大人と子供のリアルな心情を描いた作品。料理漫画…久しぶりの新展開！ - 甘々と稲妻の感想

誰かとおうちごはんが食べたくなる！リアルで思い出深い家庭料理漫画

本作、他の料理漫画とは一味違う味を持ったものになっています。

従来の料理漫画とは、ありえないレベルの料理で料理人が競い合う『勝負型』、主人公が食を楽しむのを見て食欲をそそられる『体感型』の二つ。近年では可愛い女子が美味しそうにごはんを食べているのを見て心潤わせるかたグラビア型なるものが増えつつあります。

そんな中、本作は言葉では伝えきれない優しさだったり暖かさ、そして憂鬱を与えてくれるなんとも伝えきれない何かがあるのです。

主人公は高校教師。早くに妻を亡くし、まだ幼い娘をもつシングルファザー。最初は自分で料理することtもままならず、いつも娘にはコンビニ弁当等手がかからない食事をを与えています。※もちろん栄養にはこだわったもの…

そんな彼が様々な人と交流しながら娘のために手料理を覚えていくというのが話の大きな流れです。

それだけ聞くとただのハートフルな漫画にしか思われないかと思いますが、本作の醍醐味はその中に組み込まれていくそれぞれのキャラクタのリアルな葛藤にあります。

例えば、子供が保育園で喧嘩をして元気がない。それならば！子供の好きな食べ物で元気を出してもらおう！普通ならそう考えるところを、主人公は何故喧嘩をしたのだろう？と考え、その気持ちを鮮明に一コマに表す。そして喧嘩をした原因である事柄も包み隠さず全てコマで表現する。そして生まれるそれぞれの矛盾だったり解釈の違い。最後にはそれを踏まえた上で生まれた料理で解決しようとするのですが、それ自体は結局のところ根本的な解決になっていなかったりするのです。

なんともリアルな…そんな子育ての難しさがあるにもかかわらず、今までの料理漫画に存在する絶対的な力を持つ料理がこの漫画には存在しないのです。

ただそのリアルさゆえ、何故かみんなで手料理が食べたくなる。例えばですが、テストで良い点を取れなかったのに家に帰るといつもより少し豪華な食事が待っていても、こっちとしては美味しくごはんって食べれないじゃないですか…そんな思い出がふと蘇ってくる作品になっています。

そんな内容ですから、一人でごはんを食べるのが味気なくなってくるのです。久しぶりに家族でごはん食べたいなとおもってしまいます。

恋愛モノではないのにハラハラする男女関係

もちろん、そんな作品にも我々が一生かけても経験することのできないようなドラマチックで羨ましい展開が待っています。

主人公は高校教師と前述しましたが、もちろん彼の生徒もこの作品には登場します。そりゃいなきゃおかしいでしょと…ただ彼、ある一人の女子生徒と一緒に料理を作っているのです。しかも彼女の自宅で、しかも！彼女の両親がいない時に！

なんともいかがわしく、羨ましい！※これにはもちろん理由があるのですが…

ただし、年頃の女子高生、恋愛感情とか生まれないの？とか変な期待を持ってしもうのですよ。なんか、漫画の主人公ってずるいです。

ただこういった非現実的な描写はやはりあると漫画自体が引き締まる感じがします。

そしてやっぱりつむぎちゃん。誰しもが持つ幼少期の潜在的な何かを思い出させてくれる彼女の存在。

そして今まで表面的に本作の注目すべきところを語ってきましたが、まだ大きく取り上げていないキャラクターがいます。彼女こそが主人公の一人娘のつむぎちゃんです！

もう一人の主人公とも言える彼女。人形のような可愛さで見る人を魅了しているのですが、やっていることはいたって普通の子供！それも漫画でよく出てくるような子供ではなく、現実世界で普通にいる子供です。幼少期の幼稚だけども解決に困るような喧嘩もするし、甘えるし、苦い野菜が嫌いだし、う◯ちと言うだけで大笑いするいたって普通の子供なのです！

ただ、前述した通りリアルな内容を取り上げている作品にこの子のような存在はなくてはならないでしょう。

それに、わかるんです！確かに自分も小さい頃こんな感じだったような気がする！とか。そういった心の奥底に眠っていた想いを彼女の存在は蘇らせてくれます。だからこそ、大人の言っていることはもちろん、子供の言っていることもすんなりと受け入れられて全体的に納得しながら観れる作品になっていると感じます。

料理漫画を楽しむだけでなく、まるで自分が経験してきた子供の頃の思い出がアルバムを開くように蘇る本作。今後の展開に期待しています。