海外でも有名な傑作、現実の2020年を予言
1988年にアニメ映画化、海外でも評価が高い
軍の研究によって超能力を引き出せそうな子供たちが訓練や投薬を受けて半ば強制的に超能力を開花させられる。中でも爆発的な能力を持ってしまった少年「アキラ」が引き起こした、原子爆弾級の破壊は、表向き外国からの核爆弾によるものとされ、第三次世界大戦が勃発する。
日本の荒廃ぶりや近未来の描写、また超能力の表現、「神」の概念などマクロ的題材を扱ったAKIRAは、実際にありそうなリアルなSFとして話題を呼び、海外でも高く評価されている。1988には日本でもアニメ映画化され大ヒットした。
2017年にハリウッドで実写化の噂もあったほどであるが、実際の製作には至っていないようである。1982年から週刊ヤングマガジンに掲載された漫画であるが、30年以上たつ現在でも根強いファンがおり、特に主人公金田が乗っているバイクは、現在でも近未来の憧れのバイクとして多くのバイカーを魅了している。
2020年の東京の未来を予言した漫画
漫画の主人公金田たちがバイクを乗り回す「ネオ東京」の舞台は、2019年であり、来年にはオリンピックを控えあちこちで建設が行われている様子が描かれている。これはなんと、現実の2020年の東京オリンピックの開催に符合するのでる。1982年の段階で著者の大友克洋氏が40年後くらいに日本でオリンピックが開催されてもいいのではと思っていたかどうかは定かではないものの、ますますこの作品のリアリティを増したエピソードになったことには間違いない。
2020年が近づいた現在でも感じる「近未来のカッコよさ」
1980年代に描かれた作品であるにもかかわらず、AKIRAの世界観にある近未来のカッコよさというものは全く衰えるところがなく、著者の先々を予想する見識に驚愕する。未来になっても基本的な衣食住にあまり変わりはないことや、貧富格差、宗教への信心などの描写がリアルである。また、前述の金田のバイクのスタイリングなどは、近いものがバイクメーカーでも製造され、実用化に向けられている。唯一描かれてないのは携帯電話の急速は発達くらいであるが、かえってないことでケイと超能力を持った子供たちとの意識のシンクロが見事に表現されている。
「神の概念」の一つの解釈
人間が進化のスピードを欲望のままに意図的に変えた時にどのようなひずみが生ずるかということについて、非常に抽象的であるがミヤコによって語られている。のちに金田も災厄に飲み込まれることで色々気づいていくが、人間の営みという流れ、宇宙の存在の流れ自体が神そのものであり、自分も神の一部であるという解釈がAKIRA的な神の解釈ではないだろうか。仮に神というものが存在するなら、その姿は偶像化されたものではなく全事象の存在全てという概念が斬新である。こういうマクロ的思考の漫画作品は、漫画大国日本の作品の中でもかなりハイレベルな作品であると言える。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)