アットホーム・ダッドは隠れた名作
コメディでありながら考えさせられる内容
亭主関白で古風な考え方を持つ主人公(阿部寛)にとって『主夫』は最も遠い存在であるが、突然のリストラによって止むを得ず主夫になり、悪戦苦闘するという内容である。序盤はコメディ的な要素が強いが、主人公が主夫となることで、自分の過去の態度を悔いたり、妻への日頃の感謝の気持ち、また家族とは一体何なのかを考える場面を描くことで、忘れがちな感情を視聴者にも今一度考えさせる作品となっている。
阿部寛の演技が生きる
この作品において最も重要なのが、役者がコメディとそうでない部分をどう演じ分けるかである。普通は笑顔でコメディ、真剣な表情でそうでない部分を演じ分けそうな気がするが、主人公役の阿部寛はそれとは正反対で、真顔でコメディ要素を演じ、逆に笑った表情でそうでない部分を演じきっていた。しかもその演技に不自然さがなく、笑わせるところでしっかり笑わせ、真面目な部分では考えさせられてしまう。そういった演技にも長けた阿部寛を抜擢することでより面白い作品になったことは間違いない。また、お隣の夫婦を演じる宮迫博之(雨上がり決死隊)と中島知子(元オセロ)はお笑い芸人ながら良い演技でひとつアクセントが加わり、作品に厚みが増している。
登場人物に悪い人がいない
出てくる人全員が本当は良い人で人間味で溢れている。主人公はもちろんながら、その妻(篠原涼子)は主夫業に苦戦しながらも強がる夫を陰ながら応援し支えており、夫婦のあるべき関係などを考えさせられるエピソードも多い。お隣夫婦、特に主夫をしている夫(宮迫博之)は家事に慣れない主人公が気になって手伝ったり、ママ友との接し方を教えたりと、世話を焼いてくれる。他にもママ友一同や、幼稚園の先生、スイミングスクールの先生など、様々な登場人物がいるが、もれなく優しい心を持っており、見ていて安心感があり楽しめる要素である。
誰からも愛される作品
2004年の春に放送されたこの番組は、人を選ばない、誰もが楽しめる作品ということで、平均視聴率16.9パーセントの高視聴率番組となった。近年、主夫をする男性は増えており、このドラマの内容に共感する人口は当時よりもさらに増えていることだろう。このレビューを読んで、10年以上前の名作ドラマの存在を知った、または思い出した人が、『アットホーム・ダッド』を観るきっかけにしてもらえるとこんなに嬉しいことはない。
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