くだらない笑いに元気がもらえます! - 俺はまだ本気出してないだけの感想

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俺はまだ本気出してないだけ

4.734.73
映像
4.33
脚本
4.33
キャスト
4.83
音楽
4.00
演出
4.50
感想数
3
観た人
3

くだらない笑いに元気がもらえます!

4.74.7
映像
4.5
脚本
4.5
キャスト
5.0
音楽
4.5
演出
5.0

目次

社会の風刺を閉じ込めた考えさせる作品

主人公の大黒シズオが、会社を辞めて無謀にも漫画家を目指し出す「俺はまだ本気出してないだけ」は、バカバカしくて、思わず笑ってしまう作品に仕上がっています。しかし、実は作品の中には、社会に対する憤りを描いている作品なのです。作品の中で、きちんと職についてないとそんなに悪いのか、駄目な人間はカッコ悪いのか、弱い人間は我慢するしかないのかなど、生きていく中で誰もが抱える葛藤をコメディとして面白おかしく訴えているのです。コメディ以外でこれらのテーマを表現しようとすると、重く辛くなりますが、「俺はまだ本気出してないだけ」では、面白さが前面にあるため、ちっとも押し付けがましくありません。私は、テーマを見ている人に押し付けてくる作品が、好きではないので、私はこの作品が好きです。

 

ワンシーン毎に笑いを一つ

「俺はまだ本気出してないだけ」は、原作がありますが、コメディを多数手がける福田雄一が監督した作品です。福田雄一監督は、今までにない独自のコメディを作り上げてしまう監督。ある意味、有名な三谷幸喜監督よりも面白く、意外性のある世界観を作れる監督さんです。しかしながら、独特の個性的な表現なので、この福田監督の笑いに追いついていけない方もいるかも知れません。

作品の中で面白いと思わせる方法として、ワンシーンに一つ必ず笑いが込められています。シーンの中には、一つの笑いネタと、それに絡めたメッセージがあるのです。ですから、ストーリー的には単純で退屈なはずなのに、あっという間に時間がたってしまいます。くだらない笑いと思わせながら、笑いとメッセージ性を巧みに操り、いつの間にか作品の世界に没頭させられてしまいました。

 

娘の大黒鈴子いい子過ぎる

シズオの娘の鈴子は、こんな環境の中にいるのに、とてもいい子に育っています。これは、いい子というよりは、物語の中で都合よく描かれているだけなので、リアル感のない存在になってしまいました。勉強も良くでき、家の中の事もやってくれる娘。しかも、父であるシズオが会社を辞めてしまったのに、いい子でいるはずがありません。確かに、最後の段階で、鈴子は風俗で働いているのがばれてしまいますが、不良になったのではなく父であるシズオに漫画を描いてもらいたいから、風俗で働いていたという理由も、しっくりきませんでした。

ただし、シズオと鈴子が風俗のお店で出会うシーンは、そのシュチュエーションだけで面白さが込み上げてきます。娘が働いている事に怒りたくても、自分自身がその店にいるため怒る事ができません。反対に鈴子の方も、父親の見たくない部分を見てしまい、言葉を失います。2人の「どうも」と思わずいってしまう台詞は逸品。どんな長い台詞よりも、このひと言はインパクトがあります。

 

見逃せない注目の脇役陣

この作品を、さらに面白い物語としてレベルアップさせているのは、脇役陣を見事に演じている俳優陣です。とれもこれも、飄々とした演技が、たまらない面白さに仕上がっています。

まずは、編集者の濱田岳。今は、もう引っ張りだこの有名な俳優となっている彼ですが、この頃の濱田岳の方が、いい味が出ているのでとっても魅力的だと思います。マンガの原稿を持ってきたシズオのやりとりでの間の取り方、受け答えの言い回しなど、彼しか演じられない編集者となりました。

シズオのバイト先の新人役としての山田孝之も、台詞があまりない役の中に、彼自身の存在がドーンと見ている人を惹きつけます。こういった二枚目で、一見強持ての風貌が今までのコメディにはない斬新さが、かえって面白さを倍増させています。

その他にも、福田雄一ファンなら誰もがしっている「勇者ヨシヒコ」メンバーのムロツヨシ、インチキ占い師の佐藤二朗などが出演しているのも見所だと思います。

 

父と娘のシーンには涙

コメディなので、もちろん面白さを重視してみても楽しめる映画なのですが、私が一番好きなシーンは、シズオと鈴子が初めて親子らしい会話をするラストの川沿いを歩くシーンです。久々に親子の会話を交わす二人、その時のシズオが鈴子に言う「あの仕事は辞めなさい」という台詞が、今までにないシズオを感じる事ができます。自分の夢ばかり追っているシズオ、家の事など考えず、バイトでも年下の店長にバカにされているシズオでも、やっぱり立派な父親なのです。シズオって、いったいどうなるんだろうと、心配していたけれど、この父親らしい場面をみてなんだか安心しました。

 

シズオのマンガの酷さに脱帽

あのマンガの酷さはなんですか?と思わずいってしまいたくなるような、シズオの漫画の酷さには思わず脱帽したくなりました。そんな一方で、漫画という場面を作品の中にマンガを入れることで、作品としてしまりが出てきます。やっぱり、マンガは一目見ただけでもインパクトがあり、少し飽きてきた物語にスパイス的存在となっています。

 最後にもう一つ、シズオはファーストフード店で働いていますが、映画の最後のテロップで、ファーストキッチンでは、このような対応をしていませんと、コメントを入れてあるのもユーモアを感じます。

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