍事力のような、物理学的に勝敗を左右する明確な強さは存在していない。そもそも漫画というのは、物理学さえ作者のサジ加減でしかないので、強さなど測りようがないのだ。プロレス……と、例えたほうがわかりやすいかもしれない。勝つ方は決まっていて、お決まりの必殺技があって、時折大番狂わせがある、作者の一人プロレス。それがバトル漫画である。これ、決してけなしているわけではない。漫画とはそういうものなのだ。なので、漫画において強い奴とはつまり、「作者が強いと思っている奴」のことなのである。例えキャラクターの設定を現実の物理学に当てはめて、こいつが実は最強じゃね?と考察しようが、作者がそう思わなければそいつは最強じゃないのだ。そのへんが現実とか、格闘ゲームとの違いである。

この理屈があるゆえに、漫画の中でのキャラの強さはコロコロ変わる。バキシリーズなんかがいい例であろう。が、それはあまりいいことではない。一度作られたキャラごとの強さの指標は、演出として読者に信頼されるものでなくてはいけない。そこに説得力が無いと、そもそも「強者を倒す!」というカタルシスが起こりえないからだ。

強さがズレてしまうわけ

少年漫画において、キャラの強さがぶれてしまう理由のおおよそは、主人公という成長分子のせいにある。順次戦闘を繰り返し、強くなっていくのがバトル漫画の王道であるなら、その踏み台となった連中はどんどん置いていかれるということに他ならない。更に、戦闘における緊張感を増すために戦闘能力もインフレしていくものだから、ドンドンバカバカしい数字が並んでいく。「かつて苦戦したあの男を片手で倒す化物が一兵卒にすぎない国の覇者を瞬殺する怪物を上回る実力の兄よりさらに……」と、キリがない。そんな中でかつてのライバルを無理に引っ張り上げたりするものだから、強さという指標が滑稽で、頼りにならないものだと感じてしまうこと、漫画好きなら必ず一度は経験していることだろう。ある意味少年誌が、ドラゴンボールあたりの時代から苦戦してきた一つの壁とも表現できる。

と、やっとここで、本題に入ろう。

無成長で、納得

前フリの段階で、このあとつらつらと何を書くのかなんてバレバレかもしれないが……この無限の住人がバトル漫画であることは誰しも疑うところではないが、この漫画、キャラクターが過度に強くなることは決してない。初めに示された強さの基準がそのまま、キチンとブレることなく演出として機能し、物語を構成し抜く。そういう漫画は、意外と珍しい。無論、ないわけではない。終わりがしっかりと定まっている、直線型の物語……例えば、平野耕太先生の「ヘルシング」なんかも強さにブレがないもののうちの一つだろう。修行で強くなり、冒険を続けるザ・少年漫画ではなく、戦いと強さを小説のようにパズルに当てはめていくことで構成された漫画。それを、30巻にわたってやり通したところが、「無限の住人」が優れた漫画である一つの証明ではないだろうか。とくに、不死実験編を超えた先の、逸刀流逃避行は、「強さを演出用のパズルとして使用」しながら、毎回毎回の戦闘を盛り上げ続けるという、一つのバトル漫画の集大成とである。もちろん、不死実験でヒマな期間が長かったのは言い訳できないだろうが……あそこは、もうちょっと短くてもよかったと、文句も一つ加えておく。

不死の主人公=普通?

逃避行を語る前に、本漫画の主人公についておさらいを。バトル漫画の主人公は、総じてタフだ。彼らは追い詰められた先の逆転以外を許されていないため、必然的にいつもボコボコになる。なんでそんなにタフなんだと、主人公補正の理不尽さは時折バトル漫画では槍玉に挙げられてしまう。じゃあ元から、主人公を不死身にしてしまえばいいのだ!というのが、本作の主人公、万次さん。不死の主人公は、しかし、普通に考えて負けようがないので、緊張感を保てないが、そこんところこの漫画しっかりしていて、彼の不死性は意外と脆い。ゆえにバトル漫画の王道、「ボロボロになりながら活路を開く」が綺麗にハマっている。その意味で、万次の不死は決して主人公として異端ではないと、筆者は言いたい。漫画の主人公なんて、みんな不死身だ。彼はただ、ちゃんとタフさの理由付けがされているというだけの、王道主人公なのだ。

逃避行

この漫画の本番、逸刀流の逃避行。漫画全体の約三分の一を使って描かれるこの旅は、無限の住人を極めて綺麗に締めくくった、待ったなしの全滅ロードである。その中で、この考察では、「キャラの強さ」がいかに構成のキモであったかを見てみたい。

