大人が読んでも奥深い漫画
愛
私は矢沢あい先生の作品が大好きでした。私が初めて矢沢あい先生の作品を見たのはご近所物語という作品でその後、天使なんかじゃないという作品を読みました。そしてその後に読んだのがこの下弦の月という作品でした。最初この物語を読んで一発目の感想としては、よく分からないが率直な感想でした。当時の私はまだ学生だったので、りぼんという漫画イコール恋愛漫画という図式ができあがっていて、この切ない恋愛物語を恋愛と位置づけるにはまだまだ理解が足りなかったのだなと今になって思います。この物語に登場するアダムという青年がいます。自分が好きな女性が亡くなっていても、自分がもうこの世にはいなくなっても、その生まれ変わりである美月という女性をも愛しているそんな青年でした。彼のその直向きすぎて、理解に苦しむ場面が多々ありました。けれど、私はこの物語を読んで、最後のアダムの語りに非常に感動したのです。アダムが好きなさやかは病気で亡くなり、それを追うようにアダムも亡くなってしまいます。それだけ好きだった彼女だから、生まれ変わりである美月のことも好きなのだと思っていたけれど、アダムはアダムなりに美月という一人の女性を愛していたのです。そんな彼が彼女を思う気持ちにとても胸が熱くなりました。そしてこのように人に情熱的に愛されてみたいと思いました。
居場所
この物語の主人公である美月は交通事故で意識不明になってしまいます。意識はそこにあるのに、自分がある一定の人にしか見てもらえないそんな存在になってしまいます。美月はそこを通して自分を想っている人たちのことを改めて気付くのです。私はこの漫画で美月の気持ちに感情移入することが多かったです。人は誰しも笑っていても本当は悲しいことがあったり、辛いことがあってそれを隠しています。けれど、それでも本当はほっとする居場所が欲しかったりします。美月もどこか不安定な人間関係に不安を感じて安らげる場所を探していたのだと思います。安らげる場所というのは意外とすぐ側にあったり、側にいる人がいることで居場所になることがあります。それをきっと美月は物語の最後で分かったのではないかなと感じました。物語を読み終えると私はついつい自分の手元にある自分の大切なものを再確認してしまいました。すべてを大切だとか不必要だと白黒つける訳ではなく、自分が頑張ろうと思える居場所があることが大切なのだと思います。
笑
この物語は最後までシリアスな訳ではありません。きちんと笑えたりほっこりできる場面もあります。それは美月を幽霊イヴだと名前をつけ成仏させようと奮闘する小学生4人組です。小学生と思えない大人っぽさが全員あります。そして4人の純粋さ直向きさについつい応援してしまいたくなるのです。矢沢あい先生の作品でご近所物語の続編のパラダイスキスという作品があります。私としてはこの下弦の月の小学生4人組が少し成長した姿を見たいので、4人を主人公とした続編が読みたいなと密かに思っています。彼女らが成長してこの成仏させてあげようと思った行動にどう感じているのかも聞いてみたいような気がします。
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