父親として考えさせらる要素がたくさん詰まっている - 風のガーデンの感想

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風のガーデン

4.504.50
映像
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脚本
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キャスト
4.50
音楽
4.50
演出
4.50
感想数
1
観た人
1

父親として考えさせらる要素がたくさん詰まっている

4.54.5
映像
4.5
脚本
4.5
キャスト
4.5
音楽
4.5
演出
4.5

目次

家族との向き合い方を世に問いかけるドラマ

このドラマは一人の人間が家族を通して人生とは何かを問うた作品だ。

医者として成功した主人公が本当に手に入れたかったもの

医者として東京で地位も名声も手に入れた主人公。成功を手に入れた後、それまでないがしろにしていたあらゆるものがどれだけ大切なものであるか気づかされていく。

家族のためにがむしゃらになって働く父親必見の人間ドラマ

主人公は結婚し、家庭を築きながらも自身の欲のため地位と名誉を求めがむしゃらに働いていく。そして着実に成功への階段を上っていくのだが、気がつけば家族との大きな距離感ができてしまっている。

また、不倫の結果、妻はノイローゼになって自殺し、父親に勘当され、子供達とも離ればなれとなってしまう。家族のために頑張った結果、家族をバラバラにしてしまうのはなぜだろう。実際に私も仕事や収入の不安を家族にぶつけてしまい、家族に嫌な思いをさせてしまったことが多々ある。そして不安にさせたことも。もちろん家族を路頭に迷わせないための男の責任感から起こってしまったことだが、その度に妻とも喧嘩をし、なんとも嫌な気持ちになったものだ。

このドラマが伝えたいことは、生活に不安のない裕福な生活。人が羨む地位や名誉。そんなものは表面的なもので、一時の欲を満たすだけのものであり、家族も心から求めているものではないし、家族もそれに気づかない場合も多い。

本当に大切なものは家族とともに笑い、悩み、同じ時間をきちんと過ごすこと、そして子供を育て、巣立っていく子供の後押しをしてあげる。そんな単純なことなのだと。主人公は寂しさを紛らわすかのごとく、女遊びをしたり、贅沢にふけったりするが、心は全く満たされない。むしろ家族のことが重く心にのしかかかる。

最終的にはこの主人公は癌に犯され、家族の元に帰ることになるのだが、そこで彼は許されることのない自分の罪を深く思い知り、余命わずかな時を家族のそばで過ごしたいと思う。家族は最初は受け入れないのだが、主人公が末期の癌と知り、最後はその罪を許すことになる。生は永遠ではなく、宇宙の世界では一瞬だ。その一瞬をどう生きることが大切で、それは人それぞれの生き方があるのだと思うが、人間も動物である以上、きちんと子を守り、育て、生きていく知恵を教え、巣立たせていく。これがシンプルに大切だ。

そしてその子がまた、それを次の世代に受け継がせていく。そして宇宙と共に永遠に生きていくのだ。死というものは誰にも必ず訪れる。その時にこそ生の美しさやありがたさ、家族や友人への感謝の気持ちや愛おしさを実感することだろう。

しかしそれからでは遅いのだ。死を前提として残りの時間を家族や友人とどう過ごすか。何をしてやれるか。そういったことを考えて生きていけば悔いのない人生を送ることができるのではないだろうか。

私の父は私が20代の時に亡くなった。話せば長くなるので詳しくは述べないが、大変プライドが高く虚栄心が人一倍強い人で、自分で事業を始め、成功を目指して毎日猛進していた。母も私が小学校低学年の頃から、父の手伝いで家を留守にすることが多く、学校から帰ってくると毎日机の上に五百円が置いてあり、一つ上の兄とそれでパンを買って夕食を済ませることが多かった。風呂も二人で入って、自分たちで布団を敷いて寝ていた。両親が帰ってくるのは大体、夜中の12時前後だったように記憶している。

まだ幼い私は夜、電気を消してもなんだか不安で眠れず、夜中にドアの鍵のガチャッと回す音が聞こえ、両親が家に入ってきた音を聞いて、安心して眠りについたものだった。その頃は両親も事業を始めたばかりで大変だったのだろう。はじめはうまくいっていたようだが、その後事業は失敗し、それはそれで大変な日々を送ることになるのだが、しかし、その頃の寂しさや不安な気持ちというものは何十年経った今でも胸にこびりついていて、おそらく一生はがすことはできないのだと思う。

会社を閉めた後、母はパートに出て、父は職探しをすることになるのだが、その間、父はずっと家にいて、普段は忙しく家にいることも少ない父が家にいることが逆に不自然で最初は私もどう接すればよいかわからなかったのだが、ある日父が釣竿を作ってやるといって、近くの竹林から竹を抜いて、小刀で枝を落とし、ニスを塗り、立派な竹竿を作ってくれた。

この時私は父のことを尊敬し、また、完成した竹竿を渡された時は本当に嬉しかった。おそらく市販のものに比べればなんてことのない竿だろうと思うし、千円も出せばもっと良い竿が買えたはずだが、この記憶は今でもはっきり残っている。その後、また父は事業を始め、すれ違いの日々が続き、私が社会人になってからは父は田舎に移り、離れて暮らしていたため、死に目に会うこともできなかったので、この時間は父と共有できた貴重な時間だったと思う。

この幼い頃の記憶から学んだことは、子供の小さい時の記憶は一生残る、だからこそ、決して心に傷をつけてはいけない。そして子供は必ず巣立っていくのだから、一緒に暮らしている間は楽しい思い出を作ってあげること。

私はこのドラマを見て、自分の親として果たすべき責任というものを改めて思い知らされたように思う。

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