作中においても語られるが、逸刀流でもワンランク上の戦士たちは、5人ほどしかいなかった。そのうちの4人を投じて行われた作戦が、江戸城襲撃である。必要兵力としてはギリギリであり、この作戦で馬絽が死亡、怖畔が脱落した。妥当な損失である。この作戦に参加しなかったうち、実力者に数えられるのは阿葉山と、いちおうで果心居士の老人組であった。その果心居士は六鬼を一人落とし、杣燎の必死の一手の前に敗れた。杣燎は、この時点で戦力からは外れることとなる。一方で、逸刀流とは別ベクトルで主人公と向かい合った男、尸良。ある意味この漫画の象徴のような彼の死に様だけでも考察が書けそうだが、ここでは置いておいて……元より強者であった彼に、足すことの無痛、不死。打ち倒すのに使った兵力が、雑魚、凶、万次。凶は実質ここで戦力外となったことが、この考察においては重要だろう。また、六鬼と激突した逸刀流の若人連合は、その大半が死亡し、やっと一名の六鬼を落としただけであり、実力のあった若人たちは百琳と、ワイルドカードで地味な実力者、御岳に敗北した。阿葉山もまた、偽一に屠られたものの、重傷を残すことには成功している。そして舞台はいよいよ終着点に辿り着くわけだが、この時点では、兵力は吐鉤群の優勢であった。それを覆したのが、みんな大好き槇絵さん。彼女の存在が受け持った吐勢力、なんと六鬼2名と御岳と、怪我人偽一。で、勝っちゃうのがこの人の魅力だろうな。そして六鬼最強は万次と凛がなんとか倒し、お互いの長同士は実力伯仲で一騎打ちと相成って……。

以上が、戦いっぱなしの逃避行の、内訳である。巻にして9巻ほど、お互いに戦力をぶつけ合い、違和感なく、成長なく、見所を無くさず、綺麗に最終決戦までにカードが出揃っている。この計算こそ、筆者がこの考察で語りたかったことである。長かった……。

注目して欲しいのはやはり、この間戦いが途切れなかったという、バトル漫画としての完成されっぷりであろう。ここに更に人間模様が加わるのだから、熱いことこの上ない。この逃避行、「進撃の巨人」のように、死がつなぐ希望の道というわけでは決してない。お互いにいい人悪い人入り乱れ、第三勢力の主人公も(ギリギリだが)置いてきぼりを喰らわずに参加しきり、一つ一つの戦力的な駒が互角に出揃って戦い、ほとんどが死に絶える。そういう話である。この漫画、物語自体が大きな目的に向かっていたわけでは決してない。それぞれが意思を張り合い、最後に立っていたのが主人公チームであったと、それだけのことである。なのに、飽きさせず、面白い理由は、戦闘自体がそれだけで楽しく、盛り上がり続けた以外の何者でもない。誰の成長もなしに、目標の達成を戦闘に任せず、バトル漫画を貫いたからこそ、10巻の間、緊迫感を保ち続けられたのだ。主人公が戦うわけではない場面の多さが、結末を予想しがたいものとしたことも見逃せない。かつてこれほど完成されたバトル漫画があっただろうか。この漫画を尸良の残酷さや不死実験の中だるみで語る人たちは、是非一度、バトル漫画としての本作の完成度に注目してもらいたい。最後の10巻を楽しむために、その前の20巻はあるのだっ!

ところで余談だが、本作の登場キャラは武器といいなんといいイロモノ揃いである。それを吐さんが突っ込んでいたりもしたが、「あんたの部下はどうなんだ」と思った方も多数いらっしゃっただろう。そんな中、正統派な悪役武将としてラスボス格を貼り続けた吐鉤群さんのデザインに、筆者は拍手を送りたい。

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他のレビュアーの感想・評価

ちょっと変わった時代劇バトル漫画

全30巻ほどあってまだ僕は半分の15巻ほどしか読んでないのですが、生意気にもレビューあげます。笑この無限の住人ですが、僕はアニメから入りました。アニメも原作に忠実でかなり面白かったです。(いろいろ評価見てみると中々不評らしいですが…)大まかにあらすじを言いますと、舞台は江戸の中期?くらいで主人公はなぜか不死身になる虫に取り憑かれていて過去にたくさんの人を殺めています。その主人公が罪滅ぼし?かでこれからは悪党を千人切ると誓います。そんな主人公の前に両親を道場破りを続けている逸刀流の連中に殺された娘が現れます。その少女の復讐の助太刀として一緒に冒険するという感じです。沢山の人間を殺してきてなお死ねない主人公の苦悩、復讐に燃えながらも葛藤を続ける少女や敵の逸刀流の連中も魅力的な奴が多くてとにかくキャラや設定がいいです!画力はバトルシーンは僕だけなのか、何がどうなってるか分かりづらい場面が多かった...この感想を読む

4.04.0
  • kuuuukuuuu
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  • 548文字

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