ついに来た 映画がゲームを超える瞬間
ファンはこの瞬間を待っていた
人気シリーズ『バイオハザード』が、四作目にあたる『アフターライフ』でついに一皮むけました。と、まず結論を先にアナウンスすることにしよう。
と、先走って結論を述べたのは、これはシリーズファンにとって非常に感慨深い事態だからだ。まるで少年が大人になったかのよう。ゲームシリーズファンが「この子はまだ世に出たばかりだから」と親御さんのような目で見ていた一作目から、四作目に至ってついに元服。「こんなに大きくなって……」とむせび泣いたシリーズファンも多かったことでしょう。
つまり、それだけ『バイオハザード4 アフターライフ』は良い出来だったのだ。
『3』で賛否両論だったチート超能力展開をまずバッサリカットし、ゲームの主役キャラであるクリス、クレア、ジル、ウェスカーを登場させ、ゲームファンへのサービスに余念がない。
なにより素晴らしいのは、そのアクション。シリーズ始まった当初から注目を浴びていたアクションは更に進化した。
“こちらへ向かってくる”ウェスカーのサングラスや、処刑マジニの斧。3Dと静止を多用したド迫力のアクションは、アクション映画好きは脳汁モノの素晴らしさだ。
筆者はシリーズでもっともこの四作目が良作だと思っているのだが、読者諸氏はどう思うだろうか。
ゲームのオマージュカットがたまらない
今作から大きく変わった点として、ゲームのオマージュの多さが挙げられる。
『3』までは舞台やキャラクターの名前、クリーチャーなどにゲーム『バイオハザード』の設定を盛り込んできたが、今作はよりオマージュに寄せた演出が盛り込まれることとなる。
まず設定でいうと、処刑マジニやクレアやジルを洗脳するデバイスの形が挙げられよう。
ゲームの設定やクリーチャーの踏襲は前作までの映画シリーズでも盛んに取り入れられたが、今作はよりクオリティアップしている。
『2』までの、ちょっと妥協すればファンから及第点を貰えていたクリーチャーは、ここ『アフターライフ』に至ってファンを唸らせるほどの出来映えに進化した。ガナード(マジニ)を意識した、口から寄生生物を吐き出したゾンビのおぞましさ。麻袋を被り、血と錆が染みついた斧を振りかざす処刑マジニ……いずれも、グロテスクでありながら、目を離せない魅力を持っている。
だが、ここまではただゲームの設定を踏襲・流用しただけともいえよう。むしろゲームのオマージュといえるポイントは、映画のちょっとしたワンカットに挿入されているのだ。
例えば、先にも述べたウェスカーが投げるサングラスはゲーム『バイオハザード5』にそっくり同じシーンがある。また、クリスとウェスカーの対決、クレアとクリスの再会、といったゲームファンには嬉しいポイントも盛りだくさん。蛇足になるが、オマージュは続編『5』では更に進化して、某バートンさんの某コルトパイソンは死ぬほど痺れて映画館で筆者は一人で悶絶しました。
クリス役のウェントワース・ミラーの吹き替えをゲーム版クリスと同じ東地宏樹が演じているのも嬉しいポイントだ(ちなみにウェントワース・ミラーを一躍スターダムに押し上げた『プリズン・ブレイク』でも、東地宏樹が吹き替えを担当している)。
このように、『アフターライフ』はゲームファンへのサービスがふんだんに取りこまれ、むしろファンであればあるほど好きになるという出来に仕上がっているのだ。
鳥肌モノの戦闘シーン
さて、『アフターライフ』屈指の名シーンといえば、クレア対処刑マジニだろう。
これはもう異論を挟みたくないほど筆者が大好きなシーンだ。
水滴が降り注ぐなか、対峙する処刑マジニとクレア。スローモーションのなか表現される決死の対決。
現実離れしている訳でも、かといって常人には真似できる訳でもない、緊迫感のあるクレアのアクションが、メタル調のBGMと合わさって、アクション映画のなかでも指折りの名シーンを生み出している。
他にも、アリスが刑務所の屋上からゾンビと共に地上へ飛び降りるシーンや、水浸しの地下に潜水して武器を運ぶシーンなど、アクションシーンの見どころは多い。というのも、スローモーションとストップモーションを多用した演出が、アクションシーンにほどよい緩急を与えているのだ。
激しいバトルシーンではカメラワークと共に息もつかせぬ加速を見せたかと思えば、突然止まり、じっくりと山場を観客に見せつける。ゆっくりとガラスが吹き飛び、通常速度に戻った世界で佇む主役たち……。このような演出が随所に見られ、やたらめったらドンパチするだけの他のアクション映画とは一線を画す仕上がりになっている(このスローモーション&ストップモーションをして、ちょっと過剰だ、という意見もある)。
『アフターライフ』は、四作目に至り「息を呑む緊迫感&ハイパーアクション」という新機軸を打ち出すことに成功した。
『3』から続く砂色の荒廃した世界に、シリーズ一流のアクションを昇華させ、挙句ゲームファンを大喜びさせるサービスカットの数々を盛り込む……。
ここにきて映画『バイオハザード』シリーズは、また新たな次元へと飛び立ったのである。
一つ注文があるとすれば、東京→アラスカ→ロサンゼルス→刑務所→舟と舞台が飛びすぎなことぐらいだが、これはゲームも同じなので許容範囲。むしろこれもまたバイオハザードらしさなのかもしれない。
最新作にて最終作も間もなく公開を迎えようとしている。十年以上に亘って続いた人気作が、どういった結末を迎えるのか。筆者も楽しみに待っている。
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