世界は“それ”を待っていた
男のロマンがついに来た……!!
ゲームブックから始まり、『流浪の戦士』、『玉座を継ぐ者』と次々にアニメ作品が作られた『クイーンズブレイド』。その第三作目にあたるのが『美しき闘士たち』だ。
外伝的作品の位置づけであり、次作『リベリオン』に繋がる作品としての意味合いが強い……と思われる『美しき闘士たち』であるが、それ以上に、『美しき闘士たち』はシリーズにとって非常に重要な意味合いを持つ作品である。
それはOVAになってめちゃくちゃ丁寧美麗になった作画のことではなく、主人公のレイナに押しのけられて出番が少なかった美闘士たちに焦点があてられたことでもなく、○首が解禁になったことである!!!
男性諸君にはこれがいかに重大なことであるか理解していただけるであろう。女性諸君も引かずに傾聴して頂きたい。今まで黒い靄や白い霞に隠されていて何が何だかわからなかった『クイーンズブレイド』最大の弱点が解決されたのである!
そもそも『クイーンズブレイド』は原作からしてアダルト向けギリギリの題材であり、○首が執拗に隠されていた今までの方がおかしかったのである。『美しき闘士たち』によって、ついに『クイーンズブレイド』の本当の姿が明らかになったのである。エンディングなどは逆に狙いすぎてノックアウト寸前になってしまうほどだ。
正直、最初からOVAでアニメを制作すればよかったのでは?という気がしないでもない。
次作に繋がる重要な伏線 沼地の魔女の呪いとは
非常に重要な前作からの変化を説明し終えたところで、次は(真面目に)ストーリー部分について考察してみたいと思う。
『美しき闘士たち』は、前述のような作画的要素に加えて、ストーリーの意味でも重要な意味を持っている。
それは前作『流浪の戦士』、『玉座を継ぐ者』では回収しきれなかった、沼地の魔女の強さと存在がついに明るみに出たという点だ。
これは次作『リベリオン』にとってキーとなる要素であり、むしろ『美しき闘士たち』を観ずに『リベリオン』を観てはいけないレベルとなっている。
アレインやトモエ、レイナやクローデッドといった有力な美闘士たちに呪いをかけていく沼地の魔女ウェルベリア。作中最強の実力を持つといわれている彼女の存在が、『クイーンズブレイド』の物語を紐解く鍵となっており、また複数の登場人物にも密接に関わっている。
ゲームブックとアニメでは設定や展開が異なるが、特にアニメ派にとっては世界観や話を理解するのに彼女の存在が欠かせない。なぜなら、続編『リベリオン』の二期がまだ作られておらず、沼地の魔女の正体や真相について明かされる見込みがないためだ(2016年8月時点では、制作予定もないよう)。
つまり、アニメでだけ『クイーンズブレイド』を追っている人にとっては、『美しき闘士たち』と『リベリオン』を通し、沼地の魔女の目的を予想することが、そのまま『クイーンズブレイド』の謎そのものを追及することになるのだ。
なぜ美闘士たちに呪いをかけたのか?
なぜ執拗に地上を狙うのか?
その答えは、彼女の真の実力と共に、まだ明らかになっていない。
……正直手下たちに任せず、最初から自分が地上に手を下せばよかったのでは?と思わないでもない。
各キャラクターへの掘り下げも一段上に
もう一つ、ストーリー部分で、『美しき闘士たち』は重要な意味を持っている。
それは、エピソードごとに主人公となっているキャラクターの、精神的成長という点だ。
前作『玉座を継ぐ者』では主人公(?)のレイナにフォーカスがあたっているため、各キャラクターの個性がいまいちぼけているという欠点があった。このため、偶像劇のような意味合いを持っているゲームブックからのファンにとっては納得できないという一面さえあった。
だが、今回はエリナやノワ、メナスとなった“クイーンズブレイド早期リタリア組”も主役となり、各キャラクターのファン大喜びの内容となっている。特にエリナやノワは、それぞれレイナ、アレインという目上の人物に依存気質のキャラであったが、ようやく今作によって自立の目を見た。これは今作のエピソードを飾る華となっただけではなく、各キャラが登場する(可能性がある)続編にとっても、必要かつ重要な要素である。
こうしてみると、『クイーンズブレイド』のアニメシリーズは各作品ごとにねらいがあったのだと気づかされる。
『流浪の戦士』では旅を通して各キャラの紹介、『玉座を継ぐ者』ではクイーンズブレイドの本戦と物語としての一結末、『美しき闘士たち』では伏線と各キャラの個性の底上げ、そして『リベリオン』は世界の謎に挑む――という、シリーズごとの目的がある。
どれ一つとして目的が被らないために、一期から観ている人も飽きずにシリーズを追うことが出来る。一期、二期と延々似た展開が続くアニメも少なくないなか、こうした点でも『クイーンズブレイド』シリーズは、アニメ界にとって貴重な存在といえるだろう。
せっかくここまで来たのだから、『リベリオン』の続編と『グリモワール』も切に期待したいところである。
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