人間の成長を描いたヒューマンドラマ - ポリスアカデミーの感想

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人間の成長を描いたヒューマンドラマ

5.05.0
映像
5.0
脚本
5.0
キャスト
5.0
音楽
5.0
演出
5.0

目次

主人公が誰なのか!?

本編を観ていると、主人公が誰なのか、分からないのが特徴といえます。

登場人物の全てが、主人公なのではないか、とすら思えてきます。

それは、学校に入学している生徒だけに限らず、先生や犯人の存在も主人公として捉えることができるのです。登場人物の個性が強烈で目立つ存在ということも大きいのかもしれません。しかし、こういった作り方は、違うものを意図しているようにも考えられます。

メインとなる主人公は、ケーリー・マホニーなのでしょう。

しかし、彼だけが主役なのではありません。主役は、ポリスアカデミーに入学してきた全生徒を指しているのだとも考えられます。その根拠は、生徒の全員が欠けることなく、厳しい訓練に耐えて卒業をしている為です。また、物語を描く目線も、それぞれの生徒から描かれ、マホニーに固定されていません。

すなわち、物語の主人公は、学校に関わっている生徒・先生、そして、犯人に至るまで全員だと考えられます。

それは、登場人物、それぞれの人物像が丁寧に描かれている為です。生徒だけではなく、先生・教官の目線で、物語が描かれる場面も多いです。そして、本編の終盤では、犯人の目線で描かれている場面もあります。

そのことから結論付けられるのは、作品タイトルが示すように、「ポリスアカデミー」という学校の存在自体が主人公なのではないかと考えられるのです。

主人公が人間や人物なのではなく、場所であり、施設なのです。

だから、作品本編における内容は、とてもユニークなものに映るのかもしれません。内容の方向性を思いっきりコメディに振っていることも、ユニークさを感じさせる大きな要因だとも考えられます。

しかし、主人公を施設に設定していることが、この映画作品の最も大きな特徴であり、他作品には見られない希少性だと考えらるのです。

人間の成長について

当作品の特徴は、物語冒頭に、登場人物のダメな部分を強調していることです。

本当に存在するわけがないと思えるほど、登場人物のダメさ加減を強調しているのです。また、そのダメさ加減が、観客を笑いに誘うのです。意図的に、笑いを意図していることで、過剰に大袈裟な表現がされており、リアリティーをどこか置き去りにしているのだと考えられます。

しかし、これこそが、制作者の狙いが人間の成長であることの根拠であると考えられるのです。

物語の最後で、入学した生徒たちが一般レベルになっていれば、それは成長していることになるのです。小さな成長であっても、それは確かな成長であり、人間の成長を描いていることに他ならないと考えることができます。

そして、入学した生徒たちは、卒業して一般レベルを遥かに超えたものに成長します。

そして、成長する方向性がユニークであり、観客の笑いを誘うものになっています。それぞれ登場人物に焦点を当てられており、平均的に能力を上げるのではなく、誰にも負けない特化した能力を備えるようになったことが印象的です。能力のバランスでいえば、相当に尖って偏ったものといえます。

しかし、この結末は、制作者のメッセージのようにも受け取れます。

「別に、器用に全部が出来なくてもいいじゃないか。誰にも負けない取り柄があれば、それは凄いことだし、素晴らしいことだよ。」という気持ちが、強く込められているのだと考えられます。

笑われるように制作されている当作品ですが、登場人物の生徒たちは、至って真面目なのです。本当なら、笑う場面ではないのかもしれません。しかし、それは、一般的におかしく見えて、笑われてしまっても、一生懸命に取り組むことの素晴らしさを伝えたい、という制作者の強い気持ちの裏返しだとも考えられます。

笑い要素の構成を分析

おおまかに、当作品で用いられている要素を2つに分類できると考えられます。

ひとつ目は、「イタズラ」という要素です。

マホニーが中心となって「イタズラ」を仕掛ることが多いです。

そして、仕掛けられる対象は、ハリス教官であることが多いです。ハリス教官は出世欲も高いことから、自身の印象を上層部から良いものに見せるため、生徒たちを利用することが多いです。また、口うるさいキャラクターで、生徒たちを明らかに見下しているのだと考えられます。登場人物の位置付けは、間違いなく嫌われ者というポジションです。だからこそ、マホニーの「イタズラ」が正しい行動のように映ります。

マホニーの「イタズラ」が、善良な人間に向けられたものであれば、きっと笑える場面にはならないと考えられるのです。

ふたつ目は、登場人物の個性です。

前述したように生徒をはじめ、先生・教官に至るまで、強烈な個性をもっており笑いを誘います。

ハイタワーの怪力は、常人レベルのものではなく、軽々と一人で自動車をひっくり返すことができます。また、2mを超す身長で大柄なので、見た目から恐ろしいです。しかし、前職は花屋さんであり、心優しい性格の持ち主です。見た目や行動からは信じられない内面のキャラクターであることから笑いを誘うのだと考えられます。

ジョーンズは、ボイスパーカッションの名人です。音楽だけではなく、動物の鳴き声や銃声、物音、機械音など、喉と声だけで再現できる凄技の持ち主です。ジョーンズは、その技能を悪用もすれば、己の身を守るために使用します。こういった特技があるだけで、彼のとる行動は笑えるものになってしまいます。彼の特技はアイデア勝負という一面が強いだと考えられます。

また、重度の銃マニアであるタックル・ベリーは、その狂気が面白さの真骨頂といえるでしょう。

登場人物を挙げたら、キリがありませんので、ここで割愛しておきますが、現実社会には存在しないであろう登場人物が盛り沢山です。警察学校というリアルを描きながら、先生や生徒という登場人物のリアリティーの無さが面白いのだと考えられます。

面白くて、笑えてしまう場面はとても多いのに、実はたった2つの要素で構成されたシンプルなの内容とも言えます。逆に、シンプルに絞り込んでいるからこそ、分かりやすい笑いであり、想像を超えるレベルのものだから笑ってしまうのだと考えられます。

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他のレビュアーの感想・評価

下品だけどシリーズ全部ハマって見ました

この映画は、ただただギャグ映画です。ものすごく有名な俳優女優は出演していませんが、主要キャストのほとんどが実はコメディアンという何ともアメリカらしい実に大らかな限りなくB級に近いハリウッド作品と言えます。でも実は7作まで上映されていますので、多くのファンがいたことも事実です。警官の採用方法を変更する通達を出したとあるアメリカの大都市。警官希望者は多くやってきたが一目で警官不適合とわかるような濃いメンバーがいた。マホーニー、ハイタワー、タックルベリー、ラーヴェルなどが警官たちのきついしごきにも耐え、警察学校卒業間近のときに、街で起こった暴動鎮圧に駆り出されてしまう・・・・・・。10年位前までは週末の洋画劇場でたくさん放映されていた作品ですが、どういうわけか最近まったく見なくなったのが残念です。小ネタ的に結構エッチなシーンがちりばめられているので、今は色々な事情で放映されないのが寂しいところで...この感想を読む

4.04.0
  • 黝璽黝璽
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