快作というか、身につまされる作品というか
男性諸氏にとって身につまされる
一言でいうと、退職後に行き場の無くなった男のさびしい人生の末路、というテーマの作品です。世の男性ならほとんど誰にでも容易に訪れそうな話が満載なので、悪い意味ではちょっときつい作品でした。これを、あのジャック・ニコルソンが演じるのですから、彼のように若い時はバリバリと存在感を撒き散らしたであろう人の極端な老後の描写で、その哀れさは半端なかった。
退職しているのに、仕事場に未練を残して、社交辞令の贈る言葉で言われた「また相談に乗ってください」的なことを真に受けて仕事場に行ったりするのもなんかわかるような気がします。
妻の死で寂しさはさらに加速。妻が浮気をしていたということで、痛烈さがさらに加速。娘を訪ねてもぞんざいに扱われ、ほんとうにもはや、行き場所もなく、存在価値もないという男に成り下がったことを自覚せざるを得なくなるわけです。
考えさせられる問題作
この作品から私たちはいったい何を学べばいいのでしょうか?こういう、根本的な問題について描写された作品を見るたびに、映画って薄情だなと思わせられることがあります。「こういう問題があります。どうぞ見てください」的に見せられ、考えさせられて終わり。観た者はこれを、どう処理していいのかわからない感じになります。極端に言えば、死を見せられる。そしてそれは避けることができないもの。だから、結局、何かできることがあるわけでもありません、という感じ。
せめていうなら、備えなのでしょうか。シュミットは、もっと、娘を大事にしたり、奥さんを大事にしたりしておくべきだったという訓示でしょうか?この作品だけでなく、いろんな人の人生を観ていると結構、そうでもない気がします。
今を精一杯生きるということでしょうか?今を精一杯生きたところで、自分がヨボヨボの老人になって世間の役に立たず、存在価値がないとなったときに果たして「これまで精一杯生きてきたから何の悔いもない」などと笑ってられるのでしょうか。
などなど、いろんなことを考えるわけですね、こういう作品を観た後は。
リアルさこそ映画の意義かも
せめて楽観的に考えるなら、誰にも訪れることだから、あまり考えすぎるなとか、極端に言えば、ぼくらはそういう意味では一人ではない、ということでしょうか。
つくづく映画はこわい。そしてリアルに知らせてくれるという意義がある作品こそが、価値があるという意味では大変なものですね。まさに、快作?傑作?でした。
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