魔界への入り口はあなたのすぐそばにも - 魔界レストランの感想

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魔界レストラン

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文章力
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魔界への入り口はあなたのすぐそばにも

5.05.0
文章力
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ストーリー
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演出
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目次

良いことを行うと家に帰ることができる

むかし、幼い子どもがまるで消えてしまったかのようにいなくなることを「神かくし」といっていました。その原因としては、天狗が連れ去ったと言われていることが多かったようです。ここで天狗の「神かくし」にあった子どもたちは、無事に家に戻ってきます。帰らせてもらえた理由としては、よく働いたから・楽しませてくれたからと天狗の喜ぶことをしたからのようです。

天狗は時に、自分の弟子にするために子どもたちをさらうこともあります。ここに紹介されている「てんぐこぞう寅吉」は天狗の弟子になった子どもの話で、この話のもとになっているのは平田篤胤の「仙境異聞」といわれる物語です。篤胤本人は実話として発表しましたが、ほかの学者からは嘘だという声もあったようです。

時間の流れがちがう魔界と現世

むかし話の中でも「浦島太郎」のように、竜宮では数日間を過ごしただけなのに、家(故郷)に戻ると何百年も過ぎていたというものから、逆に何年も別の世界で生活していたのに、家に戻るとたった数時間しかたっていなかったということがあります。このように魔界と現世では時間の流れ方が極端に違う場合があるようです。ここでも両方の話が紹介されていますが、天狗がかかわっている場合には、現世のほうではあまり時間が経過していませんが、「皇帝のねむる山」のほうでは7年という歳月が経過しています。

脳科学の分野では、人は集中している時には時間の流れが遅く・ぼぅーと過ごしている時には流れが速く感じるようです。それは脳の情報処理にかかる時間によるためだと言われています。しかし、ここで大半の人が疑問を抱くのではないでしょうか?集中して何か好きなことに没頭している時には速く時間が過ぎているのに、嫌いなことをしているときは時間が流れない。そう考えると集中したほうが、時間が早く過ぎるのではないかと・・・。そこには時間に関する意識が関与しているようで、没頭できることをしているときは時間を気にすることが少なく、嫌いなことだとすぐに時間を気にするためだということです。そのため同じ好きなことに集中していても、時間を区切ったり・行動を意識的に少しずつ変化させたりすることで、長く感じることができるようです。

現実でも時間の流れは、人・時・場面によって早くなったり遅くなったりするのですから、魔界と現世では年単位で時間の流れが違っていても不思議ではないのかもしれません。

山は魔界への入り口がいっぱい

山では人間が想像できないような不可思議なことが、むかしからたくさんおこるようです。それは天狗や山の神・精霊たちの仕業とも、きつねやタヌキの仕業ともいわれています。そのため恐ろしい出来事から、滑稽な出来事までさまざまな現象がおこっています。

「山のふしぎ」は山でおこるいろいろな現象の中から、心温まる話が紹介されています。山に登るときは誰もが少しでも荷物を軽くしたいと、必要最低限の装備で登ることが多いようです。そのため相手がいくら困っているからといって、自分の装備を分け与えてしまえば今度は自分が必要となったときに困ることになってしまいます。しかし、この話のように自分ができることをしてあげるだけの親切心は持っていたいものです。山では目に見えているものが、もしかしたら実際の姿ではないのかもしれません。洞窟で迷っていた若者も横たわっていたおじいさんに水を汲んできてあげることで、出口を見つけることができました。自分に助けを求めるものの中には、自分を助けてくれようとする存在がかかわっていることがあるのかもしれませんね。

魔界の力の落とし穴

「百発百中の魔法のくぎ」では、ゾッとした結末が待っています。魔法のくぎが本当に捕らえていたのは、狩ろうとしている動物の足ではなく、亡くなったときに自分が足にくぎを打った、自分の父親だったのです。

いくら生活のための狩りとはいえ、生物の命を奪うための魔法です。決してよい魔法とは言えないでしょう。何かを得る魔法を使用するときは、必ず何かの代償を払わなくてはなりません。そして、この場合の代償とは亡くなった父の安眠だったのでしょう。この魔法のくぎの持ち主は、このことに気づいてからは父に申し訳なく思ったのか使用することはありませんでしたが、もしいつまでも気づかずに使用していたらと思うと、これほどゾッとすることはないかもしれません。

「地獄の口があいた山」も、村人の白い蛇は見なかったという言葉だけを信じ、地獄の口をあけて蛇を退治します。最初は注意深かったのかもしれませんが、いろいろなところで蛇を退治してきたため、その注意が薄れてしまっていたのかもしれません。

魔界の力に限らず、自分が使用しようとしている力が一体どういったものなのか、見極めて使用するということが、人にはない力(能力・技術)を使用するものには必要なのでしょう。

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