観ている者は必ずどこかで共感したり反感したり
エロくて、陰湿さとは対極になっている映画
奔放な男二人のエロのからんだ逃走劇。窃盗などで逃走につぐ逃走。その間に出会う女たちとの交わりという映画です。
コメディと言ってもいいのでしょうけど、まあ、主人公二人が汚らしく、それにつれて、脇を固めるメンバーも薄汚く見えてきます。女性陣の結構リアルでエロい裸と、セックスシーンはなかなか白眉なもの(ジーン・セバーグと、それと乳母と)ですが、ロードムービーの枠を超えた何かの部分ということになれば、セックスしその瞬間は互いに喜ぶ、というところが中心のモチーフになっています。また、何となく小道具(特に車)がコミカルで陰湿さとは対局の映画になっているのは確かです。
満足できない主人公たちの葛藤
主人公ピエロ(パトリック・ドベール)とジャン=クロード(ジェラ-ル・ドパルデュ-)は窃盗して自分勝手に思う存分に生きる若者2人で、なかなか羨ましくはある。キューブリックの時計仕掛けのオレンジを思い出します。行動自体はちょっと犯罪の匂い。安定さにおもねず、好奇心のままに生きるという、現代社会への反発としての設定がねらいだと思います。
映画の前半、ドパルデュ-が「これでもフランスかよ」って平凡な人々のことを見下して叫ぶシーンがあります。ストーンズの歌じゃないですが、何か満足できないのです。違う、と思っている。だから、何かしたいと思っている。でも何をしていいかわからない。そういう心の奥底の葛藤が言葉で出てくるシーンであります。
内外の二重構造で深みを生み出す
表面的にはちょっとエッチなコメディー、おっぱい丸出しの女優陣が欲望をそそりますし、得した感もあるのですが、先述のように考えると実に、深い、社会派の映画でもあるような気概します。
よく考えれば、子供のいたずらがそのまま大人になってもやめられずに、ずっと思ってきた物事の課題も解決できずに成長して、自由に人間らしく生きているように見えます。もちろん、悪いことをしていることにも大いなる刺激を受けて、それを楽しみと思っているわけではあるでしょうし、その正当化という逆パターンで、他の人々を見下し、罵倒しているという見方もできるかと思います。
というわけで、この映画は外側と中側の二層構造により、作品としての深みを生み出している気がします。主人公たちの汚さはどうにかしていほしいとは思いますが、見ている人がどこかで交わり、この作品の意図に共感したり反発したりしたくなる映画であることは間違いありません。
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