基本的には笑わせたいのかな!?
姉妹×百合
双子の姉妹であり、百合要素であるのが、当アニメ作品の特徴です。
アニメ本編には、男性キャラクターが一切登場していません。百合アニメであっても、男性キャラクターを登場させても良かったはずです。しかし、男性キャラクターを一切排除しているのは、姉妹という要素も合わせて強調させたかった意図を感じさせます。主要な登場人物は4名と、少ないことも特徴といえるのではないでしょうか。
登場人物の数を絞り込むことで、それぞれの関係性を強く打ち出し、観る側に分かりやすいものにしています。
また、姉妹を強調する要素として描かれていたのが、奏(かなで)と雪乃(ゆきの)の妹である雫(しずく)の存在です。そして、百合を強調する要素として描かれていたのが、咲夜(さくや)の存在です。
人間関係の構図として、非常に分かりやすいものでした。
全ては、主人公の奏(かなで)を中心に構成されていました。
双子の姉である雪乃は、奏と、相思相愛の関係性でした。また、妹の雫においては、それぞれの姉妹愛の強い関係性でした。そして、咲夜においては、雫に向け、一方的に恋愛感情を寄せられる関係性でした。
妹の雫に関しては、雪乃の方が姉妹との関係性が強いようにも感じられます。しかし、姉妹として見たとき、雫は奏からの愛情表現に飢えており、奏に素直になれなかったのだと受け止めています。雫からの姉妹愛の強さを量ったとき、雪乃ではなく、奏に向けられた気持ちの方が強かったのではないでしょうか。
奏にとって、可愛い妹である雫の存在、奏にとって、一方的に想いを寄せられる咲夜の存在は、姉妹愛要素と百合愛要素を強調するものとなっています。
ただし、アニメ本編から感じられるのは、姉妹愛という真面目な人間ドラマより、百合愛のギャグ要素の方が強かったように感じられます。
私自身が個人的に、ギャグ要素の方が好きだから、ギャグ要素を都合良く強く感じているだけなのかもしれません(笑
笑わせる構図
アニメ本編における「笑い」がワンパターンだったのが印象的です。
奏の盗撮画像や私物を、雪乃が、金銭目的などで咲夜に渡す、売り飛ばす構図がアニメ本編における「笑い」の構図でした。そして、そんな展開により、雪乃は奏に頬を引っ張られている場面は多かったです。ワンパターンの「笑い」なのですが、毎回笑ってしまっていた自分自身が悔しいです。
そして、お金持ちである咲夜という設定も、物語の展開が自然なものに感じられました。
そこまでして、奏の盗撮画像や私物を欲しがる咲夜というキャラクターが面白く感じさせます。また、相思相愛であり、姉妹であり、絶対の味方あるはずの雪乃の裏切りとも思える行動にも笑わされるのです。
ワンパターンの「笑い」ですが、この場面には、二通りの面白さが交差しています。
また、本来は恋敵同士である雪乃と咲夜の関係が、良好であることも面白さを良い方向に作用させているように思います。
自然に考えれば、雪乃と咲夜は、奏を取り合うライバル関係なので、仲が悪いように思えないでしょうか。しかし、それはギスギスした悪い人間関係を描くことになり、アニメ本編の印象を変えるものになります。漂う印象が、一気にドロドロの人間関係、争奪戦になっていくように思うのです。
しかし、アニメ本編における雪乃と咲夜の関係性は、ほのぼのとさせる印象です。
だからこそ、笑わせる場面では、素直に笑ってしまうのかもしれません。
気遣いと甘え
現実を見定め、先を見通しているのは、奏ではなく、天然キャラである雪乃です。
双子とはいえ、さすが姉という位置付けであることが伺えます。
そして、二つの夢を追いかけている奏は、「二兎を追う者は一兎をも得ず」のことわざに反して、どちらも得ようとしていることが印象的です。
一つ目は、画家になるという夢です。だからこそ、東京に上京してきているし、東京の学校に通っています。そして、美大に入学したいという気持ちを強く感じられます。
二つ目は、雪乃とずっと一緒に居たいという夢です。その為、雪乃も奏に付いてくるかたちで、東京の学校に通っています。そして、奏の夢を叶えるためには、協力することを惜しまない姿は印象的です。
現実を見据え、奏のためにアルバイトをする雪乃と、二人で過ごす時間が少なくなることで、寂しさを感じる奏が描かれていました。また、自分の為に、そこまで協力してくれる雪乃の姿に、「甘え」「気遣い」という気持ちの両方を抱えていました。
奏の気持ちを考えると、二人で過ごす時間が少なくなる寂しさ、「甘え」「気遣い」と相反する感情、二点に絞られるように思います。
そして、それは百合や姉妹ということは、実は関係のないものではないでしょうか。
百合ではなく、一般的な男女の恋愛関係においても、奏と雪乃の状況のように協力することを惜しまないカップルもいるでしょう。そして、姉妹であるという点においても、あまり関係のないことのように思えます。
思い遣る対称に向けられた悩める部分が、人間ドラマにおける当アニメ作品の描きたかった内容のように感じられます。
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